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嫉妬深い部長と過ごす一ヶ月 美穂子編  「一日目 スーパー」 美穂子「あら?貴方は確か清澄高校の男子部員の、須賀君? ああ、良かった。間違えて呼んでしまわないかと...つい えっ?そんなこと気にしないで? 貴女みたいな綺麗な人に呼んでもらえるだけ光栄です...って もう、そんなこと言われてもなにも出ませんよ..../// 私がここで何をしているかって?備品の買い出しですよ。 部員達が目一杯麻雀に打ち込めるようにするのは当然です。 部長としてって...あら?なにか悪いこと言ってしまったかしら? いえ、その...なんていうか貴方が苦しそうに笑ってたから、つい なんでもない?...口を挟むのも図々しいかもしれないけど そんなに重苦しい顔をさせたまま別れるのも何か悪いわ そうだ!一旦荷物を置いて風越まで来てもらえないかしら? 今日と明日は練習お休みだからお話ししましょう。 何か悪い気がする?そんなこと気にしないで欲しいわ。 お友達だって最初は初対面の人同士でしょう? じゃあ、明日の午後四時、風越の正門前で待ってます」 「二日目」 美穂子「あっ。来てくれたのね。須賀君。 私ってば機械音痴だから、携帯電話を親が持たせてくれないの そんなバカなって顔しても、本当に音痴なの。 この前、文堂さんのおうちのパソコンを壊しちゃったし... え?そんなに機械音痴なら証拠を見せて下さい? あまりおすすめできないわ。買い換えるのにお金掛かるでしょう 一応、携帯電話は持っているけれど、一日に30分も使わないわ じゃあ、これ。って...須賀君の連絡先? こんな大切な個人情報を私なんかに教えちゃって良いの? 仲良くなって、お友達になれたらいいな?...嬉しいわ 私、あまりお友達がいないから...ありがとう、京太郎君 えっ?須賀って呼んで下さい?ダメよ? お友達はお互いを名前で呼ぶんだから。だから、ね? 私のこと、美穂子って呼んで下さい。京太郎君」 「六日目 夜」 美穂子「あっ、もしもし京太郎君...あっ、出てくれた。 こんばんは。美穂子です。どうしたんですかって? ふふっ京太郎君に買って貰った携帯電話の本があるでしょ? あの本とてもわかりやすかったわ。おかげで本当に助かったの 部員の皆とメールのやりとりも出来るようになったし アプリやカメラの使い方も凄く分かりやすかったの。 これからは皆に機械音痴なんて呼ばせたりしないわ。 それでね、お礼というかなんというか...なんだけど 今度の水曜日、私にPCの使い方を教えてくれないかしら? 本当なら駅前のPCスクールで自分で習うのが筋なんでしょうけど わざわざごめんなさいね。迷惑だったら気が向いたらでいいから 私は、その人見知りで...教わるなら、そのお友達が...って 本当に?部活は大丈夫なの?嬉しいわ、ありがとう京太郎君 じゃあ、また水曜日に会いましょう。おやすみなさい」 「十日目 夕方」 美穂子「ここのタブを開くを押して画像を挿入すると...出来たわ こんなことも出来たなんて、PCってこんなに楽しい物だったのね! なんだか今まで敬遠していたのが恥ずかしくなって来ちゃったわ ぐすっ、まさか、機械を壊さないで済む日が来るなんて これもみんな京太郎君のお陰ね。ありがとう えっ、まだまだ一杯教えてあげますよ?本当に? でも...ごめんなさいね。私これから大会で忙しくなって... 本当なら、貴方にお返しをしなければならないんだけど... 気にします。気にするなって言われたら余計に気になります そうだ!えいっ 男の子はこうして抱きしめられるとイチコロだって華菜が言ってたの ううっ...でも京太郎君の身体、凄く逞しくて...ドキドキする あのね...恥ずかしいんだけど、もっと抱きしめてもいいかしら? きゃっ。そ、そんな私の胸に耳を当てるなんて... あうっ...どっ、どこを触ってるんですか。そこお尻ですよ?! そ、そんなに顔を近づけないで。私の顔をあまり見ないで! だって、私の右目は...左目と色が違くて...気持ち悪い...し 格好良い?そんなことありません。だって皆気持ち悪いって 確かに両親は二人とも日本人ですけど、それとこれとはまた... 俺じゃダメですか?俺はアンタをいじめた奴とは違う? でも、まだ私達知り合ってから十日も経ってないのよ? それに京太郎君の前では隠してるけど、私、重い女よ? 一緒にいたら変わった人だって、噂されるかも知れないのよ? 俺は軽い男だから、美穂子さんくらいが丁度良いです...って 貴方も物好きな人ね。 ええ、私で良ければいくらでも求めて下さい。あなた」 「十二日目」 美穂子「なんでしょうかコーチ?え?私にクレーム? 清澄高校の麻雀部の男子生徒をたぶらかすのは止めろ? それは、清澄の部長さんからですか? そうですか。その人は他にはなんて言っていたんですか? ...お互いが困ったことになる前に、手を引けと? すいません。コーチ。私、手を引けと言われても引けません だって、私と彼は相思相愛、彼氏と彼女の間柄です。 学生の分際で粋がるんじゃない?私は真剣に考えてます。 風越のことだって、彼とのことだって一生懸命です。 そんなことで全国に行けるのか?行けます。 華菜でダメなら、私が大将になって天江衣を倒します。 前進しなければ勝機はありません。だから私は進みます。 私が勝ったら彼との仲を認めて下さい。 これは?清澄の部長さんの電話番号?分かりました。 コーチ、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」 「十五日目」 美穂子「初めまして、でよろしかったですよね?