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 高校卒業後 、私はプロ雀士となった。  インターハイ、国麻、ジュニアの国際大会と大活躍し、華々しい功績を残したことで数多くのプロチームからオファーが来ていた。  今はその中の一つに所属し、日夜プロとしてしのぎを削っている。 (ふう、ここに戻ってくるのも久しぶりだね)  麻雀は室内知的競技である。  雀卓と面子さえあれば場所を選ばず何処でも行える。だからこそプロの試合会場は全国津々浦々であり、試合回数も多くてシーズン中はかなり多忙だったりする。  チームの本拠地である東京には一応の寮もある。私の場合はお母さんが此方に住んでいた時の家があるので使っていない。 (京ちゃんもこっちの大学に通っているんだよね……うん、いきなり訪問したら迷惑かな…………よし、行こう!)  幼馴染のことが昔から私は大好きだった。  しかし、この想いを伝える機会はなく、高校時代には恋人になることも出来なかった。  --勇気がなかった。  プロに荒波に揉まれ、先達の方々に忠告され、私は覚悟を決めた。 『恋人? はは、アイドルをやっていたからね……欲しくないのか? 欲しいよ、結婚したいよ! このキャラを演じ過ぎたせいなのかな、良い人が見つからないんだぞ★』 『前まではさ、親も彼氏はいないのとか、結婚しないのかとかシツコイ位に聞いてきてたんだよね。だけど、最近じゃあ、あからさまにその話題を避けているって言うか……ははは、はぁ』 『結婚、恋人……私口下手……見つからない……お見合いも不調…………』 『友人も既に一児、二児の母だったりするし、結婚式の招待状とか見る度に辛いよ。この分じゃあ、私より先に教え子が結婚するような気もしてね……』  お金や名声が幾らあろうとも、ああは成りたくない。私は本気でそう思った。  彼の住んでいるアパートの前に到着した。  左手には地方で買った名物に、右手にはスーパーに寄って買った食材たち。  家庭内不和による父子家庭、ドジな私でも料理の腕はそれなりに鍛えられている。まずは胃袋から攻めよう。  --ピーンポーン  彼の部屋への呼び出し音。  数秒の間を置いて、インターホンの向こうから声が聞こえた。 『はい、もしもし?』 「京ちゃん、咲だけど部屋に入れて」 『ん? おお、久しぶりだな咲! 今開けるよ』  自動ドアの施錠が外れ、扉が開く。  私は閉じる前に滑り込み、そしてエレベータに乗り込んで彼の部屋がある階へと至るボタンを押した。  移動の震動を感じながら、エレベータ内に備え付けられている大鏡の前で変ではないかと最終確認。 (緊張しちゃうな、えへへ、京ちゃんは喜んでくれるかな?)  停止し、ドアが開く。  胸の高鳴り、幸せな未來。ドキドキしながら彼の住まいの前に着いた。 「京ちゃーん!」  部屋へコールし、ドアを叩く。  扉の向こうから人の気配がし、カチャリと音がし開いた。 「いらっしゃい、咲さん」  どうして彼女が此処にいるのか。  部屋を間違えてしまったのだろうか。 「な、何で、和ちゃんが……!?」  私の想いを知ってか知らずか、幸せそうに微笑みながら彼女は無慈悲に告げる。 「私は京太郎くんの彼女ですから。今は一緒に住んでるんですよ。あれ? 言ってませんでしたっけ?」  聞いていない。  そんなことを私は知らない。  どうして、何で、思考は渦巻き、ぐるぐる、ぐるぐると回っていった。  案内されるまま、彼と彼女の家に上がり、彼女が既に作った味の分からない夕飯を食べ、二人の家に宿泊した。 (ふふ、あは、アハハハハ、こんなのってないよ……)  悲しみを背負いし魔王の暴虐が雀界で猛威を振るう!! カンッ!

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