―― デートってのは特別なもんや。

好きな人とのお出かけ。
それだけでも胸躍るものやのに、それは恋人と言う絆をより深める為のものなんやから。
ただ一緒にいるだけやなくて、色んなことを共有し、思い出にするそれはとても素晴らしいものや。
だからこそ、世のカップルたちはこぞってそれをするのだと…まだその入口にも立っていないうちがそう思うくらいに。

漫「(だ、だって…今からドキドキしてるし…♪)」

それは決して今だけの事やない。
それこそ一週間前からうちはそわそわし続け、友達に心配されてたくらいなんやから。
その上、期待で胸が一杯になり過ぎて、今日の事を何度も夢に見とる。
昨夜なんかは楽しみすぎて逆に眠れなくて、ぶっちゃけ寝不足気味やった。

漫「(それでも…嫌じゃないってのは…まぁ…思ったより乙女チックって事なんやろう)」

そんな自分の変調さえもプラスに感じ、今日と言う日の原動力にする事が出来る。
それは何もかも…うちが京太郎君の事が好きだからやろう。
自分で自分の感情の大きさを思い知れるそれらをうちは嫌う事が出来ひん。
寧ろ、それら一つ一つに恋する気持ちを深めていく感覚は心地ええと言っても良いくらいやった。



漫「(とは言え…寝不足はちょっと…なぁ…)」

そう思ってうちはそっと手に持った藤色のトートバッグから携帯を取り出す。
昼過ぎちょいの時刻が表示されるその表面を弄って、うちはアプリを起動した。
そのままそれを顔に向ければ、鏡面のようになった画面がうちの姿を映し出す。
普通の手鏡サイズのそれを微かに傾けながら、うちは自分の姿を確認した。

漫「(クマとか…ないやんな?)」

若い所為か微かに塗ったファンデーションの所為か、うちの素肌にはそれらしいものはない。
それをもう朝から何度も確認しているけれど、やっぱりどうしても気になってしまう。
それはやっぱり久しぶりに会う京太郎君に変な顔を見せたくないっていう乙女心の所為なんやろう。
そう自覚していても、うちはそれを止められず…こうして十何度目かの確認をしてしまう。

漫「(服装も…バッチリ。悪ぅはないはずや)」

そう思いながら携帯を傾ければ、そこには灰色のカーディガンが映った。
中に白地のパフスリーブTシャツを羽織ったそれは、童顔らしいうちの雰囲気を損ねるようなものやない。
下に履いているデニムのショートパンツやそこから覗くチェック柄の黒タイツ、そして薄ピンクのミュールも似合っとらへん訳やないやろう。


漫「(麻雀一筋やったから…こういうのよぉ分からへん…)」

友達たちにからかわれながらも、ファッション誌と睨めっこして作った自分なりのコーデ。
チェックしてくれた友達から太鼓判を貰えたそれは、多分…現状のうちの中では最高のものやろう。
せやけど…そう分かってても、やっぱり土壇場になるともっとええのがあったんちゃうやろうかって…どうしてもそう思ってしまう。
そんな弱い自分に肩を落としながら、うちは携帯をそっとトートバッグへと仕舞った。

漫「(普段はこんな事ないんやけどなぁ…)」

あの合宿以来、うちの中で色々と吹っ切れたんやろうか。
後輩の面倒もちゃんと見てあげられるようになったし、実力そのものも安定してきた。
お陰で、末原先輩や代行に贔屓されてる…なんて陰口も収まり、部内でも少しずつ認められてきたんが分かる。
出来れば末原先輩たちが引退するインターハイ前にこうなりたかったと思うほど、今のうちは成長し始めていた。

漫「(それが…今はこんなに弱々しくなって…もう…恋したら女はダメやね)」

そう自嘲気味に胸中で呟きながらも、うちはそれが決して嫌やなかった。
自分が恋と言う感情に振り回され、こんなにも不安になっているのに…それもまた嬉しいんやから。
そんな弱々しい自分が何処か誇らしく思えるくらいに…うちはもうダメになっとる。
そして…もっとダメにして欲しいと言う気持ちがうちの中にはあった。


漫「(でも…遅いなぁ…)」

さっき携帯に映った時刻は、待ち人の到着予定時刻の数分前だった。
うちをもっとダメにしてくれる人が告げたそれを確認しようと、うちは再び携帯を取り出す。
そのままメールを確認したが、やっぱりもう予定時刻はオーバーしていた。
それはまだ数分でしかないものの、しかし、うちをソワソワさせるのに十分過ぎる。

漫「(事故とか…そういうのないやんな…?)」

勿論…そんな事は殆どないってうちにも分かっとる。
でも、京太郎君が乗っているのは高速バスなんや。
年間、数回は事故を起こしとるその一回が京太郎君を襲わへんなんて誰が言い切れるやろうか。
そう思うと居てもたっても居られなくなり、うちはニュースサイトに飛ぼうと携帯を操作しようとして… ――




―― ブロロロロロ



漫「あ…」

そこまで考えた瞬間、うちの目の前に大型バスが通っていった。
大阪駅にある巨大バスターミナルに脇を寄せるようなそれには確かに長野の文字が書いてある。
それに思わずベンチから立ち上がったうちは…もう我慢出来へんかった。
手にとった携帯を乱暴にトートバッグの中へと突っ込みながら、うちはバスへと駈け出してしまう。

漫「京太郎君っ♪」
京太郎「あ、漫さ…ってぬぉあ!」

そんなバスから運転手さんに次いで降りてきたのは金髪の男の子だった。
別れたのはそれほど昔じゃないはずなのに、もう会いたくて仕方がなかった彼に…うちは勢い良く飛び込む。
決して行儀がええとは言われへんうちの仕草に京太郎君がぐっと足を踏みしめて、堪えるのが分かった。
そんな仕草さえ逞しく思えるうちはその胸にグリグリと顔を押し付け、その所在を確かめようとしてしまう。

漫「(あぁ…♪京太郎君や…っ♥京太郎君…っ♥)」

もう何度、夢見たかさえも曖昧なくらいうちの心を縛り付ける愛しい人。
それが本当に目の前に居るというのが…うちには信じきる事が出来へんかった。
だって、うちは今日のデートが決まってから、もう何度も同じシチュエーションの夢を見ていたのだから。
これもまたうちが見ている夢なんやないやろうか。
そう思うと京太郎君から離れがたく、うちはぐっと腕に力を込めて、その身体を抱きしめてしまう。

京太郎「す、漫さん…ちょ…離れて…」
漫「嫌やぁ…っ♪離さへん…っ♪離さへんもん…っ♪」

そんなうちに焦ったような声を向けながら、京太郎君は身動ぎする。
格好良くうちを抱きとめてくれた夢とは違うその気恥ずかしそうな反応は、これがきっと妄想でも夢でもなくて現実なんやからやろう。
しかし、それを納得しても、うちの身体はどうしても離れない。
京太郎君と会えなかった間に…ずっとずっと寂しがっていたうちの身体は本物の京太郎君を感じて…止められへんかった。

京太郎「…すみません」
運転手「はは…まぁ、こういう仕事してるとまったくない訳じゃないですし」

そうこうしている間に、京太郎君はうちを引き離すのを諦めたんやろう。
一つ謝罪の言葉を紡ぎながら、その腕を動かすのが伝わってきた。
その仕草一つにさえ、目の前の京太郎君が嘘ではないという実感が湧き上がり、ドキドキさせられてしまう。

運転手「はい、確かに」
京太郎「ありがとうございました」
漫「んぁ…♪」

そう言葉を交わしながら、京太郎君はうちの背中にそっと手を回した。
そのままうちを抱きかかえるような姿勢になった彼はぎこちない足取りでその場を離れる。
抱き合ったまま移動するバカップルそのものなうちらの姿に暖かな視線と敵意が向けられた。
でも、それを感じながらも、うちは京太郎君から離れる気には到底なれず…彼が導くままに足を動かした。

京太郎「ふぅ…まったく…いきなり過ぎですって」

京太郎君がそう言った頃にはうちらはバスターミナル脇のベンチに腰掛けていた。
けれど、うちの腕は未だ京太郎君を離さず、その胸の中に顔を埋めている。
勿論、もうコレ以上無く、これが現実である事を理解したが、うちは未だ彼から離れる気にはなれない。
ベージュ色のコートから微かに香る京太郎君の匂いとその身体の逞しさは、強がりながらも寂しがっていたうちの心に入り込み、胸の中に強い歓喜の熱を灯す。

漫「(本当は…ずっと…ずっと会いたかったんやから…っ♪)」

無論、それを京太郎君に伝えた事はない。
そんな事を伝えても、忙しい彼の邪魔になり、鬱陶しがられるのは目に見えているのだから。
一種のNGワードにも近いそれを…うちはずっと心の中に浮かび上がらせる事さえも禁じてきた。
しかし、こうして京太郎君にあって…心のタガも緩んでしまったのだろう。
会いたいと言う欲求が充足し、満たされる感覚に思わずジワリと涙が滲み出てしまう。

京太郎「髪の毛も崩れちゃってますよ…ほら」

そう言いながら、京太郎君はうちの髪をそっとセットしなおしてくれる。
何処か手慣れたその仕草はうち以外の誰かにもそうやっているからなんやろう。
それに嫉妬心がズキリと疼くけど、それを表に出す気にはなれへん。
折角、自腹を切って会いに来てくれた京太郎君と会ったばかりでそれは失礼やし、何より今はそれ以上に嬉しいんやから。
その手慣れた手つきを京太郎君の優しさと受け取っておくのが一番なんやろう。

京太郎「いい加減、顔見せて下さいよ」
漫「ん…♪」

そんなうちに告げられる言葉に、うちはそっと顔をあげる。
胸の中から見上げるそれは、いっそキスを強請っているようにも見えるかもしれへん。
…いや…本当は…京太郎君がそう見えるように…意識してしとる。
本当は京太郎君がキスしてくれへんかなって思いながら…そうやって上目遣いしとるんや。

京太郎「ん…やっぱり可愛い漫さんだ」
漫「い、今、そういうのあかんって…ぇ♪」

多分、それは京太郎君にとって冗談の一環なんやろう。
うちらは合宿でもメールでもそういうやり取りをし続けてきたんやから。
だけど、メールでさえもベッドで転げまわるくらいに嬉しいのに…こうして面と向かって言われると正直ヤバイ。
それだけで身体が熱くなって、京太郎君と一つに融け合いたいという欲求が…お腹の奥から沸き上がってくるんやから。

漫「(でも…それはあかん。あかんで…漫)」

それをぐっと理性で抑えこむのは、これがデートやからや。
折角、こうして大阪まで足を運んでくれた彼を一番に連れて行くのがラブホと言うのは情緒がなさ過ぎる。
能力の副作用の事もあるので軽蔑されたりはしないと思うが、幻滅されないとまでは言い切れないのだ。
それに何より…うちのトートバッグの中には友達と練りに練ったデートプランが入っているのである。
友達に○ックを奢ってまで協力してもらったそれを、京太郎君と一緒に楽しみたいという気持ちは欲情の中でも強かった。

漫「…はぅ…♪」

しかし、それが何時、自分の中で逆転するかは分からない。
そう自分に言い聞かせながらも、うちはやっぱり京太郎君から離れる事が出来ひん。
そんな自分に肩を落として、ふと京太郎君の後ろにある柱時計に目を向ければ、そこは既に14時を遥かに過ぎ去っている。
どうやらうちが夢中になっている間に、結構な時間が経ってしまったみたいや。


京太郎「満足出来ました?」
漫「…全然…ん…♪」

悪戯っぽくそう尋ねる京太郎君にうちはそっとその首を振った。
数十分ほどこうして抱きつき続けたとは言え、ずっと京太郎君と会えなかったうちの身体はまったく満足していない。
けれど、うちの所為で貴重な時間を無駄にしてしまったのは紛れもない事実や。
それを思うとシュンと肩が落ち、申し訳ない気持ちが胸の奥から湧き上がる。

漫「ごめんな…折角、来てくれたのに…」
京太郎「良いですよ。予想してた事ですし」

そんなうちを励ますように言いながら、京太郎君はうちの髪にそっと触れた。
セットした髪を崩さないようにポンポンと上から抑えるようなそれはとても優しい。
京太郎君の暖かさを伝えるようなそれに落ち込んでいたはずのうちから笑みが漏れる。
それに京太郎君も笑みを返してくれたお陰で、うちらの間に穏やかな空気が流れた。

京太郎「それより待たせてごめんなさい。雪が振っちゃった所為で途中にチェーンの準備とか色々あって…」

そう謝罪する京太郎君に対して、うちは首を左右に振った。
うちは長野に行った事はないけれど、もう今の時期から雪が降り始めている事くらい知っているんやから。
日本でも有数の豪雪地帯を抜ける為にあんまり速度を出せないのは、小学生でも分かる。
勿論、高速バスのダイヤはそう云うのを含めて考えられているとは言え、数分の遅れくらいは許容範囲やろう。


漫「それより…会いに来てくれた方が嬉しい…♪」

勿論、遅れた事に関して、うちがソワソワしていたのは確かや。
でも、それ以上に今のうちは京太郎君と会えた事が嬉しかった。
今やったら代行の罰ゲームだって耐えられると思うくらいに胸の中が嬉しさで満ち溢れている。
その気持ちを少しでも伝えようと手に力を込めた瞬間、うちは自分の持っているトートバッグの存在を思い出した。

