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 それは9月に入って最初の部活が終わった後の出来事だった。 絹恵「須賀君、君が好きや!私の彼氏になって!!」 絹恵「素直で恰好良くて、少しヘタレな部分も含めて大好きです!」  京太郎「喜んで!」 絹恵「いぃいいいやったぁああああああああ!」 京太郎「やったあああああああ!」  こうして俺と絹恵先輩は付き合うことになった。  元々お互いが体育会系ということもあり、部活が休みの日は一緒に スポーツセンターで身体を鍛えたり、サッカーやハンドボールをして 遊んだりと、毎日がバラ色になり全てにおいて充実していた。 洋榎「絹を泣かせたら...ぐすっ、承知せんかぁらなぁ!」 雅枝「いつでも遊びにおいでな、歓迎するで」  麻雀では鬼のように強い彼女のお姉さんとお母さんは家ではとても 優しくて家族想いのいい人達だった。 絹恵「なぁ、京太郎。来年も麻雀部続けるの?」 京太郎「ん~。いや、色々考えたんだけどさ、やめるよ」 京太郎「絹恵先輩のお陰で、俺が何を目指してたのか思い出したんだ」 京太郎「もう一回、あの高みに行きたいんだ」 絹恵「そっか、寂しくなるな」 京太郎「ごめん。最後まで一緒にいれなくて」 絹恵「ううん、京太郎が気にすることなんてなんにもないやん」 絹恵「大阪の高校サッカーは強いで?それでも挑むんか?」 京太郎「挑むよ。だからさ、絹恵先輩。俺のこと応援してくれ」 京太郎「先輩が応援してくれれば、俺は絶対に負けないから...」  秋が過ぎ、冬が来て、一年が明けた。   そして一月、俺は麻雀部をやめ、サッカー部に入部した。  勿論ポジションはキーパーを志望した。レギュラー争いはとても過酷で 熾烈を極めたけど、俺はこの戦いに勝ち残り、6月の大会でスタメンとして 出場することが確定するところまで辿りついた。 絹恵「頑張れ~!負けるな京太郎ー!!」  そして今、俺はグラウンドに選手として、主役として立っている。  かつて俺が中学校の時に、あと一歩届かなかった夢の場所の近くにいる。  試合も残すところ、あと3分45秒、互いに同点でありこれが天王山。  これに勝てば中央トーナメントに出場でき、IHも見えてくる。 京太郎「来いよ...止めてやる」  中央を突破され、怒濤のように流れ込んでくる相手校の選手達。  めまぐるしく行き交うボールから視線を外し、正面を見据える。  五体と心が昂ぶり、それに呼応するように全身が躍動する。  相手の選手が放ったシュートは右のサイドバーにぶち当たり、宙に舞う。  絶対に負けられない、誰にも譲れない意地と意地がぶつかり合う。  そして、俺が飛び上がって掴んだのは、勝利につながる黄金の一手。  咆哮を上げながら、全力で反撃の狼煙を上げる仲間達。 京太郎「勝つのは...姫松だぁああああああああ!!!!」 部員達「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」  蜘蛛の子を散らすように対戦校の選手達は駆け出す。 京太郎「おおおおおおおおおおお!!!!」  渾身の力を込め、戦局を動かす最後の一球を蹴り出す。  残り45秒、もうゴールを守る事なんて頭から消えていた。  仲間達と共に猛然と駆け出し、ドリブルで相手を躱しながら 鋭く相手の本陣へと切り込む11人の主役達。 京太郎「皆!あとは頼んだぞーっ!」  死にものぐるいの相手選手を四人ほど引きつけた俺は、 一番近くにいた三年生のキャプテンに向かって、最後のパスを出した。 キャプテン「任せろッ!」  そして、全員の希望を託された主将同士が竜虎相見え決着をつける。 京太郎「勝った、のか?」   ゴールに突き刺さったボールを見ながら、誰もが呆然と立ち尽くす。  電光掲示板の点数が変わるまでの数秒が、一日のようにも思えた。 審判「試合終了ーっ!!」  爆発する歓声。そして仲間達の雄叫びが聞こえてきた。  私立の強豪シード校に対して文句なしの大金星。誰もが我を忘れ叫んだ。 京太郎「うあああああああああああああ!!!!」   感動の涙で顔を濡らしながら俺達は整列し、試合を締めくくった。  コートに背を向け、選手達が肩を抱き合いながらベンチへと戻っていく。  仲間達と喜びを分かち合っている最中、声が聞こえた気がした。  振り返ってスタンドを見る。すると、 絹恵「京太郎ー!京太郎ー!おめでとーーーーーー!!!!」  満面の笑みを浮かべながら、絹恵先輩がブンブンと手を振っていた。  上気した頬と、満面の笑みがまるでハイビスカスのようだった。 京太郎「....」  勝利に酔いしれ、緩みそうになる自分の心に活を入れる。  まだだ、まだ俺は何も掴んじゃいないんだ。  勝利も成功も通り過ぎればただの軌跡、ここからが俺達の始まりだ。 京太郎(まあいいさ、どこまで掴めるか分からないけど...)  手に入れたものを取りこぼさないように人は拳を握りしめる。  人によってはかけがえのない大切な誓いや、抱えきれないほどの 重荷かもしれない。  誰かに見せつけるように、京太郎は開いた右手を宙に高々と掲げた。  指を一つずつ握り込む度、目に見えない何かを一つずつ掴んでいく。 そうして、全ての指を握り込んだあとに一つの拳ができあがる。  拳の中にはなにもない、しかし確かに京太郎は何かを握りしめていた。  それはまぎれもない『証』だった。  カン

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