とある番組

「これが最近巷で人気のぬいぐるみ『Kちゃんぬいぐるみ』です」

「なんでも、ネット販売しかしていないらしく、ひとつひとつ手作りのとてもいいものだとか」

「また、長野県の某所でたった一人の手で作られている、と言われています」

「他にも、夜になると勝手に動く、家事や雑用が上手くなる、胸が大きくなる、などの噂もあります」

「この『Kちゃんぬいぐるみ』、皆さんもいかがですか?」

この番組を始まりに、様々なメディアがKちゃんぬいぐるみに注目し始めた

そして、製作者を訪ねよう、モデルを探そう、等の企画が持ち上がり、

それは巡り巡ってアナウンサー達の元にやってきた



長野県

恒子「はーい、という訳で私達は今長野県に来ていまーす」

えり「……カメラ回ってないのになんでそんなにテンション高いんですか」

みさき「そうですね。ただのうるさい人になってますよ」

恒子「うお、これは厳しい」

えり「はあ、なんでこんなことに」

みさき「偉い人のせいでしょうね」

話は少し遡る

Kちゃんぬいぐるみ関係の企画はかなり難航していた

もともとネット販売しかしていないぬいぐるみであり、その販売元である龍門渕グループが取材を断り続けたのだ

さすがにテレビ局とはいえ、どうしようもなかった

しかし、いくつかのテレビ局が合同企画という形を取り、粘り強く交渉した結果

恒子「まさか『プロ雀士を連れて来い。そしたら考える』、と言われるとはねー」

えり「向こうも冗談みたいに言ったと思いますよ」

みさき「本当に連れて行った時、すごい顔してましたよね」

恒子「とりあえず打ってから、で、私達は放置ですしねー。すこやん楽しそうにしてたけど」

えり「三尋木プロも笑ってましたね」

みさき「ああ、野依プロも」

恒子「……アレで?」

みさき「失礼な」

えり「これからどうします?打ち終わるまで適当にふらついて待ってる様言われましたけど」

みさき「他の人達も面白そうだって麻雀見に行きましたしね」

恒子「美人アナウンサー3人でぶらり長野旅、とかどうです?」

みさき「自分で自分のこと美人って言っちゃう人とはちょっと……」

えり「福与アナ……」

恒子「何これ冷たい。すこやんくらいやすい方がいいんですけどねー」

えり「アレはやり過ぎな気がしますけどね」

みさき「でも受けてるんですよね」

えり「視聴者は何を望んでいるんでしょうね」

恒子「あの、マジトークやめて下さい。いや、今後やりにくくなりそうなんで本当に」

みさき「じゃ、ここまでにしておいて。これからどうしましょうか」

えり「どこか適当なお店でも入りましょうか。ずっと外にいる訳にもいきませんし」

みさき「それじゃそこの喫茶店にでも」

恒子「そういえば、交渉上手くいくと思います?」

みさき「正直無理だと思いますね」

えり「いい加減諦めればいいと思います」

恒子「容赦ねー」

みさき「そもそも何回やっても駄目ですし、今回のは完全にからかわれてましたよ」

えり「それに全力で乗る上も酷いですけどね」

恒子「いっそKちゃんのモデルでも捕まえればいいと思うんですよ」

えり「ああ、あのぬいぐるみのモデルも長野にいる、って話でしたね」

みさき「初耳ですね。それ以外の情報はなんかあるんですか?」

えり「残念ながらこっちに関してもこれだけですね」

恒子「製作者もモデルも詳細不明、だけど人気のぬいぐるみ。そりゃ企画作りたくもなるのは分かりますけどねー」

みさき「モデルっぽいのがその辺りに歩いてたりしてたら楽でしょうねー」

えり「そんなことあるわけないでしょう」

カランカラン

「あ、1人です」

恒子「いやいや、分かりませんよ?実は振り返ったら……とか?」

みさき「こんな感じで?」振り返る

えり「まさか」振り返る

京太郎「……ん?」通りがかる

3人「……はい?」



恒子「はい、それでは質問にはいりまーす」

京太郎「いや、なんなんですか」

恒子「あれ?私達のこと知らない?」

えり「これ傍からはどう見えるんでしょうね」

みさき「男子高校生を誘惑する女3人とか?」

恒子「相変わらず容赦ない言い方は置いといて、君がKちゃんのモデル?」

京太郎「まあ、そうですね」

えり「本当にその辺り歩いてましたね」

みさき「振り返って本当に驚きましたよ」

