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「彼との交際がダメとは何故ですのお父様!」  金髪の髪を振り乱しながら透華は父親に向かって吠える。彼女がこのように親に対して楯突いたことは初めてのことであった。 「ならん、他の男ならまだしもあやつだけは認めるわけにはいかんのだ。 彼とは別れなさい透華」 「絶対に別れたりしません。京太郎は私に相応しい殿方となるように頑張って来ましたわ!」  京太郎の家が裕福であるとはいえ、かの龍門渕に比肩する家格であるはずもない。  故に、想いを繋いだ少女と結ばれるために努力した。それは努力と呼ぶには不適応な、地獄を巡るような無情な修練。  誰にも文句を言わせないためには必要なことであった。 「彼はハギヨシにだって負けませんし、この前の大きなプロジェクトも成功させました。お父様だって彼を褒め、認めていたじゃありませんか!」 「確かにあやつが優秀であることは認めている。部下としても、男としても一角だろう。だが、お前があやつと交際することだけは認めんよ」 「分かりませんわ、どうして、どうして京太郎と私の仲を認めて下さりませんの?」  巨大財閥を統べる当主である父が彼の能力を認めている。厳格で滅多に人を認めようとしない男が認めているのだ。  そうであるにも関わらず、京太郎と自身の仲については決して認めようとしないとはどういうことであるのかと透華は疑問に思った。 「…………」 「理由があるのなら言ってください、お父様」  書斎に沈黙が訪れる。  透華は強い意思が籠った眼差しで逸らすことなく、父の目を見た。娘に諦めの色はないことを悟り、当主は観念したのか閉ざした口を開く。 「お前とあやつは血の繋がった姉弟だ」  告げられた言葉は届いている。  しかし、意味が分からない。理解できない。分かりたくなくて、頭の中が白く染まる。 「な、何を言い出すんですの? 冗談にしては質が悪いですわよ、お父様」  父親の顔に嘘はない。  真実であるのだと泰然とした態度で透華を見る。 「う、嘘ですわ! だって彼の戸籍は間違いなく京太郎のご両親が親であることを記していて、養子とかでも……」  ご令嬢であることを自覚し、結婚までをも想定していた彼女は以前に京太郎の身辺をハギヨシに命じて調査していた。  だからこそ、そんなはずがないと彼女は否定する根拠があった。 「戸籍上はそうだろうな。当時、私の愛人だった女に惚れた須賀は腹に子がいることを知りつつも直談判してきた。あいつの熱意に彼女も伴され、私も日陰で生きるよりは良かれと思った」  そうではないのだと当主は告げる。 「そうして産まれた子供は間違いなく私の息子であり、血を分けたお前の異母弟だ」 「そんなの、そんなことって、嘘ですわ!!」  真実を前に透華は涙が零れる。  信じたくはない。しかし、調べれば判明するような嘘を吐く理由もない。  彼女は書斎から走り去っていく。愛する人と血が繋がっていたという知りたくもなかった事実に堪えられず、駆けていく。  愛しい京太郎の下へと-- カンッ!

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