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咲「ほわぁ………ああ、ほんと感無量ってこういうこと言うのかなぁ」
京太郎「おーい、咲、もどってこーい」
午後11時を過ぎたころ、俺の家のリビングのソファの上で咲が幸せそうな表情でトリップしている。
いや危ない薬を飲んだとかではなく、金曜ロードショーで感動した結果だ。
ちなみに題目は「ルパン三世 カリオストロの城」だ。
咲「もう、無粋だなぁ京ちゃんは。名作は何度見てもいいものなんだよ?」
京太郎「いや、それはそうだけどな?
ガキの頃よりは摂政とか伯爵とか、意味わかって面白かったけど」
小学生低学年の頃は、家にあった古い8ミリテープで何度も見た映画だが、ちゃんと内容を理解できる歳になってみると又面白かった。
咲「盛り上がるところはいっぱいあるけど、やっぱり最後の終わり方がいいんだよねぇ」
京太郎「アニメ製作陣のセンスがまじでおかしいレベルだな。
物語も最高でほっこり終われる(追われる)エンドなのに、ICPOって書いてある反対側には埼玉県警って書いてあるパトカーとかちょくちょく挟んでくるギャグとか」
咲「題目も完全な子供向けじゃなくて、義賊的な泥棒っていう清濁併せ持つものだから余計に深みがあったりね」
京太郎「おおう、咲が文学少女みたいなこと言ってる」
咲「みたいなって何さ!」
頬を膨らませた咲が、ポコポコと俺を叩いてくる。
京太郎「こーら、そんな悪い子のところには泥棒が来ても知らないぞ」
咲「ふーんだ。どこぞの金髪の泥棒さんなんか怖くないもんね」
京太郎「お、言ったな? じゃあ何盗まれても文句言うなよ?」
咲「へー? いったい何を盗むっていうのかな?」
京太郎「お前の心」
咲「は?」
一瞬訳が分からないといった顔になった咲が何かする前に、素早くその膝の裏と背に腕を回して持ち上げる。
京太郎「さーて、もう今日は遅いし泊まって行けよ。
最近寒くなってきたし、今日は俺の部屋で暖かくしようぜ」
咲「え!? ちょ、ちょっと京ちゃん何言って――――!!」
その晩俺たちに何があったかは、俺の部屋の檻の中で温まっていたカピーのみが知る。
ただ、咲はとんでもないものを盗んでいかれたようだった。