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「どうすっかなー」 「どうしましょうね」 新道寺の部室で京太郎と煌が、うんうんと唸り天井を見上げる。 ぼけーと天井を見上げる二人は、焦った様子はないものの困った、困ったと口にだす。 そんなことをしていれば、人の目に付くのは道理。 そもそも、部活の時間帯なので嫌でも目に付く。 「どげんしたと?」 「やー……足りなくなりまして」 そんな二人に声を掛けた人物が居た。 最近では、使う人も少ない佐賀弁に染まった少女。 新道寺のエースであり、部長の哩だ。 哩が声を掛ければ、二人は視線を哩へと向けて事情を話しだす。 「こい?」 「これっす」 「いやはや、予定が狂いまして」 聞かれた京太郎は、自分の口から生えた白い小さな棒を指差す。 指差せば、哩もまた、京太郎の口から生えた物と同じ物を指差した。 「チュ○パチャップス?」 「はい、先生がハロウィン用に皆に買ってきてくれたじゃないですか」 「そうやね」 今日の日にちは、10月31日……ハロウィンだ。 新道寺の先生こと比与森楓が、部室にチュ○パチャップスを大量に持って来た。 運んでいた先生が、途中で京太郎に渡して、そこから部員の皆に渡ったのが先ほどのことだ。 「んー……なして一本だけ?」 「先生が一本咥えてましたから……自分の分を入れ忘れてだと思います」 「変なところでおっちょこちょいと言うか」 京太郎の脳裏に今の自分達同様に口に咥えている先生が思い浮かぶ。 部員ぴったりに買ってきたこと忘れて、ついつい口にしてしまったのだろう。 「貰ってなか人は――」 哩が、辺りを見渡し貰っていない不幸な部員を探す。 「姫子先輩っす」 「あー、遅れるっち言うてたな」 探していれば、京太郎が足りない可哀想な子の名前を述べた。 述べれば、哩は姫子に言われていたことを思い出し、何とも言えない表情をする。 姫子の事をよく知っている哩だ。 このような状況で一人だけ、ハブられた場合の姫子の態度は分かりきっていた。 「泣くな」 「ですよね」 「えぇ、私でもこれは辛いです」 三人して、泣き顔の姫子の顔を思い浮かべ、気まずげな表情をした。 「買いに行くにも……」 「間に合わんな」 「一応……他のお菓子は、用意しましたが」 「ふむ……イケっかも」 お菓子は、あるが一人だけ別なお菓子。 やったー! 一人だけ特別だ! と喜べる人ならまだいいが、残念ながら姫子の性格上、それはありえなかった。 しかし、差し出されたお菓子を見てから京太郎をもう一度見て、哩が大きく笑顔で頷いた。 「てことで、姫子には悪いけど、ここから選んで」 「……どいでもよか?」 「どうぞ、どうぞ」 それから、姫子が遅れてやってきて哩が、説明をする。 説明を受けた姫子は、少しばかり悲しそうであるが、しょうがないと首を振り、無理矢理笑う。 しかし、その無理矢理の笑顔も差し出されたお菓子を見て一変する。 煌にお姫様でも迎えるかのように案内されて行けば、そこに多くのお菓子を持った京太郎が居る。 「姫子先輩、どうぞ」 「えっと……そいじゃ、こい」 「……へ?」 「こいがよかよ」 選り取りみどりのお菓子の山。 その中で京太郎が、姫子にどれにするかと聞けば、最初から決めてましたと指を指す。 その指差された物に気付き、京太郎が疑問の声を上げた。 「~♪」 「……えっと、その本当に咥えてるし」 部室に置かれたソファーの一角。 そこで姫子は、機嫌よく『飴』を咥える。 逆に隣に座っている京太郎は、顔を真っ赤にさせ気まずかった。 それもそのはず、姫子が咥えている飴は―― 「まさか、京太郎くんの咥えている飴を選ぶとは」 「姫子んことやし、選ぶと思っとった」 「一人だけ別は、いややけん」 「飴あげたのにイタズラされた気分です」 今日も今日とて新道寺は平和だ。 カンッ!

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