夜、インターハイ会場

玄「……うう……まだ開いてるはずなのに、なんで誰もいないの?」

玄「なんで微妙に電気が消えてるの……」

玄「うう……1人で来るんじゃなかったよぉ……」

数時間前、ホテル

玄「いやー、長野の人達強かったねー」

宥「うん。でも、良い練習になったね」

玄「準決勝こそは、活躍してみせるのです!!」

宥「頑張ろうね。じゃ、そろそろ寝るね?」

玄「あ、待って。いつものようにKちゃんを……アレ?ない?」

宥「え?試合中には持ってたよね?」

玄「あ……会場に忘れてきちゃったみたい……急いで取ってくる!」ダッ

宥「え?玄ちゃん!?もう遅いよ!?」



玄「まだ閉館ギリギリだったから入ることはできたけど、暗いし人いないし」

ガタッ

玄「ひぃっ!こ、怖いよぉ……」涙目

玄「うー、憧ちゃんか穏乃ちゃんに付いてきてもらえばよかったよぉ」

ガタンッ

玄「ひゃあっ!!」座りこむ

トン、トン、トン、トン

玄「う、嘘!?後ろから近づいてくる!?」

トン、トン、トン、トン

玄「う、うぅぅぅ……ごめんなさいごめんなさい、もう悪いことしませんから」

トン、トン

セーラ「あれ?阿知賀の?」

玄「きゃああああああああああ!!!で、出たぁぁぁぁぁ!!!」

セーラ「うおおっ!?」

玄「ごめんなさいごめんなさい、もうこっそりおもち観察したりするのやめます。試合中いつもおもちばっかり見るのも止めます。そしてがっかりするのもやめますから」

セーラ「あー……落ちつき?俺や俺」

玄「……ごめんなさいごめんなさい。やっぱり最後はおもちに包まれたいです」

セーラ「おい!!しっかりせえ!俺や!千里山の江口セーラやから!!」

玄「千里山?」

セーラ「よっ」

玄「……ごめんなさい、おもちが大将しかないとか思っててすいません」

セーラ「いつまで言ってるんや!!」

玄「ぐすっ……すいませんでした」

セーラ「あー、うん。まぁええから」

玄「おもちがないのに優しい……」

セーラ「自分とこもないのおるやろ」

玄「それで、江口さんはどうしてここに?」

セーラ「あー、ちょっと忘れ物してな」

玄「私と同じ理由だったんですか。私はKちゃん忘れちゃったんですけど、江口さんは何を?」

セーラ「ん……スカートや。ほら、普段スカートとか着んからな」

玄「なるほどなるほど~」

セーラ(ホンマはKちゃん忘れたとか言えんわ)

玄「じゃあ、暗いですし一緒に行きませんか?」

セーラ「ええでー。後、セーラでええから」

玄「じゃ、私も玄でお願いします」



セーラ「よし、俺のは見つかったでー」

玄「スカートじゃなくてKちゃんですよ?」

セーラ「あー……竜華の分や。頼まれとったんや」

玄「なるほど」

セーラ「ほら、はよ行くで」

玄「うぅ……やっぱり暗くて怖い」

セーラ「怖がりやなぁ……」

玄「だ、だって……ここの怖い話、聞いたんですよ」

セーラ「へぇ。どんなんや?」

玄「こ、怖いですよ?」

セーラ「俺、そういうん平気やから。話してみ?」

玄「うぅ……じゃ、じゃあ言いますよ?」



昔、この会場で亡くなった子がいたらしいんですよ

その子は麻雀が大好きで、実力も相当なものでした

ただ、色々な不運が重なって最後の大会までインターハイには出られなかったらしいんですよ

で、やっと出場できた最後の大会、その子は勝ち負けにこだわらず、悔いの残らない麻雀をやると決めていました

でも、その子が麻雀を打つことはありませんでした

試合直前に階段で足を滑らせ、頭を打って、そのまま亡くなったそうです

それから、ここには出るらしいです

大好きだった麻雀をまた打つため、夜な夜な会場をさまようその子が

出会ってしまったら……帰ってくることはできなくなるらしいです



玄「こ、怖いですよね?」

セーラ「いやー……正直ありふれた話でぜんっぜんやね」

玄「こんなに怖いのに!?」

セーラ「そもそも誰かが亡くなったなんて話聞かへんし」

玄「……はっ!!」

セーラ「全く、そんなんでビビるやつなんて今時おらんわ」

玄「あ、そこの階段がその子が亡くなった階段らしいですよ」

セーラ「普通やん。それに、階段使わへんし…」

カツン、カツン、カツン、カツン

セーラ「……へ?」

玄「な、なんですかこの音。階段から聞こえてきますよ?」

カツン、カツン、カツン、カツン

セーラ「ほ、ほら。用務員のオッチャンとか…」ゾクッ

玄「まだ見回りしないって…」ゾクッ

カツン、カツン、カツン、カツン

セーラ「な、なんや今の寒気は?」

玄「す、すっごいのが……」ガクガクガクガク

カツン、カツン、カツン、カツン

セーラ「そ、その子に会ったらどうすればええとか聞いてへんの?」カタカタカタカタ

玄「よ、夜に来なきゃ大丈夫としか…」ガタガタガタガタ

カツン、カツン、カツン、カツ、ドサッ、

「あ……お菓子落とした」

玄「きゃああああああああああ!!!!……きゅう」バタッ

セーラ「出たああああああああああ!!!!……あ?」

「ひっ!!……アレ?千里山の人と阿知賀の人?」

セーラ「……宮永、照?」

照「……どうかしたの?」

照「……そうだったんだ」

セーラ「ああ。で、宮永はなんでおるんや?」

照「お菓子、忘れたから」

セーラ「忘れ物って、結構するんやなー」

玄「うぅ……」

セーラ「おお、起きたか」

玄「はっ!今、さっきの話の子を見ました!おもちはありませんでした!!」

照「……ふぅん?」ギュルル

玄「ひっ」

セーラ「落ち着き、宮永照や」

玄「あ、次に当たる」

照「ん……お菓子食べる?」

玄「あ、どうも」

セーラ「さっきんは見間違いやった。で、阿知賀の控え室、ここやったろ」

玄「ここです!やっと、やっとKちゃん持って帰れ…」ゾワッ

セーラ「ん?どしたん…」ゾワッ

照「……」ゾワッ

照「……じゃ、私はこれで」

セーラ「待ちや、ここまで来たら付き合おうや」袖掴み

照「……すごい嫌な感じがするんだけど」汗ダラダラ

セーラ「大丈夫や!多分!!」ガクガク

玄「うぅぅ……お姉ちゃん……」ガタガタ

セーラ「せーの、で開けるで?」

玄「は、はははい」

照「……ばっちこい」

セーラ「行くで?……せーのっ!」

バタン!!

「うぅぅ……こーこちゃんどこ行ったんだろ」

玄「きゃああああああああああ!!!!……きゅう」バタッ

セーラ「出たああああああああああ!!!!……ガクッ」バタッ

照「っ!!!!……」バタッ

健夜「え?何!?なんなの!?」

恒子「……すこやん、チャンプ含む3人を瞬殺とは、すごいね!」

健夜「いつの間に!?」

後にこの映像はネットでアップされることとなり、玄もチャンピオンに劣らぬ有名人となった

なお、Kちゃんはうっかり荷物の底に埋もれていたらしい