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 それは人生初めての告白だった。  麻雀部の部室、部活動の終了後、二人きりの時間。緊張と興奮から武者震いを覚えながら口を開いた。 『好きだ和! 結婚してくれ……あっ』  おそらく普段から和との結婚を妄想し過ぎたせいなのだろう。勢いにまかせて強い願望が漏れてしまったのは。 ---- -- 「ぶっはははは、京太郎っお前それバカだろう、いきなり告白をすっ飛ばしてプロポーズとか」  当然、和には断られた。 「うるせぇよぉ……」  失恋の悲しみを誤魔化すように俺は友人の高久田誠に愚痴ったのだが、笑われている。  もしも逆の立場なら盛大に嘲笑ったと思うが、傷口に塩だ。キツイ……。 「それでどうするんだ?」  どうしようか。  和に撃沈されて以来、俺は麻雀部に顔を出していない。出るべきだとは思うが、出難いのだ。  新部長である染谷先輩には事のあらましを伝えたのでまだ暫くは問題ない。あの、こちらを見るなんとも言えない微妙な表情はやめて欲しい。同情はいらないんじゃ……。 「もう直ぐ冬休みだから旅にでも出ようかと思ってるよ」 「旅か……羨ましいね。これだから金持ちは」  家は平均よりは上だが、世の中には龍門渕さんみたいな雲上の人もいる。それに比べれば大したことはないと思う。  さて、何処に行こうかな。 ---- -- 「へえ、凄いですね高校生で一人旅なんて、少し憧れます」  最北の雪国。  北海道で出逢ったのはロリ系おもち少女の真屋由暉子。街中でツルンっと転けた彼女を助けたことを切っ掛けに仲良くなれた。  インハイや国麻で遠目に見掛けたことはあったけれど、実物は改めて間近で見てみると凄く可愛い。  色白な肌が寒さから僅かに赤く染まっているのが色っぽく魅せる。彼女なら本当にはやりんを打倒できるかもしれない。 -- 「京、こっちがうちお薦めの店のやで」 「お姉ちゃんよりもうちの方が美味しいから食べてみ」  食い倒れの街。  大阪ではあの愛宕姉妹に遭遇した。  残念でオモシロイ顔の姉は元部長の竹井先輩と懇意にしていることもあり、俺の顔が知られていた。  街中で突然話し掛けられた時は逆ナンかと思ったが、そんなはずがなかった。  素晴らしい方の妹と供に大阪の名所や食べ物屋を三人で巡りに巡り、最後は爆発的なおもち少女が看板娘なお好み焼き屋でお腹いっぱいに食した。 -- 「良いお湯ですよね」  灰降る地。  鹿児島は日本で五指に入る温泉県。  旅の疲れや心の癒し、ちょっとした冒険心からアドベンチャーを求め、噂の秘湯を探して山に赴いた。  しかし、霧が出、携帯の電波も途切れ、遭難した。心身震えながら山中を歩き回り、行き着いたのは天然温泉。  そこには先客がいたのだ。  おっとりと、清涼で不思議な雰囲気を放つおもち巫女の神代小蒔さん。ドキドキの混浴、白濁のお湯で隠れがちな裸体に俺は釘付けだ。  プカプカと浮かぶ大いなる乳。  腰から臀部の美曲線の終着点である尻。  無駄な脂肪はないも柔らかそうな太股。  上部で纏められた髪により露になった項。  そんなものを見たら元気になるわけで、彼女に見せるわけにもいかず、逆上せて倒れるまで目が離せなかった。 -- 「日本でももっとハンドボールが広がって欲しいですよね」  眠らぬ都。  旅も終わり、帰路は新幹線。最終の電車に乗れば良いかと考え、夜まで東京観光。  暇潰しにブラブラしていると、近場でハンドボールの試合が行われていることを知った。  経験者として興味が疼く。  マイナースポーツ故の観客数の少なさに覚えた悲しみ。同じ思いを感じていたらしい隣の席に座る外国人、雀明華さんと意気投合。  同好の士は良いものだよ。 ------ ---- --  旅から帰り、明けた冬休み。  持ち寄ったお土産での御機嫌伺いと麻雀部への復帰。春大に向けて活気増す中、反比例する俺の胸中。 「はあ……」 「ため息とかねえよ!」  誠の文句も分からなくもない。  しかし、果報も過ぎたれば身を持ち崩す凶報とならんや。 「俺さ、旅先で色々と幸運に恵まれた出逢いもあって和のこと吹っ切れたのにさ……今更と言うか……」  出逢ったおもちな少女たちとは連絡先を交わしていた。  新たな恋に漕ぎ出すのも悪くない。そう思って俺は積極的に交流していたのだ。誰も彼も可愛いし、良い子だし、惹かれてしまう。  ユキ、絹恵さん、漫さん、小蒔さん、明華さん。えっ? 愛宕姉? おもちのない方はちょっと……。  誰か一人だけに告白されたのなら即座に受け入れたと思う。しかし、偶然か意図的か、ほぼ同時期に全員から好意を寄せられた。  それだけでも十分な悩み事。 「まさか、和からも告白されるなんて……」  告白に失敗してから俺は彼女を避けていた。麻雀部に顔も出さない徹底振り、……ヘタレだな。  それがショックだったらしい。  そして、近くからいなくなって俺への想いを自覚したそうだ。それでも、一度は振ってしまった手前、彼女も気まずかったわけだ。  そんなことに気づくはずもなく他の女性と親しくなり、日々少しずつ薄れていく俺から和への感心を彼女は敏感に察知していたらしい。  そして、愛宕姉、元部長経由で知らされた俺が告白されたと言う情報を掴み、慌てるように今日想いを告げられた。 「っで、どうするんだ?」  本当にどうすれば良いのか。  俺は頭を抱えてしまう。  --迫り来る怒濤の季節。  春大で勃発する恋愛戦争。  花咲く桜、真っ赤な桜吹雪、綱を渡りきれるか、それとも木の下に埋められるか…… カンッ!

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