えり「そのまま流れで席に座らせてインタビューしてるあの人にも驚きましたけど」

恒子「いやぁ、照れます」

えり・みさき「褒めてないですよ」

京太郎「えーっと、確か皆さんプロ雀士の方とコンビのアナウンサーですよね?」

恒子「お、さすがに知ってるか」

京太郎「そりゃすごい人達ですからね」

えり「三尋木プロ普段あんななのに……」

みさき「野依プロなんて……」

恒子「そんなプロは置いといて、私達、Kちゃんに関しての取材に来ててね」

京太郎「アレ、そこまで人気ですか」

恒子「そりゃ大人気よ。それでこうしてモデルである君に会えたし、インタビューいいかな?」

京太郎「構いませんよ。俺なんかで良ければ」

恒子「ありがとうねー!……はいボイスレコーダー」

えり「それは持ち歩いてるんですね」

みさき「ある意味顔出ししないってことでちょうどいいんじゃないですか」

恒子「ではKちゃん!まず、最初の質問は」

恒子「Kちゃん作成に至るまで、知ってることを教えて!」

えり「予想してたよりまともな質問ですね」

みさき「もっととんでもないものがくると思ってましたよ」

恒子「ほんっと酷いね」

京太郎「……そもそもは製作者、名前は駄目ですね」

京太郎「その人が趣味でぬいぐるみを作ってネットで公開してたんですよ」

えり「ああ、最初は販売すらしてなかったらしいですね」

京太郎「それを欲しいって人が出て、ファンシーなぬいぐるみ販売サイトになったんです」

みさき「趣味からだったんですね」

京太郎「で、その人ものってきて新しいことをしたいって相談してきたんで」

恒子「自分のぬいぐるみを?」

京太郎「いえ、最初は人をデフォルメ化させたものだったんです。その試作品に目の前に居た俺がなった、っていうのがきっかけです」

京太郎「後は、なぜか俺のぬいぐるみが受けたから、っていう流れですね」

えり「趣味から始まってここまで来たんですか。引き受けたあなたもすごいけど、その人の腕もすごいですね」

京太郎「多分、できることよりできないことの方が少ない人ですからね」

みさき「じゃあ、次は」

みさき「全国の美少女雀士が自分の人形を持ってることについて、どう思ってますか?」

恒子「結構突っ込んだこと聞きますね」

えり「まあ、あの野依プロとやってるからでしょうね」

京太郎「……流行ってるからじゃないですか?」

みさき「なんですかその枯れた反応」

京太郎「いや、そりゃ美少女いますよ?うちにもいますし」

京太郎「でも、女子高生とかって流行りもの好きですし、俺のが特別ってわけじゃないと思いますよ?」

京太郎「キャラクターもののぬいぐるみみたいな感覚でしょう?」

恒子「……大抵の持ち主は見た目が気に入って買ってるんですけどね」小声

えり「この間、流行ってなかったら買い占める、って言ってた人いましたよ」小声

みさき「とどのつまり鈍感野郎、ってことですね」

京太郎「……はい?」

えり「言い方キツイですね」

恒子「でも事実ですね」

えり「それでは」

えり「自分の人形をもった女の子とあったらどんなこと話しますか?」

恒子「おお、アナウンサーっぽい質問」

みさき「いや、アナウンサーですから。私もあなたもあの人も」

京太郎「うーん、っていうか何回か会ってますからね」

恒子「え、マジ?」

京太郎「元々知ってた相手が買ってました」

みさき「で、何を話しました?」

京太郎「普通に、ぬいぐるみの出来や感想を。そのまま製作者に伝えれば製作者の人喜びますからね」

えり「……では、知らない女の子が持っていたら?」

京太郎「……別に話すこととか思いつきませんね。そういうぬいぐるみが好きなんだなって思うくらいで」

京太郎「あ、かわいい子だったら色々話したいですね」

みさき「……想像以上の鈍感野郎ですね」

恒子「じゃー」

恒子「プロと結婚するなら誰としたい?」

えり「それKちゃん関係無いんじゃ……」

恒子「こういうのも大事だって」

みさき「まあ大抵はカットされますけどね」

京太郎「プロと、ですか」

恒子「アラフォーなすこやんなんてどう?」

えり「いやアラサ―、もといまだ27でしょう」

京太郎「別に俺はおもち……愛があれば年上でも」

恒子(おもちって言った)

みさき(おもちって言った)

えり(そういやドラゴンロードの子も……)

