「のどちゃんは一体犬のことどう思ってるんだじぇ?」そんな唐突なゆーきの言葉に私は飲んでいたお茶を吹き出してしまいました。「ぶっ!?げほっごほっ!…い、いきなり何を言い出すんですか!」「いや、最近ミョーに犬に話しかけてるしずっと犬のこと目で追ってたし…心なしか距離が近づいてる気がするんだじぇ」そうゆーきに指摘され、私は自分のとった行動を省みてみましたが…なるほど。確かにそう思われるような行動を取っていたかもしれません。しかし。「コホン。…ゆーき、私は胸ばかりを見てくるような男の人は好きではありません。それは前々から知っているはずです」「でも犬は最近のどちゃんの胸見てないじょ?」うぐっ。…そうなんです。最近須賀くんは入部した頃よりも、そしてインハイ後よりも麻雀に真摯に打ち込むようになっていたんです。そしてその努力量は日に日に増していき、実力もそれに比例するように成長していました。…それでも私たち相手にはトんでしまうことがほとんどなのだけれど。「最近は真剣に麻雀に取り組んでるし、龍門渕に通って私のタコス以外にも色々作れるようになってる。しかも気遣いの達人ときた。…どうやら私はヤツをとんでもない完璧超人にしてしまったようだじぇ…」そう言ってゆーきは何故か唸り始めました。それは須賀くんの努力のたまものだと思うんですが…確かに、最近の須賀くんは疲れている時には察してお茶を入れてくれるし、たまに手作りで甘いお菓子を差し入れてくれます。それで麻雀の方がおろそかになったかと思えばそんなことはなくて。私が思わず手を止めてしまうような鋭い打ち方もするようになったし、なにより打っているときの真剣な横顔に思わず…「って何を考えているんですか私は!須賀くんのことが好きなんてそんなオカルトは絶対ありえません!」「うぉっ!?どーしたのどちゃ…ってあちゃー」つい心の中を吐き出してしまった私に驚いたゆーきは何故か「やってしまったじぇのどちゃん」とも言いたげな表情を浮かべていました。なぜそんな顔をしているんだろうかと考えていると。「…そこまではっきり言われると傷つくんだがなぁ」須賀くんが後ろに立っていました。
「なっ須賀くん!?いつからここに!?」「ついさっき。今日は部活休みだけど誰かいたら一緒にお茶でもしようと思ってな」そう言って彼は手に持っていたお菓子の袋を軽く掲げました。もちろん手作り。「けどまぁそこまで嫌われてるならこれだけ置いて帰ることにするぜ。んじゃなー」嘯きながらひらひらと手を振り出ていこうとする彼に私はつい。「ま、待ってください須賀くん!」呼び止めてしまったのでした。「なんだよ和ー?俺はこれから帰ってどうやってこの傷付いた心を癒すか考えないといけないというのにー」彼はよよよと泣き真似をしていました。特に何も考えないままに呼び止めてしまった私はとりあえず誤解をとこうとしましたが。「さ、さっきのは冗談というか何というか!」何も考えていなかったため、言い訳のような形になってしまいました。それに対し須賀くんは「…じゃー俺のこと好き?」と返してきます。「好き」、と素直に言うことなんて私にできるはずもなく。「うっ…」言葉に詰まり、何も言うことができません。それをまた須賀くんはどう誤解したのか「やっぱ嫌いなんだな…いーよいーよ、今日は俺泣いちゃうもんね」私はどう答えるべきだったんでしょうか。何も分からずオロオロしていると。「おい犬!そろそろのどちゃんからかうのはストップだじぇ!下手すると泣いちゃうじょ!」ゆーきが助け舟を出してくれました。…でも私はこんなことでは泣きませんよ。…多分きっと恐らくメイビー。「あー…すまん。やりすぎたか。つい優希にやるようなノリでやっちまった」須賀くんはそう謝ってくれましたが、「いえ…むしろ私の方が謝るべきです。申し訳ありません…」やはり事の発端は私なのだから私が悪いとしか思えません。「あーもうなんか調子狂うなー…とりあえずお茶にしようぜ!な!」須賀くんはバツが悪そうな顔をして話題を切り替えにかかりました。もちろんそのことにはなんら異存はなく、その後三人でお茶を楽しみました。―――――「ふぅ…」今日やるべきことをすべて終えた私はベットに寝転がってゴロゴロとしていました。考えていたのはもちろん須賀くんのこと。「須賀…くん…」昼間はつい自分の考えを否定していましたが落ち着いた今ならはっきりとわかります。私は須賀くんのことが…「好き…なんですよね…」彼への思いを自覚できた今となってはきっとあの質問に答えられることでしょう。でも多分真っ向からは答えられません。私は素直じゃありませんから…でも。「明日は…少し素直になれるといいなぁ…」そう願って私は、今日も眠りに就きます。カンッ
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