漫「そう言えば…ご飯食べた?」
京太郎「いや、実はまだなんですよ」

途中で何度か休憩を挟むとは言え、バスの目的は観光ではなく移動や。
サービスエリアに止まる回数だって必要最低限やろう。
到着時刻はちょうど、昼過ぎちょっとになるし、昼ご飯はまだなんじゃないやろうか。
そう思ったうちの予想は、見事に的中していたらしい。

漫「じゃあ…移動する前にここで食べへん?実は…ちょっと作って来たんよ」
京太郎「えっマジですか!?」

そんなうちの言葉に京太郎君は驚きながらも、嬉しそうに返してくれる。
それだけであまり眠れなかった身体に鞭を打って、色々と仕込んでおいた甲斐があると思えた。
うちは案外、尽くす事に喜びを見いだせるタイプやったらしい。
今まで自分ではそんなつもりはなかったものの、新しい自分の発見は嫌なものやなかった。

漫「まぁ、サンドイッチやけどね」

とは言え、それはあんまり手の込んだものやない。
手作りなのでまったく手間がかかっていないとは言えんけど、お弁当ほど手が混んだものって訳でもなかった。
まぁ、サンドイッチやったら外しても後で摘めるし、お弁当よりは気持ちも軽く映る。
外した時の痛々しさもお弁当よりもマシなはずやし…ベターなチョイスだったはず。

京太郎「いや、夕飯も近いですし、そっちの方が良いですよ」

そう言ってくれる京太郎君がうちの気持ちをどれだけ汲み取ってくれとるかは分からへん。
けど、その表情には嘘はなく、心底、喜んでくれとるのがはっきりと伝わってくる。
それにうちも嬉しくなって、今度こそ身体を離した。
瞬間、京太郎君に触れていた肌を秋空の冷たい空気撫でるものの、それに怯む事はない。
それよりも今はそんなに喜んでくれている京太郎君にご褒美をあげたいと、うちはトートバッグの中からランチケースを取り出した。

漫「はい。どうぞ♪」
京太郎「うす。やばい…匂いだけでも美味しそうだ…」

うちの手からランチケースを受け取った京太郎君はクンクンと鼻を動かす。
そのままランチケースを開いていくその顔は今にもヨダレが出そうなものになっていた。
一体、どれくらいの間、休憩しなかったのかは分からんけど、お腹が空いとるのは事実なんやろう。
そんな京太郎君の顔にうちは一つ笑みを漏らしながら、そっと口を開いた。


漫「もう…♪相変わらずお世辞が上手いんやから」
京太郎「お世辞じゃないですよ…って…うぉぉ…」

瞬間、京太郎君の口から感嘆の声が漏れるのは蓋を外したからやろう。
その視線は中身へと釘付けになり、その目は驚きに見開かれていた。
まるでうちのサンドイッチに感動しているようなそれにうちの笑みが深くなる。

京太郎「…卵サンドだけじゃなくて…カツサンドやコロッケサンドまである…だと」
漫「男の子ってそういうの好きやろ?」

うち一人だけなら別に卵サンドやハムサンド程度で十分や。
けれど、男の子の京太郎君にとって、それだけやったら味気ないやろう。
そう思ったうちが挟んだのはカツやコロッケと言ったサンドイッチの花型ばかり。
勿論、栄養のバランスを考えて野菜も挟んでいるけれど、その割合は決して多いものやなかった。

漫「一応、中身も一から作ったんやで?」
京太郎「つまりこの野菜も漫さんが愛情込めて栽培した特製の…」
漫「それに愛情込めてくれたんは名も知らぬ農家のおじいさんや」

ゴクリと生唾を飲み込む京太郎君の言葉が冗談ってのは気づいとった。
それにツッコミめいた言葉を放ちながら、うちはクスリと笑い声をあげる。
久しくなかった冗談の応酬に、うちは思ったより飢えとったんやろう。
心の中が妙に浮かれて、ウキウキとしてしまう。


京太郎「いや、ここまでしてくれるなんて思ってなかったですから、マジ嬉しいですよ」
漫「ふふ…嬉しいけど、そういうのは食べてからにしてぇな」

そこでふと真顔になって告げる京太郎君の言葉は嬉しかった。
せやけど、どうせならそういうのは一口食べてからにして欲しい。
そう思うのは…さっきから京太郎君の感想が気になって仕方ないからなんやろう。
匂いは褒めて貰えたけれど…ちゃんと京太郎君の口に合うやろうか。
その思考がさっきからうちの脳裏にチラチラと映り込み、どうしても気になってしまう。

京太郎「じゃあ、カツサンドから頂きますね」
漫「いきなり大物やね」
京太郎「マジで腹減ってるんで…それじゃ…」

そう言いながら、京太郎君はランチケースから取り出したカツサンドにかぶりつく。
うちが朝から油と格闘しながら揚げたそれはケチャップベースのポピュラーなタイプや。
しっかり衣をつけてカリカリに揚げてからそれほど時間も経ってないし、食感だって悪くない…と思う。
せやけど、うちが味見してからそれは少し時間も経過し、どうなっとるかうちにも分からへん。
それをモグモグと口にする京太郎君にうちはついつい口を開いてしもうた。

漫「ど…どう?」
京太郎「…美味いっす」

伺うようなうちの言葉に、一つ頷いてから京太郎君はムシャムシャとカツサンドを食べ始める。
そこには嘘も冗談もないどころか、寧ろ夢中になっているような感情さえ感じ取る事が出来た。
どうやら…うちのサンドイッチはかなり京太郎君に好評を頂いているらしい。
それに胸を撫で下ろすうちの前で京太郎君は最初の一つを完食した。

京太郎「いや…本当に美味しかったですよ。もう一個貰って良いですか?」
漫「どんどん食べてええよ。ただ、あんまり焦ると喉に詰まらせるから気ぃつけてな」

そう言ううちの言葉に頷きながら、京太郎君はまた一つサンドイッチを口へと運ぶ。
その勢いはさっきよりも早く、味わうと言う気持ちがあまり感じられなかった。
しかし、それでも嬉しそうに食べる京太郎君が可愛くて仕方がない。
まるで外で元気いっぱい遊んできた後の子どものようなその姿に、母性を刺激されてるなんて思うくらいや。

漫「(まぁ、一応、準備だけしとこうか)」

クスリと笑みを浮かべながら、うちがそう思うのは京太郎君の勢いがあまりにも早すぎるからや。
バクバクと勢い良くかぶりつくその姿は、何時、サンドイッチを喉に詰まらせてもおかしくはなかった。
特にパンは水を吸ったら膨れるのもあって、比較的、喉に詰まりやすい食材や。
そうでなくても、パンの後は口の中が乾くものだし、お茶の準備をしておこう。

京太郎「んぐ…っ!」
漫「もう言ったのに…」

そう思ったうちがトートバッグから水筒を取り出した瞬間、京太郎君が苦しそうに喉を叩く。
ドンドンと必死になって流し込もうとする京太郎君を見ながら、うちは水筒のキャップ兼コップを外し、そこへとお茶を流し込む。
それを焦る京太郎君へと手渡した瞬間、彼はそれを一気に呷った。
その数秒後、大きく息を吐いた京太郎君にはさっきまでの苦しそうな様子はなく、安心をその顔に浮かばせていた。


京太郎「…助かりました」
漫「別にええよ。でも、あんまりパンの時は焦ったらあかんで」

元々、唾液で膨れていたのもあって、今回はお茶で流しこむ事が出来た。
しかし、パンの性質上、水で流し込もうとするのは逆効果になってしまう場合もあるんや。
勿論、そんな事は滅多にないとは言え、絶対にそうならへんとは言い切れへん。
それを思えば最初から詰まらないように気をつけるのが一番やろう。

漫「ちゃんと噛んで食べる癖つけへんかったら健康にも悪いんやからな」
京太郎「次から気をつけます…」

うちの言葉にシュンと肩を落とすのは、それが叱るような口調になったからやろう。
それに心の奥が申し訳なさで疼くが、かと言って甘やかすと京太郎君の為にならへん。
多少、落ち込んでも健康の為にもちゃんと噛む癖をつけさせておいた方が後々、彼の為になるんやから。

漫「まぁ…それくらい美味しいっていうのは伝わってきたから…嬉しいけどね」

そう言い聞かせながらも、そうフォローの言葉を紡いでしまうのは…結局、うちが甘い所為なんやろう。
落ち込む京太郎君に母性を擽られたうちは何かしたくて仕方なかったんや。
結局、それがさっきの京太郎君を僅かにでも肯定してしまうのは自分でも良くないと思うが、それでもその言葉は嘘やない。
そうやって嬉しそうに食べてくれる彼が嬉しくて、頑張った甲斐があったと心から思ったんやから。

漫「でも…本当に危ないんやから、気をつけて」
京太郎「はい」

最後にそう釘を指しながら、うちもまたランチケースに手を伸ばす。
京太郎君と一緒に食べたいと言うのもあって、うちもまだ昼食は済ませてなかった。
味見もしていたので流石にお腹がペコペコだって言うほどじゃないけれど、このまま夕飯まで持つほどじゃない。
そう思いながら口に運んだハムサンドは思ったより味も劣化しておらず、意外といい出来だと自画自賛出来た。

京太郎「でも、さっきの漫さん、まるで母親か姉みたいでしたね」
漫「えー…流石に母親は嫌やなぁ…」

勿論、小言っぽくなったのは自分でも自覚してるけど、母親扱いは流石に凹む。
それほど年齢差がある訳じゃないし、何よりうちは京太郎君をそういう対象に見とらんのやから。
それよりはもっと艶っぽくてドロドロとした感情を向けている相手に、母親と思われたくない。

漫「でも、おねーちゃんやったら別に構わへんかも」

そう思うのはうちが意外と、京太郎君に頼られるシチュエーションが嫌いじゃないからやろう。
母親は流石に嫌だけれど、年の近いおねーちゃんなら、そんなに拒否感は出えへんかった。
レディコミにもそういう話が少なからずあって、うちもそういう禁断の恋とやらに憧れが…い、いや、それはともかく。
い、色々な理由があって嫌じゃないのは、確かなんや。

京太郎「じゃあ、今日の漫さんは漫姉ですね」
漫「だったら敬語止めへんとなぁ」

そんなうちに乗ってくれる京太郎君にクスリと笑いながら、うちは一つ目を完食した。
勿論、それは絶品って程じゃないけれど、市販のそれよりはボリュームがあって美味しいと思う。
本格的に料理の勉強を始めたのは合宿後からって事を加味すれば、そこそこ上出来なんじゃないやろうか。
そう思ううちに京太郎君はそっと顔を近づけてきた。

京太郎「…エロいスイッチ入りません?」
漫「そ、それくらいやったら大丈夫やと思う。…多分」

まるでうちの耳元にキスするようなその仕草にドキドキしたのもつかの間。
声を潜めて尋ねる京太郎君にうちは自信なさげにそう返す。
勿論、その程度で発情しちゃうほど自制心がない訳じゃないと思うものの…うちはまだまだ経験不足や。
こうして初めてのデートが終わるまでは、正直、どんな事で発情スイッチが入るか分からない。
『京君』『漫』と言う特別な呼び方さえしなければ大丈夫…と言う予測が正しいかさえ分からず、うちはそうやって曖昧に返すしかなかった。

京太郎「じゃあ…漫姉、これからどうする?」
漫「ふふ♪その辺はちゃあんと考えとるで」

そんなうちから顔を離しての京太郎君の言葉にうちが我慢出来ひんようになる事はなかった。
勿論、心の中は擽ったくて、ムズムズするけど、それは決して欲情に結びつくものやない。
それに一つ安堵しながら、うちは微かに胸を逸らし、自慢するようにその口を開いた。

漫「デートコースは万全。最初から最後までしっかりとうちに抜かりはないで」
京太郎「ごめんな。本当はそういうのは俺が考えなきゃいけないんだけど…」

胸を張るうちとは対照的に、謝罪する京太郎君の肩は下がっていく。
恐らく、その頭の中では男がデートをリードするもの、という意識が強いんやろう。
勿論、うちだってそうして欲しいという気持ちがまったくないとは言えへん。

漫「しゃあないやん。京太郎君はこっちの事知らへんのやし。それにこういうのは地元民に任しといた方がええねんて」

これが京太郎君の地元である長野であれば、うちは遠慮なく彼に全てを任せていたやろう。
しかし、ここは京太郎君にとっては未知の土地であり、うちの地元なんや。
他所の人間が付け焼刃の知識でデートコースを考えるよりは地元の人間が導いてあげた方が遥かに効率が良く、何より安全なんやから。
他所からは楽しそうに見えてもその詳細を知る地元民には微妙なスポットと言うのはどの県にも少なからずあるんや。

漫「その代わり、何時か長野に行く時は案内して貰うからその時は凄いの頼むで」
京太郎「何か凄いハードルが上がった気がする…!!」
漫「うちの期待を損ねたら後でお仕置きやからね」

