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『好きな人が出来た? それで、どうすれば良いのかね。ふふ、娘がそういう年頃になったのかと思うと感慨深いわ。恋愛は--』 「……はあ、母に相談したのは失敗だったのでしょうか」  恋は守りに入っては実らない。 「何もしないで好きになって欲しいとか、気持ちを察して欲しいなんて確かに烏滸がましい考えですよね」  彼の回りには幼馴染の咲さんや積極的な優希もいるわけですから、自分から動かないといけません。  染谷先輩は昼食を一緒にする時があれば得意な料理を振る舞ったりしていますし、部長も怪しい。  あの人は明らかに須賀くんに対する態度だけ違うと言うかおかしい。まるで好きな子に構って欲しいからと意地悪する子供と言えばしっくり来ます。 「周りが動いていく中で出遅れるわけにはいきません」  変な駆け引きなんて若い内は必要ない。 「下手な小細工なんかをするよりも素直に好意を伝えるですか……好き……うううっ、恥ずかしいですね……」  告白する。  彼が私に少しでも気があるなら、付き合える。特定な好きな人がいないなら押し切ってしまえば良い。  想いを伝えるのが一番だと言うのは分かります。他の誰かに取られてしまってからでは遅いと言うのも。 「臆してはいけませんね……守りに入ってはダメですよね……よし、思い立ったら吉日です……」  ああ、緊張します。  後はワンプッシュで彼の携帯に電話が繋がるのに、体が震えてしまいます。  失敗したらどうしようとか、振られたら明日から顔を合わせづらいとか、嫌という気持ち、ネガティブな考えが浮かんでくる。 「勇気を出すんです、ええ、一歩前へ、誰よりも早く……」  ああ、押してしまいました。  コールの音が一つ、二つ、心臓が早鐘を打って、音まで聞こえてきそうです。 『はい、もしもし?』 「す、しゅがくん……」  噛みました。  噛んじゃいました、穴があったら入りたいです。 『……おう、和から電話なんて珍しいな。どうしたんだ?』 「あのですね……」 『うん』 「その……」 『ああ』 「えっと……」 『…………』  何を躊躇しているんですか。  早く切り出して、気持ちを伝えるんでしょ、須賀くんも待ってますよ。 「…………好きです!!」  言いました。  言い切りました。 『えっ!? 今』  --プツン。  通話を切ってしまいました。  私のバカ、返事を聞く前に電話を切ってしまうとかアホですか、ヘタレですか、ダメじゃないですか。 「……で、電話、鳴ってますね」  須賀くんから折り返しの電話が掛かってきている。出なきゃいけないのに、怖い、怖くて仕方ありません。  もしも、振られたら。  それどころか本当は嫌いだったと言われたら。ああ、ダメです、ムリです、何で好きだとか言っちゃったんですか。 「電源落としてしまいましょうか」  もう寝ましょう。  明日、何事もなかったように振る舞って、須賀くんの聞き間違い、勘違いという流れに持っていきましょう。  ええ、それが良い、間違いありません。 ヘタレのどっち、翌日から逃げ回ろうと謀るも朝イチで家凸され捕まる。 カンッ!

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