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「あーっ、素直に買えば良かった!」 台所で京太郎が叫び、心底後悔したとがっくりと肩を落した。 「……時間ねーしな」 チラっと時計を見て頭を抱える。 それでも暫くすれば、気を取り直し、目の前の作業に没頭していった。 : : : 「京ちゃん」 「はいはい、ぎゅーと」 作業を行い、時間も時間となる。 京太郎の部屋にやってきたのは、白いコートとセーターに身を包んだ照だ。 照は、やってくると同時に京太郎に抱擁を求め、京太郎もまたそれを受け入れる。 暫く照は体を温めれば、部屋の中の定位置のコタツへと入っていった。 それを微笑ましく見送った後、先ほどの惨状を思い出し京太郎は意気消沈。 照の好きなお菓子、クリスマスのお菓子と言えば――そうケーキだ。 照を喜ばす為にケーキを用意する。 それはいい事だし、素晴らしいアイデアだった。 しかし、それも京太郎が『手作りだともっと喜ばれるのでは』と思うまでの話。 そもそも、タコスにタコスミを入れるような腕前の京太郎。 あれやこれやとやっていれば、無様な出来なケーキが出来上がる。 「……」 「……すみません。照さん」 勿論、買ってくる時間もなく。 ケーキなしのクリスマスなどありえない。 京太郎は、しょうがなく申し訳なく思いつつもケーキを取り出した。 「んっ、んー……」 食べた照の返答は沈黙であった。 ただただケーキを口に入れいつもの薄い表情で口を動かす。 そんな照を見て京太郎は更に落ち込みコタツにもぐりこんだ。 「京ちゃん」 「うぅ……アレンジしなければ良かった」 コタツの机に額を押し付けて泣き言を言っていれば、照の声が聞こえる。 声に反応し、体を起こせば照がケーキの一欠けらをフォークに刺し、京太郎へと向けていた。 「あーん」 「……あーん」 お前が作ったんだ。食え、コノヤローとばかりに京太郎が口を開いた瞬間ケーキを押し込む。 「……意外と食えるな」 「うん、とても美味しいよ。京ちゃん」 「っ……照さん!!」 口の中で咀嚼し飲み込めば、そんな感想が出てくる。 見た目こそ、あれだが、味は普通に普通だ。 その事に気付き、京太郎の心は少し軽くなり、照の本当に心を許した人物にしか見せない笑顔で癒される。 (落ち着け、俺) 「-♪」 嬉しそうに幸せそうにケーキを口にする照。 そんな彼女を今すぐ抱きしめたいと京太郎は思う。 しかし、照の邪魔をするわけにもいかず、悩んだ。 「京ちゃん、こっち」 「照さんっ!!」 悩んでいれば、照が自分の横をポンポンと叩く。 呼ばれたことに喜び、京太郎は照の側による。 「京ちゃん、あーん」 「あーん」 横に着けば、照がケーキを食べさせてくる。 それを受け入れて食べれば、今度はフォークを京太郎に渡す。 「京ちゃん、私も」 「はい、あーん」 「あむっ……うん、やっぱり美味しい【幸せだ】」 結局、作った一ホール。 その全てを京太郎と照は、幸せに食べきった。 カンッ!

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