勿論、それは冗談であり、本当に何かをするつもりはない。
うちにとっては京太郎君と思い出を共有出来るだけで嬉しい事なんやから。
ましてや彼が案内してくれるというだけで、きっと何処でも楽しめるやろう。
それに何より…うちはお仕置きするよりも、される方が好みなんや。
そんなうちにとって、それはあくまでも京太郎君との掛け合いを楽しむ為のものでしかなかった。

京太郎「じゃあ、俺も今日のデートが気に入らなかったら、漫姉にお仕置きしても良いんだな?」
漫「ぅ…そ、それは…♥」

それを見抜いたんやろう。
京太郎君がにやりと笑いながら紡いだ言葉は、そんなうちの心を突き刺す。
ジクリと心の中に染みこんでくる言葉に、胸の奥が強い疼きを走らせた。
肌の内側が甘い炎で炙られているようなチリチリとした感覚にうちの言葉は遮られる。

漫「え…えぇよ。そんなん…出来るんやったら…やけど…♪」

そんなうちの口からポツリポツリと漏れ出るそれは強がり混じりのものやった。
何せ、ここでそれを疼きのままに受け入れてしもうたら、折角のデートがおじゃんになるんやから。
それこそうちはこのまま京太郎君をラブホに連れ込んで、彼が帰る明日までずっと繋がりっぱなしになるやろう。
それに心惹かれへんって言うたら嘘になるけど、でも、初デートがラブホ直行なんて流石に嫌や。
とは言え、京太郎君に慣らされた身体は、それを完全に拒絶する事は出来ず、こうして微妙な言葉を放ってしまう。

京太郎「よし。その言葉忘れんなよ」
漫「ん…♪」

そう言って京太郎君はうちの頭をそっと撫でてくれた。
まるでギリギリのところで我慢したうちを褒めるようなそれに思わず目も細まる。
その胸中には愛しさ混じりの歓喜が浮かび、欲情を押しのけていった。
勿論、うちの中に根強く残るそれは完全に駆逐なんて出来ひん。
けれど、意識から少しずつ深層へと下っていくその感情にうちは安堵を覚えた。

京太郎「まぁ、俺もデートなんて初めてですし、気軽に行きましょう」

いきなり素に戻っての言葉は、うちがプレッシャーを感じているんじゃないかと心配してのものなんやろう。
何だかんだでこれがうちの初デートなのは、京太郎君も知っている事なんやから。
それを胸の中がさらに暖かくなるのを感じながらも、うちはその言葉を見過ごす事は出来ひんかった。

漫「て言うか…初めてなん?」
京太郎「そりゃそうですよ。そんな暇ないですし」

うちはてっきり原村さんや神代さんととうの昔にデートしているものやと思っとったんや。
いや、そうでなくても、メールや電話で仲良さげに出てくる宮永咲と一回くらいはこうしたお出かけをしているもんやと思い込んどった。
けれど、あっけらかんと返す京太郎君には嘘は見えず…だからこそ、うちの胸は大きく跳ね、ドクドクと鼓動の音を大きくしてしまう。

漫「じゃあ、うちが京太郎君の初めての女なんやね」
京太郎「逆に俺も漫さんにとって初めての男な訳で」
漫「つまり…お揃いやね」
京太郎「お揃いですね」

そんなバカップル丸出しな会話をしながら、うちらはサンドイッチを咀嚼していく。
その勢いは決して遅くはなく、また二人で食べているという事もあって、あっという間に減っていった。
時折、会話を挟みながらの食事の時間は楽しいが、サンドイッチがなくなればそれを維持する事は出来ない。
その侘しさに一つ肩を落としながら、うちは京太郎君にそっと水筒のコップを差し出した。


漫「諸行無常やなぁ…」
京太郎「いきなり何を言ってるんですか」

そんなうちの手からコップを受け取りながら、呆れたように突っ込む京太郎君。
そのままグイっとコップを呷った彼はうちにそれを返してくれた。
勿論、そこには京太郎君の唾液が残っておるはずや。
そう思うと唐突に喉の奥が乾いて、さっき補給したはずのお茶が何故か唐突に飲みたくなる。

京太郎「美味しいもの食べるのも、楽しいのもこっからでしょうに」
漫「せ、せやね!」

そう言って、京太郎君はうちにほっとするような暖かな笑みを向けてくれる。
まるで心からうちとのデートを楽しみにしてくれているのが伝わってくるその笑みに、良心がズキリと疼いた。
何せ、今のうちは完全に上の空で、京太郎君の言葉を聴き逃しそうになっていたんやから。
意識の半分以上をコップに引っ張られていたんうちに、そうやって素敵な笑顔を向けられるとなんとなく申し訳なくなる。

京太郎「それで…今日は何処に行くんですか?」
漫「それは秘密や」

そんなうちの気持ちに気づいとるのか気づいとらへんのか。
京太郎君はその話題を大きく変えて、うちへと尋ねてくる。
それに釣れなく返しながら、うちはそっと水筒とランチケースをトートバッグへとしまっていった。
最後にその口をきゅっと紐で縛ってから、うちはベンチから立ち上がる。

漫「現地に着くまでワクワクドキドキのサプライズデートやで」
京太郎「俺はもう久しぶりに会った漫さんにドキドキしっぱなしなんですけど」
漫「えっ…?」

そんなうちに次いでベンチから立ち上がった京太郎君の言葉に、ついつい振り返ってしまう。
どうせ、それも京太郎君の冗談やって、うちには分かっとる。
こんなタイミングでドキドキなんて言い出すんやから、それ以外にはありえへん。
でも…まるでうちの身体は抑えきれへん衝動に流されるように振り向いてしまう。

京太郎「…私服すげー可愛いです」
漫「あぅ…」

瞬間、うちの視界に入ったのはその頬を赤く染めた京太郎君の姿やった。
まるで自分の言葉に恥ずかしがっているようなその姿にうちの顔も赤くなる。
だって、それは京太郎君が冗談でもお世辞でもなく、本気で言ってくれている証なんやから。
それだけでうちの肌は熱くなって、身体に喜びが行き渡っていくのを感じる。

漫「も、もうちょっと早めに褒めへんかったらあかんで…?」

でも、それを表に出来ないのは、そうしたらうちが暴発しかねないからや。
本当はそんな意地っ張りな言葉は言いたくないけど、ここで素直に嬉しがるとうちはきっと止まれへん。
もっともっと京太郎君に褒めてもらいたくて…色々とアピールしてしまうやろう。
そうなったら、京太郎君もきっとタガが外れて…二人でラブホ直行ルートや。
段々、自分の中でそれでも良いかという気持ちが強くなってきているけど、でも、やっぱり初デートくらいちゃんとやりきりたい。

京太郎「実はずっとタイミング伺ってましてですね…」
漫「そう言うのは多少、強引でもええよ」

気まずそうに目を背ける京太郎君にうちはそっと腕を絡める。
それだけで頭の中がカァァと熱くなって、鼓動が激しくなるのを強引に意識から追い出した。
そのまま大きく息を吸い込むうちの横で京太郎君が心配そうな目を向ける。
いきなり横で深呼吸しだしたんやから、それも当然やろう。

漫「罰として、当分はうちの抱きつき攻撃を受けるんやな」
京太郎「寧ろ、ご褒美なんですけど…」
漫「知っとるよ、そんなの」

だって、京太郎君は本当に筋金入りのおっぱい好きなんやから。
能力の対象にもなるくらい洗練されたその欲望は、到底、我慢出来るものやない。
例え、それが冬服に近い厚手のコーデ越しでも、京太郎君は喜んでくれるやろう。
そして、それこそが目的なうちにとって、罰なんて言うのは名目以外の何者でもあらへん。

漫「…だから、察してぇな」

だけど、それを流石に表には出せない。
そんなうちが歩き出しながらの言葉に、後ろの京太郎君はクスリと笑った。
どうやらうちに腕を引っ張られていると言うのに…京太郎君はうちに微笑ましさを感じているらしい。


京太郎「漫さんは甘えん坊ですね」
漫「せ、先輩に対して生意気よ?」

それが生意気だと思うものの、うちの言葉は喜色を滲ませていた。
何だかんだ言って…京太郎君はそんな甘えん坊なうちを受け止めてくれるって分かっているからやろうか。
その生意気な口ぶりにもドキドキするだけで、決して嫌なものを感じない。
まるで飼い慣らされているような自分の姿に悔しく思えるくらい…うちはもう京太郎君にぞっこんやった。

京太郎「生意気なのはそれだけ漫さんが気易くて良い先輩だからですよ」
漫「むぅぅ…」

その上、そんなうちを持ち上げるような言葉を言われたら、拗ねてはいられない。
勿論、卑怯な言い方だと言うのは分かっているものの…悔しいかな、あんまり悪い気はせんかった。
うちは末原先輩みたいな皆に尊敬されるようなタイプじゃないのはここ最近で良く分かっとるんやから。
実際、京太郎君に恭しくされる自分なんていうのはまったく想像出来ひんし、それよりはこうした気安い関係の方が居心地が良い。

漫「何か最近、京太郎君が口が上手くなりすぎて不安やわ…」
京太郎「日頃から漫さんにメールなんかで鍛えられてますから」

そう京太郎君はあっけらかんと言うものの…多分、それだけやない。
そうであって欲しいとは思うものの、うちと京太郎君の普段の接点はメールや電話だけなんやから。
それよりは普段、京太郎君の周りにいる皆から受ける影響の方が遥かに大きいはずや。

漫「(実際…ここ最近は二人の話題が多いし…)」

勿論、それは京太郎君自身は意識してへんものなんやろう。
だけど、そのメールを一日の間に何度も読み返し、寝る前に録音した京太郎君の声を聞いているうちにはよぉ分かる。
京太郎君は少しずつ…でも、確実に原村さんと神代さんとの話題が増えていっとるんや。
二人が何をした、どうなった…そんな風な言葉が増えるのは、間違いなく京太郎君が二人を意識しとるからやろう。

漫「(前は…宮永咲の事が一番、多かったのに…)」

しかし、今やその関係は完全に逆転している。
今の彼にとって、不安で中々、目を離せないと称した宮永咲よりも二人の事が気になっているんやろう。
そして…それが今のうちにはかなり…心にクる。
一人だけ大阪という離れた土地に居て、置いてけぼりを喰らっているうちにとって、着実に距離を縮めているだろう三人の姿は胸が痛むものやった。

漫「(うちだって…能力の影響を受けとるのに…)」

勿論、それは距離や生活の問題もあって、仕方のない事やと分かっとる。
だけど、一人だけ蚊帳の外に置かれとるという疎外感は…やっぱりどうしても胸へと突き刺さるんや。
そして…そこから湧き上がる何とも自分勝手な不公平感。
自分から志願して能力の実験台になったうちだけ、どうして仲間はずれにするんやって。
うちだって副作用で…京太郎君に会いたくて仕方ないのに…どうして一人ぼっちにするんやって。
二人とだけ毎日会って…優しい言葉を向けるなんてズルいって。
仕方ないって分かっているのに、そんな感情が溢れて…どうしても止まらへんかった。

漫「(だから…絶対にこのデートで…もっと仲良くなってみせるんや…!)」

そんな不公平感を解消する為にも…うちはこのデート、絶対に失敗は出来ひん。
他の二人に対して、どうしても環境が悪いのを否めないうちは一回で大きく稼がへんかったら負けてしまうんやから。
それは…正直、考えたくもない未来だからこそ…うちは… ――




………



……








大阪が誇るデートスポットと言えば、殆どの人がU○Jを思い浮かべるんやないやろうか。
実際、そこは日本でも有数の遊園地やし、人気なのは間違いない。
けれど、付き合いたてのカップルが行くのに適しているかと言えば、答えはNOや。
何せ、人気過ぎて休日は殆どのアトラクションが時間単位で待たへんかったらあかん。
平日だって修学旅行生が多く立ち寄り、人気アトラクションで待ち時間が発生するのも珍しゅうはない。
そんな場所に付き合いたてのぎこちないカップルが行けば、話題が途切れて、気まずいまま別れてしまうやろう。

漫「(まぁ、うちと京太郎君はそういう仲やないけれど…)」

でも、お互いがこれが初デートだと理解している以上、そんな危険牌は打てない。
それよりももっと安全で、かつ思い出が残りやすい場所で仲を深めていくのが一番や。
そして、幸いにも大阪にはそれにとても適した場所がある。
それは… ――

京太郎「おぉ…」

大阪港駅から降りて、少し歩いたうちらの前にあったのは特徴的な建物やった。
まるで角ばったキノコのような形をするその壁には海に泳ぐ様々な魚たちが描かれている。
中央の壁に水面へと登ろうとしているようなイルカが二匹描かれたそこは… ――

京太郎「これが噂の海遊○…」
漫「ふふん」ドヤァ

感嘆したような京太郎君の声に、うちはついつい胸を張ってしまう。
勿論、うちは何も偉くはないんやけれど、他県の子にそうやって感心されるのは悪い気分やない。
生まれも育ちも大阪な所為か、結構、うちも郷土愛っていうのが強い方なんやろう。