京太郎「とりあえず名前あげれるような人はいませんね」

京太郎「強いて言えばおもちが大きい人で!」

えり「言い切った!?」

みさき「ある意味潔いね」

恒子「でもすこやんに三尋木プロ、野依プロは除外ですねー」

えり「……瑞原プロとか戒能プロですか?」

みさき「前者はキツイでしょう」

恒子「まあ、28じゃね」

えり「んー」

えり「女性を胸だけで判断するのは良くないことですよ?」

恒子「ガチ説教ですか」

みさき「まあ、当然のことではありますよね」

京太郎「……確かに結婚相手となるとそれは早計だったかもしれません」

えり「そうですよ。それに胸が無いプロも…」

京太郎「それでも!胸は大事なものなんです!!」

恒子「え」

京太郎「俺は胸だけで判断なんてことはしません」

みさき「さっきしてましたよね」

京太郎「俺は『胸を』判断したいんです!!胸だけで女性を評価したりは決してしません!!」

えり「……胸、好きですか?」

京太郎「はい、とても」超いい笑顔

恒子「……若いね」

みさき「じゃ、それは置いといて質問です」

みさき「一番始めのKちゃんぬいぐるみは今どこにあります?」

恒子「売ったんじゃないんですか?」

みさき「一番始め、つまりは試作品です」

みさき「話を聞く限り、かなりの腕とこだわりを持っているような製作者の方が、簡単に売るとは思えないんです」

えり「確かにそれはありそうですね。何か知っているんですか?」

京太郎「最初のやつは俺が貰いましたね。こだわりもあったと思いますが、記念にってことで」

みさき「まだ持っているんですか?」

京太郎「いや、その帰りに友達にあげました」

恒子「へえ。女の子?」

京太郎「そりゃ男がぬいぐるみ貰って何が嬉しいんですか。昔からの知り合いの女の子にあげましたよ」

えり「それからは、どうなったんですか?」

京太郎「さすがに詳しくは知りませんけどね。まあ、物を大事にする奴ですから簡単に捨ててはいないと思いますよ」



咲「へくちっ」



恒子「じゃあ、質問です」

京太郎「どうぞ」

えり「ちゃんとしたやつにしてくださいよ」

みさき「あんまり期待してませんが」

恒子「ちゃんとしてますよ?いいですか」

恒子「彼女はいますか?」

えり「……やっぱり」

みさき「予想してたやつのひとつです」

恒子「いやいやいや、全国のKちゃんユーザーには大事なことですよ?」

えり「いや、アイドルじゃあるまいし」

みさき「アイドルになりかけてる感はありますけど」

京太郎「……色々言われてますけど、俺彼女なんていませんよ」

恒子「ほほう、つまり絶賛募集中」

京太郎「まあ、そうですね」

恒子「全国のユーザーの方々!本物は彼女募集中ですよー!!」

えり「誰に言ってるんですか誰に」

みさき「それはそうと、そろそろ時間ですよ。もう戻らないと」

恒子「む、それは残念。このインタビューはそのうちどこかで公開しますね。あ、個人特定されないようにはしますから」

京太郎「……意外と気にするんですね」

えり「君も言うね」

みさき「それでは、また会える時があったら改めてお礼しますね」

えり「そうですね。付き合わせてしまったようなものですし」

恒子「じゃあねー」



結局、龍門渕との交渉は失敗に終わったらしい

しかし、福与アナのインタビューはネットで公開され、相当の視聴数を記録したとか

その後、Kちゃんの売上が伸びたり長野県への旅行者が増えたりしたのはまた別の話


おまけ

玄「……彼とは一度会う必要があるのです」

玄「おもちマイスターとして!!」ドヤァ

宥「玄ちゃーん、お風呂いいよー」

玄「はーい、ってお姉ちゃんもう上がったの!?おもちは!?」



怜「……胸かぁ」ムニムニ

怜「…………」

竜華「ん?怜どしたん?」ババーン

怜「……ちょっとぐらい分けてや」

竜華「?」



哩「……胸なんて飾りや!」

姫子「そうです!」

哩「分かっとらん!全く分かっとらんよ!」

姫子「本当に大事なもの、教えてやりましょう!」ジャラッ



はやり「わ、私も恋人募集中って言えばぬいぐるみが!」

良子「その前に瑞原プロのファンがバッドなことになりますよ」



照「……ちょっと長野に行ってくる」

菫「は?何を言っているんだお前は」

照「大丈夫。借りるだけだから」

菫「だからなんなんだ」