京太郎「あ、 尭深さん」
尭深「こんばんは」
京太郎「こんな時間に図書館に来るなんて、課題ですか?」
尭深「違うよ、ただの読書」
京太郎「そうですか」
静寂。
京太郎「伊坂幸太郎ですか」
尭深「久しぶりに、魔王を、ね」
京太郎「魔王ですか、グラスホッパーは?」
尭深「好きだよ、けど魔王の方が好きかな」
京太郎「酒でも呑みたくなりますね」
尭深「グラスホッパー?」
京太郎「black&white」
尭深「芥川龍之介、歯車」
京太郎「ええ、まあ、覚えているのはステーキの場面ですけど」
尭深「食いしん坊」
京太郎「はは、すいません。ただ、ステーキから蛆は今では到底考えられませんね」
尭深「即刻営業停止かな」
京太郎「そうですね、ああ、すき焼きも悪くないか」
尭深「今度は夏目漱石?」
京太郎「坊っちゃんですね、よく読みました」
尭深「面白いからね」
京太郎「……あ、もう9時か。
それにしても、今日は、東京にしてはよく晴れた夜だ。
月が良く見える」
尭深「うん、月明かりが見えるくらいに」
京太郎「尭深さん」
尭深「何?」
立ち上がってい。
月を背にしている。
京太郎「月が、綺麗ですね」
ほんの少しの静寂を経て彼女はこう答えた。
微笑みながら。
尭深「死んでもいいわ」
最終更新:2013年04月07日 20:46