京太郎「確かジンベエザメがいるんですよね?」
漫「海○館はそれだけやないで」

勿論、全国的にそれが有名なのは事実やろう。
だけど、うちがわざわざ初デートの場所にここを選んだのはそんなミーハーな理由だからやない。
ここが普通の水族館よりもアミューズメントとしての部分に力を入れて、色々と楽しめるからや。
近くには対岸の○FJにも負けない立派な大観覧車があるし、遊覧船だって出とる。
その代わり他の水族館にはありがちなショーとかはないけれど、一日中時間を潰すのはそう難しくはない。

漫「(まぁ、かく言ううちもここに足を運んだのは確か中学校くらいの遠足以来やけれど)」

身近過ぎてあんまり行かないってのは大阪でも同じや。
でも、デートコースの定番を色々と調べた結果、たどり着いたその考えはあんまり間違ってないと思う。
友達もそんなうちの判断に賛成してくれたし、きっと大丈夫。
そう自分を奮い立たせながら、うちはそっと足を動かし、京太郎君を引っ張る。

漫「まぁ、あんまりネタバレするのも面白くないやろ?」
京太郎「確かに…その通りですね」

まぁ、実際はうちが行った頃とはまた色々と違っているみたいで説明しきれへんのが本音やった。
勿論、ここを選ぶにあたって雑誌やネットの評判なんかにはひと通り目を通したけれど、ちゃんと説明出来るほどやない。
その辺を突っ込まれて、しどろもどろになるのは面白くないし、ここは誤魔化すのが一番や。
先輩って言うのは基本的に後輩に対して、意地っ張りで見栄っ張り生き物なんやから。

京太郎「それじゃ一杯、楽しみましょうか」
漫「うんっ♪」

そんなうちに京太郎君が告げる言葉に首肯と共に返事を返す。
その瞬間、うちらは入り口を潜り、その不可思議な建物へと飲み込まれた。
そんなうちらをまず真っ先に迎えてくれたのは、勿論、チケット売り場。
修学旅行生も一段落ついた所為か、心なし暇そうにしているお姉ちゃんにうちらは近づいていく。

漫「大人二枚お願いします」
京太郎「いや、ちょ、漫さん!?」

京太郎君がそう焦った声を出すものの、もう遅い。
その利き腕はうちの胸が抑えているし、利き腕が使えるうちの方が財布を出すのは早い。
まさかうちがお金を出そうとするなんて想像もしていなかった事もあり、うちはスルスルと精算へと進んでいく。
その最後にチケットを受け取ったうちは、横の京太郎君に勝ち誇ったようにニコリと笑った。

京太郎「ズルいっすよ」
漫「言ったやろ。諸経費は割り勘やって」

このデートを決めた際、必要経費は常に割り勘で、という話やった。
うちは校則や部活の都合でバイト出来ひんし、お小遣いもあんまり高くない。
その辺の事を気遣って、京太郎君は全額出すと言ってくれたけど、うちが必死でねじ込んで妥協させたんや。
でも、だからと言って、高速バスに乗って大阪まで来てくれた京太郎君にホイホイと割り勘させるのも心苦しい。


漫「これで行きのバス代くらいにはなったやろ」
京太郎「そんなに気を遣わなくても大丈夫ですよ」
漫「うちが気にすんの」

結果、うちが選んだのは、せめてバス代分くらいは強引に奢るというものやった。
そんなのメールでも電話でも一言も伝えていなかったから、京太郎君にとっては条約違反も良い所だろう。
それでもやっぱりうちにも先輩としての意地があるし、何より… ――

漫「それに…そうやって浮いたお金で京太郎君の方がまた会いに来てくれるだけでうちは幸せよ」

そう。
そうやって浮いたお金で京太郎君がまた大阪に来る気になってくれれば、お金を出した甲斐は十二分にある。
勿論、京太郎君だって今の時期は大会やら何やらで忙しいから、期待するのはいけん事やろう。
しかし、やっぱり一ヶ月に一回か二回…って言うのはやっぱり寂しい。
それを口に出したら京太郎君が困る事くらい分かるから口には出さへんけれど…冗談めかしたそれは決して嘘やなかった。

京太郎「漫さん…」
漫「ふふん♪うち結構、殊勝な女やろ?」ドヤァ
京太郎「漫さんは最初から優しくて気遣いの出来る人ですよ」

それを隠したくてドヤ顔するうちに京太郎君はクスリと笑って、頭をそっと撫でてくれた。
優しくて暖かいその手つきに思わず胸の奥が熱くなる。
身体の内側にも心地好さが満たされ、緩やかに脱力していく感覚が湧き上がるくらいや。
だけど、まだ入り口にも立っとらへん状態でふにゃふにゃになる訳にはいかへん。
そう自分に言い聞かせながらぐっと足に力を込め、しゃんと自分の足で歩き続ける。

京太郎「でも、俺は今日、漫さんに男を見せる為にバイト頑張ったんですから、もうちょっと頼って下さい」
漫「んー…善処するって事で」

勿論、うちはバイトしてへんから、どうしても京太郎君に頼らざるを得ない立場や。
何もかんもうちが出してあげるなんて不可能やし、今日だっておかんから貰ったデート代特別手当にかなり頼っとる。
だけど、それでもギリギリまでは京太郎君の面倒を見てあげたい。
デートなんて初めてだし、どんな風にお金が飛んでいくかは分からないけれど、やれる分はやってあげたいのが本音や。

京太郎「漫さぁん…」
漫「ほら、情けない事言ってないで…そろそろ見えてくるで」

そんな話題を誤魔化す為にうちが指さしたのは青い世界やった。
天井から降り注ぐ青い光に染まったそこは色とりどりの魚が泳いどる。
丸いチューブ状のそれはまるで海底トンネルさながらの光景を演出していた。
10mちょっとしかない、けれど、とても神秘的なそれにうちらの目は惹きつけられていく。






