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「京太郎の奴、酷いんだじぇ!」  優希はよっぽど彼のことが頭に来ているのでしょう。文句を言いながら大量のタコスを次々に口へと放り込んでいきます。  正に自棄食いですね。 「あはは、京ちゃんはちょっとデリカシーのない所もあるからね。今回はいったい何をやらかしたの?」  咲さんは相槌を打ちながら具体的な話を聞こうとしています。優希は感情的な子ですから何があったのか判然としませんからね。 「ううぅぅ……」 「言い難いことなんですか?」 「これを話すことは私にとって恥なんだじょ……」  よっぽど恥ずかしいのか、話難いのか優希は口をへの字に曲げながら唸ってしまいました。  私と咲さんは彼女がどうするかを選ぶまで待ちました。 「話すじぇ……据え膳食わぬは男の恥って言うよな?」 「一般的にはそう言われていますね。……まさか優希!?」 「うぇ!?」 「……何時ものようにふざけててさ、ちょっと互いに縺れて倒れ込んじゃったんだ……それで押し倒されたみたいになってさ……」 「あわわぁ」  咲さん、慌てすぎじゃないでしょうか。 「以前にも似たような状況はあったんだけど、今回はもっと踏み込んでみたんだ……私、あいつのこと好きだし……」 「えっ?」  咲さん優希の気持ちに気づいていなかったんですか、鈍すぎると思いますよ。 「ええ、それで誘ってみたんですか?」 「うん、だけど、あいつ……思い出すだけでムカつくじぇ! この優希さまが襲われても良いって言ったのに、何もしないとか!!」  女が恥を忍んで求めたのに応じてくれなければ、確かに怒る気持ちも分からなくはありません。  彼が優希の想いを受け入れることなくヤるだけの無責任な人であれば、それはそれで軽蔑しましたけれど、そうではありませんし、難しいですね、本当に。 「はあ、やっぱり京太郎はさ……私みたいなちんちくりんじゃなくて、のどちゃんが好きなのかな?」 「えっ? 優希ちゃんも京ちゃんが好きで、京ちゃんは和ちゃんのことが好き? えっ、そんな……嘘!?」 「…………」 「咲ちゃんもやっぱりあいつのことが好きなのか?」 「えーっと、その、…………」  認めることが気恥ずかしいのか、咲さんはあたふたしていますが丸分かりですね。  "も"なんて言っている時点で語るに落ちてますよ。 「なあ、のどちゃんはあいつのことどう思ってるんだ? 私に遠慮しないで欲しいんだけど」  親友の瞳は真摯に真実を求めていました。  きっと嘘を吐くことは簡単で、楽な道です。だけれど、それを選べば私は胸を張って彼女の友だと口にできない。 「……好きですよ」  だから、隠していた気持ちを述べていました。 「和ちゃんまで!?」  嫌いなら、きっと下の名前で呼ばれることも認めません。自分から話しかけたり、ましてや励ますようなことだって口にしません。  家族を除けば一番親しい男性で、気になる、いえ、好きなんです。 「そっか、のどちゃんも京太郎が好きか……多分、あいつものどちゃんのことが好きだと思うじぇ……悔しいけどな……」 「両思い……そんな……でも、確かに京ちゃんは何時も和ちゃんを見てるし……そうなのかな……嫌だな……」 「咲ちゃん……」 「嫌だよ、京ちゃんが誰かに取られちゃうなんて、嫌なんだよ、だって私、昔から……」  そう言って咲さんの瞳から涙が零れていきます。釣られるように優希も泣き始めました。  私は二人の気持ちを明確に教えられ、これからどうするべきなんでしょうか。  彼のことは好きです。  彼女たちのことも好きなんです。  友人を失ってまでも私はこの恋を成就したいのでしょうか。そうは思わない。しかし、遠慮をすることは許さないと優希の目は語っています。  一方、咲さんは友達に向けてはならないような視線で疑い深く私を睨んでいます。場合によってはもう友人ではいられなくなるかもしれない。 「私は--」  選ばなくてはいけない。  彼女か、彼か、彼女かかを取らなければならない。  一人の友人を失って彼を手に入れるのか。  一人の友人を失って彼をも諦めるのか。  選ばないことを許してはくれない。 「--須賀くん、呼び出してすみません」 「別に構わないけど、わざわざ人気のない場所に何で呼んだんだ?」  訝しげな視線を彼は送っています。  優希が言う通り、彼が私を好きなのかは分からない。彼が私の胸をよく見ていることは知っています。  男性は多かれ少なかれ私の胸を見てくる人が大半でしたのでそれでは判断がつきません。 「須賀くんには好きな人がいますか?」 「……好きな人か、どうしてまた?」 「優希に迫られて断ったそうじゃないですか?」  参ったなとばかりに彼は自身の頬をポリポリと指で掻きました。 「確かに俺には好きな人がいる。だから、優希の想いに応えてやるわけにはいかなかったんだ」 「そうですか」  須賀くんには想い人がいるんですね。  狡い人なら気にせず優希を抱いたのでしょう。彼はそうすることを由とせず、誠実であろうとしている。  やっぱり、私の好きになった人は素敵な人です。ああ、この人が欲しいと思っている自分がいる。 「その好きな人ってどんな子なんですか?」 「そうだな、胸が大きいよ」  私の胸って大きいですよね。 「真面目で頑張ってる」  私は真面目ですし、色々頑張ってると思います。 「両親は人のためになる仕事をしているな」  父は弁護士、母は検事、世のため人のためですね。 「箱入りな所もあって世間ずれしていたりするよ」  確かに私にはそう言うところもなきにしもあらずですね。 「正直、一目惚れだった。好きなんだよ」 「須賀くんわた「婚約者の小蒔さんのことがさ」……ふぁい!?」  え?  婚約者?  はいいいぃ? 「待ってください、婚約者?」 「ああ、親が決めた許嫁って奴なんだが、俺も彼女もお互いのことを好いてるな」 「須賀くんが何時も私を見ていたのって……」 「ああ、彼女を思い出しちまってついな。やっぱ、バレてたのか、次からは気をつけるよ」 「あは、アハハハハッハッハ!」  ピエロじゃないですか。  覚悟とか全部空回りじゃないですか。 「の、和?」 「須賀くんの馬鹿ァ!!」  私はそう吐き捨てて逃げ出しました。  あの場にいることに堪えられません。勘違いして、自分が好かれていると思って口走ろうとした言葉。  無理です、ありえません、ふざけてます……須賀くんの馬鹿…… カンッ! -オマケ- 優希「タコス旨いじぇ」 和「男なんて知りません。IPS細胞で同性の子供だって可能になります」 咲「槓、槓、槓、槓、嶺上開花、四槓子、役満デス」 もう一個カンッ!

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