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怜(……これは本当に、進化なんやろか)ハァ
気付いた時は、そこまで深刻じゃないと思った。
怜(もう、何回同じ事を繰り返したか分からへん)
最初のきっかけは、実に些細なことだった。
怜「……夢?」
いつも通りに、朝起きる。しかし、いつもとは違って……夢の内容を鮮明に覚えている。
怜(確か、遅刻すると思って、急いで走ってたら……つまづいて、転んだ)
擦りむいた膝を見て、あぁ嫌だなぁと思った瞬間、ベッドの中で目が覚めた。
怜(予知夢……ついにここまで進化したんか。もう、一巡とか関係無いやん)
後に怜は気付く。それはまるでリセットボタンのように、嫌だと思った瞬間にはいつでも『目が覚める』。
自分の気に入らない事を見た時点で、そこまでの出来事全ては『予知』になっていた。
怜(おかげで交通事故も回避出来るし、学校のテストの内容も把握出来る。麻雀でも、自分のミスで負けることは無くなった)
懸念が有るとすれば、無意識の内に予知能力を使っている事だろうか。おかげで、予知と現実の区別が付かなくなってきている。
そして、薄々気付いていた。
これは、未来予知などではなく、時間遡行なのだと。
怜(自分が嫌やと思った瞬間、私の主観は巻き戻る。タイムリープやん)
気付いた時からは、意識して封印出来るようになった。――よほど、自分の感情が動かない限りは。
怜「京太郎、死なんといて……」
京太郎「すいません、でも……ここまで、ですよ」
もう、何回目だろうか。自分の手の中で、大人になった京太郎が息絶える。
怜(……そして、振り出しに戻る)
大学生の怜は布団の中で目を覚ます。――今日は、京太郎に初めて会う予定の日だ。
神様は、京太郎を失う怜の悲しみを無限に掬いとり――毎回この日に戻してくれる。
怜(いっそ、会わん方がマシってな……)
でも、出来ない。何回繰り返しても、そこだけは譲れない。
怜「私が満足するまで……何回でも、付き合ってもらうで。神様」
そして今回も、彼女は京太郎に会いに行く。
――ループを止める気は、更々無かった。