【アクアゲート】

京太郎「お、おぉ…アクアゲートだ…」

漫「何時も思うけど、これ考えた人、凄いよね」

京太郎「三方が水で囲まれて、普通の水槽とはかなり違いますからね」

漫「…でも、コレ見ると何時も思うんやけど」

京太郎「?」

漫「何で下までガラスにせんのやろうね?」

京太郎「あー…ここまで来るならいっそ全部ガラスにしちゃえ的な?」

漫「そうそう。折角やし、足元を泳ぐ魚とかも見てみたいやん?」

京太郎「多分、小さい子どもとかが怯えちゃうんじゃないでしょうか」

漫「なるほど。水族館って確かに小さい子どもも来るもんね」

京太郎「後はコストの問題とか」

漫「ちょ!そんな世知辛い事言わんといてぇな!」

京太郎「はは、すみません。折角の水族館で言うセリフじゃなかったですね」



漫「お、エイ泳いどる」

京太郎「何であれで泳げるんでしょうね」

漫「そう言えば…横の羽動かしとるだけやんな」

京太郎「可愛らしい仕草なのは確かなんですけどね」

漫「でも、顔は中々、迫力あるんよねぇ…」

京太郎「硬派な職人って感じに見えますからね」

京太郎「ただ…俺は子どもの頃、必死になってエイとにらめっこしてましたけど」

漫「何でにらめっこなん?」

京太郎「いやぁ…あの下の口が何故かツボに入ってですね」

京太郎「悔しいから必死になって、笑わせてやろうと変顔してました」

京太郎「気づいた時には集合時間過ぎてて、先生が慌てて探しに来ていましたね」

漫「子どもの頃から負けず嫌いやったんやね」

京太郎「まぁ、エイが笑うはずないから負け続けだったんですけどね」

漫「いや、実は内心、馬鹿な奴って笑われてたかもしれへんよ?」

京太郎「もし、そうだったとしたら勝った喜びよりもショックの方がでかいですね…」


京太郎「にしても、此処は全体的に黄色い感じですね」

漫「あざとい枠やな」

京太郎「あざとい?」

漫「いや、ごめん。何でもあらへん」

漫「(…今時、日曜朝のアニメ見てるとか知られたくないのに…迂闊やった…)」

京太郎「あ、ここ熱帯魚が中心なのか」

漫「だから、色々とカラフルなんかもしれへんね」

京太郎「泳いでる魚を見てるとなんかサンゴ礁とかそんなイメージが強いですし」

漫「こういうのも意外と日本の周りに住んどるんやなぁ…」

京太郎「かなり意外ですよね。このキイロハギとか言うのももう完全に真っ黄色ですし」

漫「ヒフキアイゴってのも負けず劣らず黄色いけど、こっちは時間で色が変わるみたいやね」

京太郎「それはそれで見てみたいですけど…」

漫「今日一日は何回でも入れるし、後で見に来る?」

京太郎「んーでも、流石にコイツだけの為にもっかいってのは悩みますね」

漫「んじゃ、他の所見てから色々と考えてみよっか」

京太郎「ですね」



【エスカレーター】

京太郎「エスカレーター長っ!!」

漫「ふふふ…やっぱりそこは突っ込むよね」

京太郎「いや、だって、マジ長いですよ。これ何階分くらいあるんですか…」

漫「あー、ごめん。うちもそれは分からへん」

漫「えーっと…パンフパンフっと…」

京太郎「あ、ズルい。いつの間に」

漫「チケット売り場のおねーさんに貰ったんよ。京太郎君の分もあるで」

京太郎「良かった。…でも、パンフ読みながらエスカレーターとか怖くないです?」

京太郎「特にこれ信じられないくらい長いですし」

漫「まぁ、京太郎君がしっかりとうちの事を抱いてくれるって信じとるからな」ニコッ

京太郎「あー…もう。そんなの言われたらダメだって言えないじゃないですか」

漫「ふふ…♪まぁ、三半規管も弱くないし、大丈夫やって」

漫「うちあんまり車とかでも酔った事あらへんしね」

京太郎「羨ましい…」



漫「あー…これ八階まであがるみたいやね」

京太郎「八階って…スケールが違いますね」

漫「普通のデパートとかだったら一階ずつやからねぇ」

京太郎「そもそも八階建てのデパートとかあんまりないんじゃないですよ」

京太郎「俺の知ってる一番大きなところで七階、地下含めてギリ八階って感じですし」

漫「阪急とか大丸とかその辺やったら、結構、八階とか十階建てあるで」

京太郎「阪急?大丸?」

漫「あぁ…そうか。そっちには出店してへんのか」

漫「こっちじゃ有名な大手百貨店の事やで」

京太郎「あぁ、なるほど」

漫「そっちにはそういうのないん?」

京太郎「長野だけって訳じゃないけど東急系列の百貨店はありますね」

漫「うちは東急言うたらハンズが真っ先に出てくるなぁ」

京太郎「あんまりそういうのを利用しない俺は駅ですね」

漫「あぁ、そっか。東急も阪急と同じ鉄道会社が元なんか」

京太郎「えぇ。だから、あんまりデパートの東急ってイメージ湧き辛いんですよね」



漫「あ、でも、これ一階から八階にあがるんじゃないみたい」

京太郎「えっ…マジですか?」

漫「うん。さっきのところが三階扱いやねんて」

京太郎「またややこしい…」

漫「こういうの困るよねー」

京太郎「これがまだ水族館で順路があるから良いんですけど…」

京太郎「そういうのなかったら迷った時、困りますよね」

漫「あれ?京太郎君って結構、迷子になるタイプ?」

京太郎「いや、咲…知り合いが、そういうタイプでして…」

漫「あの子が?」

京太郎「えぇ。アレで結構なポンコツなんですよ、アイツ」

京太郎「公衆電話から携帯に掛けてきて三階にいるって言ったから走ったら、本当は五階だったとか…」

京太郎「探してる間に俺らしい人を見つけて移動しちゃって、公衆電話から離れるとか…」トオイメ

漫「苦労しとるんやね…」

京太郎「まぁ、もう慣れちゃいましたけどね」ハハッ



【日本の森】

漫「っと…着いたみたいやな」

京太郎「ここは…えっと森みたいですけど」

漫「うん。森やね。えっと…確か日本の森を再現しとるんやなかったっけ

京太郎「おぉ…カワウソがいる」

漫「ホンマや。かわええなぁ」

京太郎「漫さんの方が可愛いですよ」

漫「ふふ…京太郎君は口が上手…くあらへんよ!」

漫「カワウソと比べられてもちょっとなぁ…」

京太郎「はは、すみません」

京太郎「でも、意外と雰囲気似てると思いますよ?」

漫「そう?」

京太郎「えぇ。愛嬌のある顔立ちって感じです」

漫「んー…そう言われると悪い気はせんねぇ…」テレテレ

京太郎「(ちょろい)」


漫「カワウソって小魚だけじゃなくってカエル取るんやね」パネルジー

京太郎「っていうかカワウソってラッコの仲間だったんですか…知らなかった…」

漫「言われてみれば体毛のもしゃもしゃっぷりとか似てるけどね」

京太郎「ラッコってどうしても仰向けで泳いでるイメージがありますから、普通に泳ぐカワウソとはあんまり結びつかなかったです」

漫「うちはラッコと言えば、青くてピンクの貝持ってる奴やな」

京太郎「あー、アレですか。子どもの頃、良く見てましたよ」

漫「アレ確かN○Kやったしねぇ。全国放送は偉大」

京太郎「…でも、アレ、結構、怖い話あったような」

漫「あかんで」

京太郎「えっ」

漫「ピンク色のアレの事言うたらあかん」

京太郎「…」

漫「…」

京太郎「しまっちゃ」

漫「やめーや!やめーや!!」




漫「うちアレ、子どもの頃、ガチ泣きしたんやからな!!」

漫「怖すぎて一ヶ月くらい親と一緒に寝てもらったトラウマを掘り返すのは止めて!」

京太郎「そこまで怖がってる単語を口にしたのは悪かったですけど…」

京太郎「でも、アレ、そんなに怖かったですかね?俺も見てましたけど、結構、ケロッとしてたような…」

漫「…うち、暗くて狭いところ苦手やねん…」

京太郎「あー…」

漫「どっちか片一方だけなら全然、我慢出来るんやけどね。両方ともなるとホンマ無理で…」ブルッ

京太郎「何て言うか…ごめんなさい」

漫「許さへん」

漫「だから…今日はずっとうちの事離したらあかんで」ギュッ

京太郎「…最初っからそのつもりですよ」グッ

漫「じゃあ、ちょっと女子トイレまで行くから着いてきてくれるやんな?」

京太郎「すみません。本気で反省してるんで、それだけは勘弁してください…」


【七階】

漫「そんな訳で日本の森を降りて来た訳やけど…」

京太郎「水槽が一杯でようやく水族館っぽくなって来ましたね」

漫「まぁ…勿論、ここの目玉は…ってラッコやぁ♥」

京太郎「ラッコですねー。あ、こっち見た」

漫「えへへ、ちゃんと分かってくれとるんやね」

京太郎「私生活ジロジロ見てんじゃねぇよ的な視線だったり…」

漫「そ、そういう夢が壊れるような事言わんといてぇな…」

京太郎「でも、ラッコって結構、アグレッシブですよ」

漫「えー…ホンマなん?」

京太郎「元々、動物食ですし、水槽のガラスに貝を叩きつけたりする事もあるみたいですよ」

漫「いきなりそんなんされたらびっくりしすぎて泣きそうになる自信があるわ…」

京太郎「はは。まぁ、稀なケースらしいですし、きっと大丈夫ですよ」

漫「それやったらええねんけど…ねぇ、そんな事せえへん?」フリフリ

ラッコ「?」クビカシゲ

漫「かーわーいいーっ♪」パァァ

京太郎「(ラッコに夢中になってる漫さんの方が可愛いと思ったけど、さっき駄目だしされたし黙っておこう)」



漫「京太郎君!写メ取って写メ!!」

京太郎「あれ?ここって良いんですか?」

漫「フラッシュ使わんかったら大丈夫みたい」イジイジ

漫「うし。フラッシュ切ったで」テワタシ

京太郎「じゃあ、失礼して…」スッ

京太郎「それじゃ…3、2、1…」

漫「」ニコー

京太郎「はい。取れましたよー」

漫「見して見して!わぁ…♪」

京太郎「さっきのラッコに後ろからガン見されてますね」

漫「せやねー。ふふ…気に入られたんかも」

京太郎「だとしたら、ちょっと悔しいかもしれませんね」

漫「ふふ…じゃあ、うちが京太郎君のものやって教えてあげへんかったらあかんね♪」

京太郎「……さ、流石にそこそこ人通りがある中でそんな事やりませんよ?」

漫「でも、今ちょっと迷ったやんな?」

京太郎「…つ、次行きましょう。次」

漫「ふふ♪せやね」


漫「今度はアシカとアザラシやね」

京太郎「ラッコ見た後だと凄い大きく見えますね」

漫「えっと…アシカは2m超える事みたいやからねぇ…」パネルジー

京太郎「でけぇ…」

京太郎「っておぉ…潜ってる潜ってる」

漫「アシカの潜りっぷりは力強くて格好ええなぁ」

京太郎「シャチとかそういうのとはまた違ったものがありますね」

漫「陸上でも生活してる姿を見れる所為やろか」

京太郎「あぁ、確かにギャップがあるのかもしれませんね」

京太郎「トテトテ動いてる姿は格好良いより可愛い感じですし」

漫「…京太郎君もベッドの上では格好ええけどな」クスッ

京太郎「ぅ…い、いや…その…」カァァ

京太郎「って言うか、それって普段の俺が可愛いって事ですか?」

漫「さぁ、どうやろうなぁ♪」

漫「でも、そうやって照れとる京太郎君は可愛ええと思うよ♪」

京太郎「ぬぐぐ」




京太郎「そ、それよりゴマフアザラシは陸の方で横になってますね」

漫「昼寝中なんかな?」

京太郎「えっと…あ、そうか。餌やりが終わった後だからお腹いっぱいなんですね」パンフジー

漫「あー、そりゃ失敗やったなぁ…」

京太郎「すみません。俺の所為で…」

漫「いや、ちゃんとそういう時間の確認しとらんかったうちが悪いから気にせんとって」

漫「それにうちはああやって横になってるアザラシ見てるだけでも満足やし」

京太郎「確かにああいうのも中々、見れない姿かもしれませんね」

漫「そうそう。あぁ…リラックスしとるのがここまで伝わってくるわぁ…」デレデレ

京太郎「ガラス越しとは言え、すぐそこに人が歩いてると思えないくらいのリラックスしっぷりだなぁ…」

漫「アレだけ大きいって事はそこそこ大人やろうし、もう慣れたんやろうね」

京太郎「ある意味、見られるのが仕事な訳ですから、そうなのかもしれません」

漫「まぁ、カチコチになって警戒されるよりはリラックスされてた方が嬉しいけどな」

京太郎「とは言え、あんなに幸せそうに眠っていられると…」

漫「…悪戯したくなるわなぁ…」

アザラシ「」スピー



漫「おぉ…何かおるでー」

京太郎「えっと…アカハナグマって言う奴らしいですね」

京太郎「アライグマの仲間みたいです」

漫「でも、あんまりアライグマっぽい顔はしとらんなぁ…」

京太郎「鼻が長いですし、アリクイに近い感じですからね」

漫「それに鼻が赤いって言えるほどじゃないような気もする…」

京太郎「…こういうのって一体、どうして着けられるんでしょうね?」

漫「最初に見つけた時の仮称がそのまま正式名称になるんちゃうやろうか」

京太郎「って事はコイツも一番最初に見つけたのは赤い鼻だったからなんでしょうか」

漫「…あかん。今、脳裏で真っ赤な鼻のトナカイの歌が…」

京太郎「や、止めて下さいよ!このタイミングでそれ言われたら、最初に見つかった奴がまるで除け者だったみたいじゃないですか!」

漫「ご、ごめん。でも…もし、そうやったとしたら保護されとるんちゃうやろうか…」

京太郎「そうだと良いんですけど…」

アカハナグマ「(体毛が赤くて鼻の長いクマだからなんだけどなぁ…)」

漫「えっと次は…エクアドル熱帯雨林やね」

京太郎「熱帯雨林…」ピクッ

漫「あれ?どうしたん?」

京太郎「あ、いえ、すみません。何でもないです」

漫「それやったらええねんけど…って色々おるなー」

漫「魚から鳥から哺乳類からトカゲまで…って、京太郎君?」

京太郎「か…」

漫「か?」

京太郎「カピバラァァッ!」

漫「」ビクンッ

京太郎「はっ…す、すみません…」

漫「いや…べ、別にええけど…どうしたん?」

京太郎「いや、実は俺の家、あそこにいるカピバラ飼ってるんで…」

漫「え…それホンマ?」

京太郎「マジですって。何なら後で写真もお見せしましょうか?」

漫「見る見る!って言うか、飼ってるって事は…」

