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 あなたが好きだ。 「何を黄昏ているんだ照?」 「菫か、どうしてだと思う?」  私よりも小さくて、幼くて、弟みたいにも思っていたはずの彼は見違えてしまう程成長していた。  背もいつの間にかお父さんと同じくらい高くなり、男性の精悍な体つきに図らずも胸がキュンっとさせられた。 「妹と会ったらしいな、それが原因か?」 「惜しいな」  --"照"っとかつては呼び捨てに呼ばれていたのに、再会した彼は"照さん"と私を呼んだ。  その敬称に鈍い痛みを覚える。  離れていた時の流れ、その重み、悲しく、苦しく感じてしまう。あの長野から去ることを決めたのは私の意思、選択であったはずなのに…… 「菫は恋したことがある?」 「なっ!? こ、恋だと!!」  彼の隣にあの子がいた。  私が消えてからもずっと側に寄り添い続けたのだろう。気軽に名を呼び合い仲睦まじそうに見えた。  その差こそが、私と彼の距離を如実に物語っているようで嫌な気分になる。 「そ、そういうお前はどうなんだ?」 「私?」  昔から彼は妹の世話を焼いていた。  あの子は誰に似たのかドジでどこか抜けていてポンコツだから。私とは違う。  幼い頃は彼が妹にばかり構うものだから、小さな嫉妬からわざとダメな子を演じたこともあった。  所詮は演技、本物には叶わない。 「私には好きな人がいるよ」  --京ちゃん、好きだよ。  今さらのこの想いはきっと遅すぎる。  届くだろうか、あの子が既に手に入れてしまったのだろうか、分からない。それでもあなたが欲しい。だからどうか、届いてください…… カンッ!

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