京太郎「勿論、触りたい放題ですよ」ドヤァ

漫「…今度、京太郎君の家に遊びに行ってええ?」

京太郎「漫さんなら何時でもオッケーですよ」

漫「(よ、よし…!親御さんに顔を覚えてもらう機会やし…しっかりおめかしして行こう…!!)」グッ

漫「しっかし、まさか京太郎君がこんな珍しいもん飼っとるなんてなぁ」

京太郎「まぁ、飼ってるって言っても、親のいない間に餌やったり、遊んでやったりする程度ですけどね」

漫「それでも羨ましいわぁ…うちペットおらへんし」

漫「…ホンマは猫飼いたいねんけどなぁ…」

京太郎「猫も良いですね。猫暖房とかは俺も憧れます」

漫「なー。羨ましいわぁ」

京太郎「でも、うちにはカピーがいるんで猫はちょっと…」

漫「あーそう言えばカピバラもネズミやっけ」

京太郎「です。まぁ、猫が取るのは別にネズミだけじゃないらしいですけど」

京太郎「ネズミを追いかけるのも好物だからじゃなくって、狩猟本能だかららしいですしね」

漫「でも、カピバラ狩ろうとするのはかなり難しいやろうなぁ」

京太郎「1mを軽く超えますし、そこらの猫より大きいですからね」

漫「あんなネズミ追い詰めた時には大怪我じゃ済まなさそうやね」

カピバラ「キュー?」





漫「って…ピラニアおるでここ!」

京太郎「えっマジですか!?」ガタッ

漫「ほら」ユビサシ

京太郎「うわ…本当だ…」ユビサシ

京太郎「カピバラ落ちたりしないかな…心配だな」

京太郎「アレで結構ドン臭いからなぁ…それでいて人懐っこいし、こっちが落ち込んでる時は傍に寄ってきてくれるし…」

漫「(途中から惚気みたいになっとる…)」

漫「あ、でも、大丈夫みたいやで」

京太郎「えっ」

漫「ほら、ピラニアの説明」

京太郎「え…あ…ピラニアって群れ作って身を守るくらい臆病なんですね」

漫「しかも、血の匂いや水面を叩く音に敏感なだけやって」

京太郎「水槽の中じゃそれほど大きな群れも作れませんし、大丈夫かな…」

漫「大丈夫やって。水を飲みに来た程度じゃ反応せんやろうし」

漫「一々、反応しとったらアマゾンの周りには動物おらへんようになるよ」

京太郎「言われてみればそうですね。しかし…凶暴で獰猛ってイメージは映画とかで作られたものなんだろうなぁ…」

漫「実際、遊んでた奴がピラニアに襲われて…って話はあったかもしれんけど、その辺を人が膨らませていったのは事実やろうな」

京太郎「お前も今、流行りの風評被害って奴を受けてたんだな…」

京太郎「まぁ、そのピラニアよりも遥かに存在感があるのは…やっぱりコイツですね」

漫「世界最大級の淡水魚…ピラルクさんやー♪」

京太郎「いやーやっぱでかいですね。周りの魚の数倍はある」

漫「えーっと…3m近いの個体も見つかった事もあるんやって」

京太郎「え?俺、4m級もいるって聞きましたよ」

漫「そんなんおったら最早、化け物の領域やろなぁ…」

京太郎「海じゃなく淡水で4mですからねー。肉体維持だけでも大変そうだ」

漫「しかも、肉食やしね。周りの魚としたら生きた心地がせんやろうなぁ…」

京太郎「でも、この水槽だと周りの魚を襲う様子はないですね」

漫「でかい魚ばっかりやからちゃうかな」

京太郎「あぁ、確かに…説明にも80cmとか1mとか書いてありますもんね」

漫「お腹が減っていたらまたちゃうんかもしれんけど、とりあえずそのつもりはないんやろ」

京太郎「でも、こっちのアイスポットシクリッドって魚に凄い不穏な説明が…」

漫「どれどれ…二ヶ月おきに産卵…約9000から15000粒…」

京太郎「……」

漫「……」

漫「だ、大丈夫やって!流石に産卵期くらい係の人が把握しとるやろ!」

京太郎「で、ですよね!その時が来たらきっと隔離しますよね!」



漫「うちとしてはコイツも気になるんやけどなぁ…」

京太郎「どれです?って、あー…」

漫「レッドテールはまぁ、分かる。背びれも尾ひれも赤いしな」

漫「でも…なんでキャットフィッシュなん?」

京太郎「ヒゲじゃないですか?」

漫「あー…なるほど。でも、この子、ナマズっぽい顔しとるなぁ」

京太郎「っていうか確かナマズの英名がキャットフィッシュなんじゃなかったですっけ」

漫「え?そうなん?ナマズって日本だけじゃないのん?」

京太郎「いや、俺も詳しくは知らないですけど、仲間は結構、色んな所にいるみたいですよ」

漫「あんなドン臭い見た目しとる割りに結構、手広くやっとるんやなぁ…」

京太郎「でも、ほら、こっち向いてるレッドテールキャットフィッシュいますけど…」

漫「おぉぅ…何か迫力を感じるな」

京太郎「馬鹿にするなとか思ってるのかもしれませんね」

漫「馬鹿にする気はなかってん…ごめんな?」




京太郎「さて、次はラッコと並ぶ水族館のアイドルですね」

漫「ペンギン~♪」

京太郎「えっと…オウサマ、アデリー、ジェンツーと三種いるみたいですね」

漫「なんでもええ!ともかく、ペンギンと戯れるチャンスや!」

京太郎「まぁ、ガラス越しなんですけど」

漫「まぁ、その辺はしゃあないわなぁ…ペンギンって結構、繊細みたいやし」

京太郎「でも、確か、むかーし、水族館の中を歩いてショーエリアまで引率されてくペンギン見た事ありますよ」

漫「えっ、なにそれ!?」

京太郎「何処だったっけ…確か家族旅行で行った小さな水族館なんですけど…」

漫「ちょっ!が、頑張って思い出して!うちも行きたい!」

京太郎「すみません。幼稚園児かそれくらいの時の記憶なんで…」

漫「うぅぅ…携帯で調べたら出てくるかな…」

京太郎「後で調べてみましょうか。それより、ほら」

漫「子ペンギンやぁ♪」

京太郎「まだ体毛も灰色な感じですね」

漫「この子誰やろ…」

京太郎「えっと…パネル見る限り、オウサマですね」

漫「あー…子どもの体毛が違うんはオウサマだけなんや」

漫「って事は昔見たあのペンギンアニメもオウサマがモチーフなんかな」

京太郎「あー…アレですか」

漫「アレやアレ」

京太郎「…名前、出て来ませんね」

漫「何分、昔の事やからなぁ…」



漫「しかし、アレやなぁ…」

漫「オウサマもジェンツーも方向性は違えど可愛いって感じやねんけど…」

京太郎「アデリーはもうちょっと何とかならなかったんですかね…」

漫「目の周りが白いから、凄いこう睨まれている感があるわぁ…」

京太郎「『クワッ』って感じですよね」

漫「小さな子どもが見たら夢に出てくるんちゃうやろうか…」

京太郎「まぁ、自然界で生きていく為にはそうやって威嚇する術の一つや二つ覚えておいた方が良いのかもしれませんし」

漫「厳しい世の中なんやなぁ…」

京太郎「特にペンギンの子育てってかなり厳しいらしいですしね」

京太郎「餌が取れない期間とかもあるので、半ば絶食しながら過ごす事も珍しくないとか」

漫「あー魚もずっと同じ場所にいる訳やないもんね」

京太郎「これが淡水とかならまだ何とかなるのかもしれませんけど…海、しかも、北極ですしね」

漫「シャチとか外敵も多いみたいやし…数とか大丈夫なんかなぁ…」

京太郎「まぁ、その辺は一朝一夕で過ごしてきた訳じゃないから大丈夫だと思いますよ」


漫「イルカやー♪」

京太郎「さっきのペンギンとラッコがアイドルだとしたら、イルカはヒーローですね」

漫「ショーもこなすイケメンさんやからなぁ」

京太郎「漫さんの隣にもイケメンがいると思いますよ」キリリッ

漫「はいはい。うちにとって京太郎君は最高のイケメンさんよ」クスッ

漫「でも、楽しそうに泳ぐなぁ…」

京太郎「その辺がイルカの魅力って奴なのかもしれませんね」

漫「せやねぇ…。実際、小さい子どもの頃はイルカの群れに混じって泳いでみたいとか思ってたわぁ…」

京太郎「はは。俺もそうでしたよ」

京太郎「でも、ダイビングの免許とか必要だって聞いて挫折しました…」

漫「アレってやっぱり結構、難しいんやろうなぁ…」

京太郎「自分の命だけじゃなく、他の人の命にも関わる事ですしね」

漫「まぁ、それ以前にうちあんまり泳げないから無理やねんけどな!」

京太郎「ちなみにどれくらい…?」

漫「25が限界って感じ…」

京太郎「それ水泳の授業とかきつくないです?」

漫「ふふん、女子は25どころか15くらいでええねんで?」

京太郎「男子とか普通に50やらされたりするんですけど…」

漫「京太郎君もそれくらいいけるん?」

京太郎「今なら50どころか100くらいは軽くいけるんじゃないっすかね」

漫「さりげない体力自慢来たわぁ」

京太郎「ドヤァ」

漫「ふふ…♪そこドヤ顔するとこやないで」





京太郎「七階最後は…グレートバリアリーフですね」

漫「世界最大級のサンゴ礁やったっけ」

京太郎「ですね。まぁ、お陰で色んな生き物がいるとか」

漫「実際、こうして説明のパネルだけ見ても、かなりの数やしなぁ」

京太郎「間違いなく今までで最大ですね」

漫「でも…正直…」

京太郎「…コメントに困りますね」

漫「鮮やかさで言えば、最初のアクアゲートの方が凄かったしなぁ…」

京太郎「ここまで来ると魚の種類とか、分かんないですしね」

漫「あ、でも、うちオジサンは生物でやったし、分かるで!」

京太郎「俺も、ニシキエビくらいは名前も知ってますね」

漫「へぇ…ってこの子、伊勢海老の仲間では最大級なんや」

京太郎「美味しいんですかね」

漫「京太郎君…水族館で味の話をするのはタブーやで…」

京太郎「すみません…つい…」

漫「まぁ、食用にされてない時点で、味はお察しって感じなんやろな」チラッ

京太郎「(あ、これ実は漫さんも気になってたな)」



漫「後はハギやタイが殆どって感じ?」

京太郎「三種ずつ入ってますしね」

京太郎「ただ、このデバスズメダイってタイって感じはしないんですけど」

漫「うちらの俺らの知る身近なタイって赤くて大きな奴やからなぁ」

京太郎「7cmで白いってのはちょっとイメージから離れてますよね」

漫「…でも、こっちのロクセンスズメダイって何が6000なんやろ…?」

京太郎「卵の数とかじゃないですかね」

漫「じゃあ、デバスズメダイは?」

京太郎「む、群れを作ったら、デバって出てくるからとか…」

漫「…20点やね」ニコー

京太郎「くそっ!ムチャぶりだったのに凄い悔しい…!!」


漫「後はウツボがおるって事かなぁ」

京太郎「ウツボって言うと…俺は凄い獰猛なイメージがあるんですけど」

漫「でも、実際は大人しくて臆病らしいんよ」

京太郎「分かってるんですけどねー…でも…」

漫「ん?」

京太郎「昔…マリ○64ってゲームがありまして…」

京太郎「そこの海のステージに海賊船が沈んでるんですが、その海賊船から○リオの十倍くらいあるウツボが出てくるんですよね」

京太郎「当時、子どもで水中の操作方法が分かっていなかったのもあって、そいつにボッコボコにされました…」

漫「あー…トラウマなんか」

京太郎「えぇ…途中からもう怖すぎて海賊船に近寄らなくなったくらいですし…」

京太郎「お陰で友達がそこをクリアしてくれるまで完全に詰んで進めなかったですよ…」

漫「良く分からんけど、大変やったんやなぁ…」

京太郎「うぅ…前作まで普通に水中余裕だったじゃん…何で今回は体力が危なくなってくるとそんな焦らせて来るんだよ…」




漫「で、でも、ほら!ウツボ見当たらへんやん!」

京太郎「いや、実は四匹居ますよ」

漫「えっ嘘…そんなにおるん?」

京太郎「俺のウツボセンサーにビンビン来てますからね…!」

京太郎「多分、あそことあそこと…後、あそこの岩陰に二匹隠れてます」

漫「お、おぉ…よく見ると岩陰からちょこんって顔出しとるのが分かるわ…」

漫「言われるまで全然、気づかへんかったわ」

京太郎「まぁ、その為の体色でしょうし、仕方ないですよ」

漫「…でも、まったく動かへんなぁ…」

京太郎「ウツボは基本的に動かないですからね」

京太郎「動かない奴は一時間経っても岩陰から出て来ませんし」

漫「エンターテイメント性が足らへん奴やなぁ…」

京太郎「まぁ、その分、動くと迫力があるんですけどね…あ、ほら、あそこ」

漫「動いとる…ってでかいなぁ…」

京太郎「長いって言うよりは太いって感じですね」

漫「その上、ゆったりと体動かして泳いどるねぇ」

京太郎「あんなに悠々と泳いでおいて、臆病とか絶対ウソですよ」

漫「どうどう。落ち着くんや、京太郎君」

京太郎「ぬぐぐぐぐぐ」


【六階】

漫「さて…それじゃあ六階に来た訳やけれど…」

京太郎「デカカァァァァァいッ説明不要!! 12m!! ジンベエザメだ!!」

漫「これだけでかいチューブの中でも真っ先に存在が分かるくらいやなぁ」

京太郎「いや、ホント、マジデカすぎですって。これ鯨じゃないんですか」

漫「12mあるだけのただのサメやで」

京太郎「すげー…すげー」キラキラ

漫「ふふ…♪写メとってあげよっか?」

京太郎「あ、お願い出来ますか!?」イソイソ

漫「そんな焦らんでええよ」クスッ

漫「ゆったりと回遊しとるんやから、すぐにこっち戻ってくるやろうしな」

京太郎「いやぁ、でも、こう絶妙なチャンスで撮りたいじゃないですか」ウズウズ

漫「せやね。写メに収まらんくらい大きいし出来るだけ良いアングルで…って、京太郎君!来たで!」

京太郎「え、マジっすか!?え、えっと…じゃあ」ピース

漫「撮るでーはい、撮ったー」

京太郎「ど、どんな風になりました?」

漫「丁度、京太郎君の横を通り抜けていく顔を撮れたよ」

京太郎「おぉ…なんという絶妙なアングル…!ありがとうございます!」

漫「ふふ…気にせんでええよ、うちもさっき撮ってもろたしな」



漫「にしても…やっぱりジンベエザメはインパクトあるなぁ…」

京太郎「顔は結構、優しそうなんですけれどね」

漫「実際、殆どプランクトンで肉体維持しとるみたいやけど…あんまり人を襲うところとか想像出来ひんなぁ」

京太郎「あそこまで大きいとサメってより鯨ってイメージの方が強い所為かもしれません」

漫「あー確かにそれはあるかも。表面の斑模様もそれっぽいし」

京太郎「後、水槽の関係か、周りにちょこちょこって魚がついて行ってるように見えるからでしょうか」

漫「もしかしたら気が優しくて強い親分さんなんかもしれへんね」

京太郎「ああやって周遊してるのも、俺達の挙動に目を光らせてるのかもしれません」

漫「…」

京太郎「…」

漫「…うん。やっぱりあの顔で親分さんはないわぁ」クスッ

京太郎「愛嬌がありすぎですもんね」

漫「海遊館のマスコットは伊達やないなぁ」

京太郎「全国的に有名なのも頷けますよ」


漫「しかし…この水槽はかなり偏っとるなぁ」

京太郎「サメが五種にエイが五種、アジが四種ですからね」

京太郎「…って、アカシュモクザメがいるんですけど…これ大丈夫なんですかね」

漫「え?凶暴な子なん?」

京太郎「シュモクザメって人を襲う数少ないサメだった気がします…」

漫「え…ホンマ?」

京太郎「数年前にもシュモクザメが出て来たから海水浴場が封鎖されたって話も聞いた事ありますし…多分、事実かと」

漫「…でも、ダイバーさんここに潜ったりしてるやんな」

京太郎「掃除や餌やりの都合上、どうしても必要になりますしねー…」

漫「やっぱりジンベエザメ親分が見張っとるから悪さ出来ひんのやろうか」

京太郎「あぁ、実際は大抵、お腹が膨れているからなんでしょうけど」

漫「夢がないなぁ、京太郎君」

京太郎「俺もそう思いますけど、そのネタもうさっきやっちゃったんで突っ込んだ方が良いかなって」

漫「ふふ♪まぁ、多分、そうなんやろうね」

漫「人を襲う言うたかって、人と見たらすぐさま襲い掛かるような性格はしとらんやろうし」

京太郎「もし、そんな事があればジンベエザメ親分が何とかしてくれますよ」

漫「この斑模様が目に入らんのかー的な活躍が見れたらええねぇ」フフッ

漫「後、上の方には結構、大きい魚多いね」

漫「ロウニンアジとかメガネモチノウオとか大きいのが我がもの顔で泳いどるからそう見えるだけかもしれへんけど」

京太郎「まぁ、勿論、下にもいるんでしょうけど、今は見えないですしね」

漫「早く下行ってみたい?」

京太郎「まぁ、気にはなりますけど、ゆっくりで良いですよ」

京太郎「折角のデートなんですし、色々見て、感じて、漫さんと一緒に色んなもの共有したいです」

漫「くっさいセリフやなぁ」

漫「うちが京太郎君にベタ惚れやなかったら、笑ってた所やで?」

京太郎「じゃあ、俺にベタ惚れな漫さんはどう思ったんですか?」

漫「そんなん…嬉しいに決まっとるやん…♪」ギュッ

漫「うちも…京太郎君と色んなものを感じて思い出作りたいと思っとるんやし…」

漫「嬉しくないはず…ないやん♥」

京太郎「漫さん…」

漫「あ…き…キスは軽いのやったら…」

京太郎「…しませんって」

漫「えー…今、その空気やったやん!」

京太郎「人通りあるのにそれは難易度高すぎですよ」

漫「京太郎君のヘタレぇ…」

京太郎「はいはい。後で一杯、してあげますから次、行きましょう、次」

漫「えっと…ここは瀬戸内海らしいなぁ」

京太郎「ここもかなり種類が多いですね」

漫「ひのふのみの…18種か」

京太郎「これだけ居て縄張り争いとか喧嘩とか大丈夫なんでしょうか」

漫「まぁ、その辺は多分、考えて水槽も作ってあるし、大丈夫やろ」

京太郎「…後、このラインナップ見て思うんですけど」

漫「食事の事以外やったら聞いてあげるで」

京太郎「…」

漫「…」

漫「京太郎君?」

京太郎「いや、その…食べられそうな魚多いなぁって」

漫「まぁ、瀬戸内海はそういうの豊富らしいしね」

漫「養殖産業発祥の地は伊達やない言う事なんやろう」

漫「…でも、タブーをまた破った京太郎君は後でお仕置きな?」ニコッ

京太郎「お、お手柔らかにお願いします…」



【五階】

京太郎「次は…えっと…チリの岩礁地帯ですね」

漫「まぁ…うん。ここはもう一言で言うしかあらへんな」

京太郎「…ですね」

漫・京太郎「「イワシ多すぎ」」

漫「勿論、イワシが群れ作る魚言うのは知っとるけど…でも、これはちょっとやりすぎちゃうやろうか」

京太郎「わざわざマイワシとカタクチイワシの為だけに1水槽貸切ですからねー」

漫「これはちょっと数がやばい。酸欠とか大丈夫なんって心配になるレベル」

京太郎「なんでイワシオンリーで水槽作ろうと思ったんでしょうか…」

漫「多分、うちらには分からんけど水族館的には凄い重要なんやろう」

京太郎「まぁ…確かに凄い迫力はありますけどね、これ」

漫「岩の周りをひたすらぐるぐるぐるぐる回っとるからなぁ」

京太郎「プランクトンを求めてってのは分かりますけど、これ一網打尽ですよね」

漫「それを防ぐ為にもこうやって群れをなしてやばそうやったら即逃げるんやろね」

京太郎「問題は人間の網からは逃げられなさそうって事ですけど…」

漫「そ、その辺は乱獲しすぎないように色々と条約とかあるやろ多分…」

京太郎「…最近、イワシの数が減っているって話があった気がするんですが」

漫「…そ、その辺はお偉いさんが考える事やし?つ、次行こう次!」




京太郎「お、ウミガメだ」

漫「クック海峡ん所やねー」

京太郎「ここもかなりカラフルな感じですね」

漫「赤いピンクマオマオに、青いブルーマオマオ、黄色いマドに、ピンクのバタフライパーチと色取り取りやからなぁ」

京太郎「そうやって並べられると何か戦隊ヒーローみたいですね」

漫「男の子ってそういうの好きやねぇ」

京太郎「はは、まぁ、そういうの見て育った訳ですし」

漫「ちなみに戦隊名を名付けるなら?」

京太郎「海峡戦隊クックンジャーとか…」

漫「語感が悪い。40点やな」

京太郎「くそぅ…また高得点取れなかった…」

漫「ふふ…♪まぁ…戦隊っぽいってのは分からんでもないよ」

漫「うちも子どもの頃はそういうの見てたしね」

漫「そんなうちからすれば…追加戦士枠はこの黒いディモイゼルって奴に決まりやな」

漫「顔も迫力あるし、ダークヒーローっぽいしね」

京太郎「いや、意外と白いポーキュパインフィッシュかもしれませんよ」

漫「あー確かにトゲトゲでハリセンボンっぽいから、追加戦士らしく見えるかも」

京太郎「で、合体ロボは間違いなく…」

漫「まぁ…この水槽の主であるアカウミガメやろなぁ」

京太郎「きっとアカウミガメもこの水槽の平和を護ってくれてるんでしょう」

漫「超限定的やなぁ」クスッ

【四階】

漫「日本海溝の水槽は本当、真っ赤って感じやなぁ」

京太郎「赤じゃないのはオオグソクムシとミズダコくらいなものですしね」

漫「後はタカアシガニにキンメダイ、アカザエビと赤ばっかりやからなぁ」

京太郎「これじゃ戦隊物は出来ませんね」

漫「いや…ゴレ○ジャイやったらワンチャンあるで…!」

京太郎「あーあのダウンタ○ンの」

漫「そうそう。って京太郎君も知っとるんか」

京太郎「当時のビデオがまだ残ってますしね」

漫「ええなぁ…うちアレ録画しとらんのよねぇ」

京太郎「まぁ、俺のところのもビデオテープなんでそろそろ怪しいんですけど」

京太郎「ただ、データにして残すってのもちょっと味気ない感じがするんですよね」

京太郎「ビデオテープってたまに予期しないものを録画してる場合があるじゃないですか」

京太郎「そういうのを通しで見ると色んな発見があったり思い出が浮かんできたりするんで」

漫「あー…分からんでもないわぁ」

漫「データのランダム再生とかとはまた違った趣があるんよね」

京太郎「えぇ。まぁ、思い出補正と言われれば、それまでかもしれないんですけど」

漫「…うちら高校生やのに、何でこんな会話しとるんやろな」ハハッ

京太郎「大人ぶって見たい年頃ですからね」クスッ



漫「さて、そんな訳でおまちかねの太平洋の底やでー」

京太郎「やっぱり上とは居る魚が違う感じですね」

漫「こっちにいるエイと上のエイはまた違うしね」

漫「でも、このジャイアントシャベルノーズレイって魚…」

京太郎「平べったくて、菱型してますけど、これアジみたいですよ」

漫「えー…何か騙された気分やわぁ…」

京太郎「まぁ、俺もちょっとこれがアジとは信じられないですけど」

漫「後…目につくのはネムリブカとかかな」

京太郎「ネムリブカは殆ど動かなくてこれがサメの仲間とは思えないくらいですねー…」

漫「パネルには夜になると活発に動くって書いてあるし…夜行性なんかな?」

京太郎「その割にはちょこちょこ動いてる感じはするんですけど…」

漫「すぐそこのオオテンジクザメもあんまり動かへんって書いてあるのに、たまーに動いとるな」

京太郎「ですねー。でも、殆ど底の方でじっとしてます」

漫「サメって凄い活発なイメージがあったんやけど、全然、そうやないんやなぁ…」

京太郎「何処の業界ものんびり屋ってのはいるもんなんですね」



【三階】

京太郎「次は…ってうぉ!?」

漫「ふふ…やっぱりこれはびっくりするやんな」

京太郎「円筒状の水槽にクラゲが一杯…」

漫「ライトアップされてロマンチックではあるけど、やっぱりビクってするやんな」クスッ

京太郎「いやぁ…でも、迫力ありますね、これ」

漫「特にビゼンクラゲがやばいなぁ…」

京太郎「…これ何センチあるんですか」

漫「えっと…傘の直径が50cmくらいやって」

京太郎「触手っぽい部分合わせたら1mちょっとになりそうなんですけど…」

漫「こんなん海の中で出会ったら速攻逃げるなぁ」

京太郎「下手な魚よりやばいのが伝わってきますもんね…」

漫「でも、こっちのカブトクラゲは綺麗ちゃう?」

京太郎「確かに虹色にキラキラ光ってて、ロマンチックですね」

京太郎「あ、しかも、コイツ、刺胞持ってない…」

漫「どうやって身を守るんやろう…」

京太郎「そりゃやっぱり全力で逃げるんじゃないでしょうか」

漫「海水浴場に湧くクラゲは嫌いやけど、それはそれで可哀想な気もすんなぁ…」

京太郎「クラゲってプランクトンですし、捕食者多数いますからね…」

京太郎「ところで…俺、長年の疑問なんですけど、クラゲってあんなにうようよ湧いて仲間同士で刺さないんでしょうか」

漫「反射で刺すタイプは刺すんちゃうかな。でも、基本、毒やし免疫を持っとるとか」

漫「ただ、クラゲ避けのクリームとか最近あるし、見分けてる奴は見分けてるんちゃう?」

京太郎「なるほど…」


京太郎「あれ?三階に戻ってきたのにまだ先があるんですか?」

漫「ふふふ…実はさっきのは全部…前座や!」

京太郎「なん…だと…!?」

漫「あのラッコも…ペンギンも…ジンベエザメの遊ちゃんも…全部、前座や」フフン

京太郎「じゃあ…この先にいるのは…」

漫「この海遊館に来た真の目的…いや…ラスボスやで…!」

京太郎「あんなにラッコやペンギンを喜んでたじゃないですか!」

漫「あの子らは勿論、かわええ。でも…所詮はうちにとっては過去の存在なんや」

漫「今のうちの目に映っとるのは、この先にある輝かしい未来だけ」

京太郎「そんな戯言信じられません…!」

漫「ふふふ…ならば、うちに着いて来るがええよ。そして…その目で真実を確かめれば…京太郎君もすぐに分かるわ」

京太郎「…」

漫「…」

京太郎「…俺ら何やってんでしょうね」

漫「…うん。ごめん」

京太郎「あ、いや、漫さんを責めてるんじゃないんですよ」

漫「いや…それでも変な風にテンション上がったうちが原因やし…ごめん」



漫「まぁ、ここから先が目的地ってのは間違いやないで」

漫「ある意味、これまでが前座ってのも、京太郎君にもすぐ分かると思う」

京太郎「そんな風にハードル上げて大丈夫ですか?」

漫「ふふん。もし、ダメやった時に傷つくのはうちやなくて○遊館やし?」ニヤリ

京太郎「そんな事言って本当にダメだったら凹む癖に」

漫「そ、その程度で凹んだりせえへんよ!うち強い女やし!!」

京太郎「さっき自分から振ったネタで落ち込みまくってた漫さんが言っても説得力ないですよ」

漫「むぅ…」

京太郎「はいはい。膨れてないで下さい……ってこれは…」

漫「ふふふふふ…」


京太郎「う、上に…水が…」

漫「えっと…ふ、ふふん!これが噂の天井ドーム型水槽って奴や…!」

京太郎「なるほど…このガラスから上を覗けるようになってるんですね」

京太郎「でも、中に何が泳いで…あ」

漫「ワモンアザラシやぁ♪」

京太郎「し、しかも、ガラス叩いてますよ!」

漫「小さなヒレでペシペシって叩いとるなぁ…」

京太郎「おぉ…人懐っこそうな目でこっち見て…おぉぉ…」

漫「首傾げて…あ、逃げてった」

京太郎「も、もっかい来ないですかね…!?」

漫「ふふ…もうちょい待ってみる?」

京太郎「はい!」

漫「んじゃ…邪魔にならんように端に寄っとこうか。幸い、壁際にも展示はあるし」

京太郎「しかし…下から見上げるのと横から見るのとでは大分、違いますね」

漫「ワモンアザラシもこっちの事見てくれるしなぁ」

京太郎「見ているだけじゃなく、見つめ合っている感があるんですよね」

漫「そうそう。まぁ…その分、あっちから来てくれへんと見れへん訳やけど」

京太郎「でも、俺はこれ結構、面白い試みだと思いますよ」

漫「そうやねー。うちもこれは中々、ない発想やと思う」

漫「でも…本当に凄いんはこの上からやで?」ニヤリ

京太郎「なん…だと…?」

京太郎「寒っ…ここ何ですか?」

漫「こここそ○遊館に出来た新体感ゾーンって奴や!」

京太郎「新体感ゾーン…?」

漫「うん。そこの水槽見てみて」

京太郎「水槽…って、あ…これ完全に区切られてない」

漫「だから、寒さとか臭いとか音とかがはっきり伝わってくる訳やね」

京太郎「おぉぉ…なるほど。視覚だけじゃなく他の五感にもアプローチしようと」

漫「そうそう。どう?面白いやろ?」ドヤァ

京太郎「…えぇ。確かに面白い試みだと思います。正直、上に上がってすぐびっくりしましたし」

京太郎「…でも、何て言うか…獣臭くて寒いんであんまり長居は出来ない感じが…」

漫「まぁ…うん…そりゃしゃあないわな」

漫「あくま北極生物に最適化された空間やし、うちらにとって合わへんのは当然やろ」

漫「ここは『展示されとる生き物を見る』んやのうて『生き物の住んでる環境ごと感じる』のがコンセプトやし」

京太郎「じゃあ、存分にその環境を感じさせてもらいましょうか」

漫「せやね。ワモンアザラシもかわええし」



漫「でも、意外とワモンアザラシって結構鳴くもんやねんな」

京太郎「ガラスで聞こえてないだけで意外と小さく鳴いてるんですね」

京太郎「後、結構、アクティブですよね」

漫「氷とかにも突っ込んで遊んどるどころか、氷掘っとるしなぁ」

京太郎「俺、アザラシって言ったら基本、海中で遊んでるもんだと思ってました」

漫「うちもや…でも、よくよく考えてみれば、アザラシにとって氷って砂場みたいなもんかもしれへんね」

京太郎「でも、あの水かきみたいな手でどうやって掘ってるんでしょう…」

漫「そりゃ流石に爪か何かくらいあるんちゃうんやろうか」

京太郎「アザラシってペンギン以上に弱々しいイメージがあったんですけど…そうでもないんですね」

漫「一応、アレでも動物食やからなぁ…貝だけやなくて魚も食っとるらしいで」

京太郎「おぉ…アザラシのキュートなイメージが俺の中でボロボロと…」

漫「ふふ…♪まぁ、縞々模様でちっちゃいからかわええのは変わりないけどな」

京太郎「天敵いない所為か、凄いのんびり過ごしてますしね」

漫「でも、パネルに書いてある巣穴ってのが何処にあるんか分からんなぁ…」

京太郎「繁殖期じゃないでしょうし、まだそういうのはないんじゃないですかね」

漫「うーん…ちょっと勿体無い気もする…」

京太郎「まぁ、その時期が来たらまた一緒に来ましょう」

漫「ふふ…♪せやね♪」





京太郎「そしてまさかのペンギンリターンズ…」

漫「こっちはイワトビペンギンやけどね!」

漫「しかも、こっちはワモンアザラシよりもさらに敷居が低いという要素つきやで!」

京太郎「手を伸ばせば触れられちゃいそうなくらいですしね」

漫「おっと、お客さん。踊り子さんにタッチは厳禁やで?」

京太郎「げへへ、ねーちゃん、そういう事言わずにちょっとくらい…」

漫「…ないわぁ」

京太郎「そこで素に戻らないでくださいよ!」

漫「だって、そんなおっさん臭い京太郎君とか…」

漫「(…あ、今、一瞬、ベッドの上やったら、ねっとり責めて貰えるやろし、ええかなって思ってしもうた…)」

京太郎「…漫さん?」

漫「あ…い、いや!何でもあらへんよ!」

漫「う、うちそこまで変態や無いし…いや…京太郎君がしたいなら拒む理由はあらへんけど…」ブツブツ

京太郎「??」





漫「と、とにかく!一丸となって飛んでるイワトビペンギンかわええな!」

京太郎「そ、そうですね。あんな足でアレだけジャンプ出来るのが不思議ですけど」

漫「イワトビの名は伊達やないってくらいピョンピョン飛ぶもんなぁ」

京太郎「鳥類の面目躍如ですね」

漫「まぁ、飛ぶってよりは跳ねるに近いけどね」クスッ

京太郎「それは可愛いんですけど…こいつらって意外と気性荒いんですよね」

漫「あぁ、ペンギンの中でダントツ一位なんやったっけ」

京太郎「です。近くを移動してると攻撃してくる時もあるんだとか」

漫「顔もさっきのペンギンたちとは違う感じやもんね」

京太郎「黄色い飾り羽が目元にあってキリッとしてるイケメン揃いですから」

漫「その割には50cmくらいしかないんやったっけ?」

京太郎「えっと…そうみたいですね」パネルジー

漫「オウサマペンギンと比べるとオチビちゃんやなぁ」

京太郎「アレは世界で二番目に大きいペンギンですから仕方ないですよ」

漫「でも、小さな子がやんちゃしてる感があってかわええよ」

京太郎「実際、襲われたらそんな事言えないんでしょうけど、こうやって見てる分には和みますよね」クスッ




漫「でも…その…あんまり見てはいられへんな…」ウズウズ

京太郎「そうですね…これは…やばいですね」ウズウズ

漫「あかんって近いって…こっち来てくれるの嬉しいけど近いんやって…」

京太郎「や、止めろ俺の手…!お、お触りは禁止なんだ…触っちゃいけないんだ…!」

漫「小さな子どもでも我慢してるのに…うちらがそんな事したら…あぁ…でも…!」

京太郎「ふっくらしたあの毛並みは撫でてみたい…!く…ぅぅ…!」

漫「あ、あかん…!つ、次行こう次!」

京太郎「ですね…ここはちょっと誘惑が多すぎます…」

漫「なまじ間近まで見れる分、撫でてみたくなってしゃあないしな…」

京太郎「なんという魔性の生き物なんだ…」オズオズ

漫「あんなイケメンやのに…可愛くて結構、人懐っこいなんて反則やろ…」オズオズ



漫「まぁ、そんなうちらにカタルシスを与えてくれるのが…ここモルディブ諸島ゾーンや!!」

京太郎「ここ…中央にでっかい水槽があるだけですけど…その敷居は殆どないも同然ですね」

京太郎「それに…その…なんというか人が周囲から手を伸ばしてるんですけど…」

漫「お客さん…ここだけの話…ここはお触りオッケーなんやで」

京太郎「えっマジですか!?」

漫「マジマジ。大マジやでー」クスッ

漫「まぁ、泳いどるのは水槽の大きさもあって、小さな子ばっかりやけどね」

京太郎「トラフサメやエイとか50cmもないのばっかりだけど…でも、凄いですよ!」

漫「ふふーん!せやろ?せやろ!」ドヤァ

京太郎「やっべ…マジ楽しみだ」ヌギヌギ

漫「おっ、もうやる気やねー」クスッ

京太郎「いや…だって、気になるじゃないですか」

漫「まぁ、エイとかサメとか中々、触る機会はあらへんしね」

京太郎「特に鮫肌ってどんな感じなのか凄い気になります」

漫「ザラザラしとる言うけど、どれだけザラザラなんか分からんしなー」ヌギヌギ

京太郎「って言いながら漫さんもその気になってるじゃないですか」

漫「だって、こんな黒くて角ばったたくましいものを見たら誰だって…」

京太郎「…ちょっと無理やり過ぎですね。30点です」

漫「くっ…アプローチの方向間違えたか…!」





京太郎「おぉぉ…こっち来たこっち来た…!」

漫「トラフザメ君ちょっとごめんなー…って、ホンマにザラザラしとるねー」

京太郎「肌に引っかかる感じがあって結構、新鮮です」

漫「魚の鱗じゃこうはいかへんしなぁ…あぁ、ごめん。もう行ってええよー」

京太郎「後、エイは結構、ヌルヌルしてました」

漫「うちは最初、イカかって思うたわ…」

京太郎「あのヌルヌル感はそう思いますよね」

漫「後…結構、エイが水面近く泳いどるのも意外やったなぁ」

京太郎「ヒレが水面から出たりしたんですけど、アレって大丈夫なんでしょうか」

漫「まぁ、外敵なんておらへんし、きっと大丈夫やろ」

漫「そこのトラフザメ君も最終的には3m超えるみたいやけど、今は子どもで大人しいもんやしな」

京太郎「でも、かなりザラザラしてましたねー」

漫「あっちの方はもう大人なんやな…」

京太郎「…」

漫「…」

京太郎「あ、また来た。今度はイヌザメかー」

漫「ちょっ!せ、せめて点数くらい頂戴や!無視は凹むって!!」


京太郎「ふぅ…結構、堪能しましたね」

漫「せやねー…いやぁ、面白かった」

京太郎「何だかんだいって結構、壁際に寄ってきてくれるんですよね」

漫「周りにある装置から出る水流の都合かもしれへんけど…思ったより色々触れたのは良かったわ」

京太郎「そのほかの展示も見応えがあって、かなり楽しめたと思います」

漫「ちょっと残念だったのは餌やりとかそう言うのの時間が合わへんかった事やね」

京太郎「ジンベエザメの給餌シーンとか凄い気になるんですけど…」

漫「うちもや…まぁ、その辺りは次のお楽しみにしとこ」

京太郎「ですね…って、もう出口ですか」

漫「もうって言うけど…既に2時間以上おるで?」

京太郎「え…あ、本当だ…」

漫「かなり熱中しとって時間の感覚も忘れてもうたんやな」クスッ

京太郎「まったくもって、その通りです…」ハハッ

漫「まぁ、うちも同じやで。正直…うちもこれの事忘れとったしな」

京太郎「コレ?」

漫「ちょい待ってね…後、少しやと思うし…」

京太郎「…え…?あ…っ」フッ

漫「ふふ…♪どう?これが夜の海遊○やで?」

京太郎「ライトが抑えられて…随分、イメージが変わりますね」

漫「今までの海○館とはちょっと違った雰囲気やろ?」

漫「でも…展示の中身も結構変わるんやで?」

京太郎「そんな事言われたら凄い気になりますね…。…もう一周って出来ましたっけ?」

漫「○遊館は一日に何回でも再入館可能やで!」キリリッ

京太郎「それじゃ漫さんさえ良ければもう一周しません?」

漫「しゃあないなぁ…そこまで言うなら付き合ってたげる♪」


漫「(あぁ…でも、こうして暗いところで見ると…京太郎君、普段の三割増しくらいイケメンに見えるわ…♥)」

漫「(勿論、普段の京太郎君でも十分、格好ええんやけど…これが雰囲気補正って奴やろうか…)」

漫「(さっきから…その横顔に…ちょっとした仕草にドキッとしてしまう…♥)」

漫「(その上、その表情がコロコロ変わって…ちょっとした事で感動して、喜んで、笑って…)」

漫「(うちの下らない話にも反応して、冗談にも乗ってくれる優しい人…♥)」

漫「(こんな暗くてロマンチックな場所で…そんな風に色んな京太郎君を見せられたら…うち…もうあかんようになるよ…♪)」

漫「(一周目は目新しさもあって水槽に意識を向けるのは難しくなかったけど…)」

漫「(それでも…京太郎君と腕を組んで歩いとるってだけで…胸の奥が熱くなって堪らなかったんや…っ♪)」

漫「(京太郎君が…ううん…っ♪『京君』が欲しい…っ♥エッチしたい…っ♪セックスしたいぃ…♪)」

漫「(一ヶ月以上放置されて疼いとるうちの中を…満たして欲しい…っ♥京君のモノで…張り裂けるくらいお腹一杯にして欲しい…っ♥)」

漫「(でも…でも…せめて…二周目終わるまで我慢せぇへんと…ぉ…♪)」

漫「(京太郎君は楽しんでくれてるし…それにうちだって夜の海遊館は初めてで色々、新鮮なんや…)」

漫「(せっかくの初デートってだけじゃなく…楽しいからこそもっと色々見たいし…京太郎君とその気持ちを共有したい…っ♥)」

漫「(なのに…うちの中のジリジリとした熱はドンドン強くなってく一方で…♥)」

漫「(うちは……うち…は…ぁぁ…っ♪♪)」





【海遊館前広場】

京太郎「いやぁ…海遊○凄かったですね」

京太郎「所詮、水族館だって侮ってた認識が完全に覆りました」

漫「ふふーん。世界最大級の水族館は伊達やないって事やで」ドヤァ

京太郎「2300円は割高かと思いましたけど、夜の展示もかなり楽しめましたし、損した気にはあまりならなかったです」

漫「暗くてよう見えへんかったけど眠るアシカとか可愛かったなぁ…」

京太郎「ペンギンの寝方にはびっくりしましたよ…」

漫「まさかアレがあんな風になるなんて…まったく予想しとらへんかったしなぁ…」

京太郎「ジンベエザメも動きがゆったりになるんでシャッターチャンスも狙いやすくなりますし」

漫「個人的に残念やったのは夜に活発に動くって書いてあった子たちの活発な姿があんま見れへんかった事やろか」

京太郎「その辺は時間とかタイミングの問題もありますし、仕方ないと思いますよ」

漫「せやなぁ…」

漫「で…まぁ…その…楽しんで貰えたやろか?」

京太郎「勿論!正直、久しぶりの水族館ってのも脇に置いても、面白かったです」

漫「そっか…それなら良かった…♪」

京太郎「お仕置きされないからですか?」

漫「あ…そういやそんな話やったっけ」クスッ

京太郎「楽しすぎて途中で忘れちゃってましたけどね」

漫「んー…それはちょっと残念…かも…しれへんなって…」

京太郎「…漫さん?」




漫「いや…うちもな…出来ればその…ロマンチックな雰囲気なまま…お洒落なレストランとかにこのまま行きたかったんやけど…」

漫「うち…本当は…ずっと…ドキドキしっぱなしで…我慢…出来ひんようになってしもた…ぁ♥」

漫「ずっと我慢しとった身体がジュンって熱くなって…京太郎君の事…欲しがって止まらへん…っ♪」ギュッ

京太郎「漫さん…」

漫「な…ホテル行こ…っ♥ホテル行って…二人で一杯…愛し合お?」

漫「『京君』かて…そのつもりやったんやろ…っ♪うちとセックスしたくて…こっち来てくれたんやろ…っ♥」ハァハァ

京太郎「お、落ち着いて、漫さん…!」

漫「あかんの…っ♪分かってるのに…止まらへん…♥頭の中まで熱くて…ぐじゅぐじゅになって…♪」

漫「うちもう我慢出来ひんから…っ♥お仕置き…して…っ♪京君に…我慢出来ひんうちを躾けて欲しいん…っ♪♪」

京太郎「いや…それは俺も嫌じゃないですし、正直、期待してたんですけど…」

漫「だったら…ええやんな…っ♥うちと…セックスええやろぉ…♪一ヶ月ぶりのセックス…セックス…ぅ…♪♪」




京太郎「分かり…ました。それじゃ…とりあえず携帯でホテルの場所、検索しますから…」

漫「大丈夫…♪うち…もう地図プリントアウトして来とるから…っ♥」

漫「予約も入れとるし…部屋も空いとるはず…ぅ♪」

京太郎「デートコースや昼食だけじゃなく、そこまで…。本当に色々と用意してくれてたんですね」

漫「当然…やんっ♪久しぶりに会うだけやのうて…デートなんやで…?」

漫「本当に…夢にまで見たくらいに楽しみにしとったんやから…ぁ♪」

京太郎「…漫さん…」ギュッ

漫「あ…ふぁ…っ♪」

漫「そ、そんな強く握り返したら…アレよ…?うち…もう本当に我慢出来ひんようになるよぉ…♪」

京太郎「そんな殊勝な事言わせて、我慢させる気なんてないですから」

京太郎「地図…見せてもらえますか?遠いならタクシー拾って行きましょう」

漫「うんっ♪うんっ♪行こうね…っ♥一緒に行くね…っ♪ホテル…行こぉ…♪」









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