竹井さん 私が風越の部長の福路美穂子です。今日は風越にようこそ。 さ、そこの椅子に座って下さい。 さてと...遠回しなお話しは抜きにして本題に入りましょう。 竹井さんは私と彼を引き離したい。私は彼と別れたくない。 こんな所からお話しを始めましょうか さて、最初に私側から明確にしておきたいことがあります。 私は京太郎君を使って情報収集なんて考えてません。 言わせて頂くと、彼から私に告白してくれました。 その他にも清澄の麻雀部が今年出来たばかりだと言う事と、 なんだか強い三年生の選手が県大会優勝を狙っていること 加えて、京太郎君が一人部の中で浮いていることや 学生の部活と言うにはあまりにも雑用が多すぎるということ これが私が彼と出会ってから聞いた事です。 それらを踏まえた上で、敢えて聞かせて欲しい事があります 京太郎君のことを、貴女はなんだと思っているんですか?」 美穂子「そうですか。確かに私にも非がありましたね。 最後の夏に一花咲かせたいという想い、確かに理解できます。 その為に彼にしわ寄せが...というのはアレですけど...。 夏が終わった後に指導する約束ですか。そうですよね。 彼との間に了解があるのなら私はこれ以上なにも言えません。 私ったら...熱くなると周りが見えなくなるって言われてて 先程までの不躾な言い草、失礼でした。ごめんなさい。 ええ。お互い来週の県予選、優勝目指して頑張りましょう。 これで心置きなく目の前のことに打ち込む事ができますね。 あ、最後の質問をしてもいいですか? 一分程度ですぐに済む簡単な質問です。 久さんは、清澄の部員さんは京太郎君が好きなんですか? .....ふふっ、愚問でしたね。わかりました。 県予選が終わるまで軽率な行動は控えるつもりです。 元々、私に非があったことですので。はい。 それでは、また県予選が終わった頃にお会いしましょう」 「二十日目」 美穂子「さて、今日は県大会です。今回は私が大将を務めます。 大会に出る人も、応援に回っている人も応援をお願いします 一丸となって、全国への切符をつかみ取りましょう!! あ、それと文堂さんと深堀さんにはこの後お話しがあります 華菜?ええ、二人には簡単なアドバイスをするつもりよ。 じゃあ先鋒は任せたわよ華菜。図々しく大暴れしてきなさい。 ふふっ、期待してるわ....」 美穂子「さて、文堂さん。貴女の当たる相手なんだけど... そう、清澄の部長さんよ。そうね、かなり手強いわ。 おそらく華菜なら+収支で戻ってくるでしょう 多分次鋒戦でも風越が一位のリードを保っているはず。 そうなれば、必然的に中堅戦は風越VS残りの三校になる そして清澄の部長はくせ者。言いたいことは分かるわよね 中堅戦で振り込めない局面に陥ったときが必ず来るはずです その時場に三枚の安全牌が切れてたとしてもそれを捨ててはダメ 逆に良い手があったとしても、リーチを掛けてはダメ 降りるふりをしながら、こつこつ稼ぐつもりで打ってね。 深堀さんはその逆よ。ガンガンリーチを掛けていって頂戴。 もし私の読みと文堂さんの力が重なれば、きっと分かるはず 他の四校の内、必ず焦った顔をする人がいるでしょう その人の様子を注意深く見守れば、必ずチャンスは来るわ だから、私のことは気にしないで全力で打ってきなさい。 来年からは貴女達が風越の主力になるのだから... ええ。今日という日を一生の記念日にしてやりましょう」 「二十一日目」 美穂子「あ、京太郎君。お久しぶりね。寂しかったわ。 県大会予選、お互いに残念だったわね 一年生の宮永さんだったかしら?あと一歩で勝てたのに... 私も...私も全力で打ったけど...龍門淵には勝てなかった 凄く悔しくて...涙が、涙が止まらないの...! 皆を必ず全国に連れて行くのが私の仕事だったのに...! 勝つって、皆に誓ったのに...なにも、出来なかった!! ううん。私なんか強くないわ。まだまだ精進しないと... 京太郎君は夏休みの間はどうするの?長野にいるのかしら そう、ずっと長野にいるのね。私はどうか? その...言い辛いのだけれど、受験勉強があって... 狙っている国立の倍率が高くて、勉強量をふやさないと... だから、これからはちょっと会いづらくなるかも知れないわ 本当にごめんなさい。貴方に辛そうな顔をさせてしまうなんて そんな?!私を応援する?清澄の人達に悪いわよ。 自分の高校の応援ならともかく、他校の応援なんて... いいんです?どうせ行ったって何もすることなんかない? そんなこと言っちゃダメ!大切な仲間って言ってたじゃない? それは...でも、そこら辺の事情は部長さんから聞いたわ 大会の二週間前くらいに風越にって...ええ?! 部長さんの他に一年生の子にも告白されたぁ!!! だから辞めようにも辞められなくて困っている...? じゃあ、私は最初からただのかませ犬だったってこと? 京太郎君は、ただ、三人と向き合うのが怖くてたまらなくて お手軽そうな私に目をつけて、三人から逃げる方便にしたの? ...ごめんなさい。京太郎君だって辛かったのよね。 熱くなり過ぎちゃった。でも、私達少し距離を置きましょう 私のことを選んでくれたあなたの事は大好きよ。でも... ケジメをつけない限り私も素直に好きって言えないわ。 分かった。私にも手伝えることがあったら手伝うわ そんな泣きそうな顔しないで...男前が台無しよ? 全部が終わったら、キスより先のことをしましょう...?」 「二十四日目」 美穂子「あら?貴女は確か清澄の宮永咲さん、でしたよね? 風越までわざわざ大変だったでしょう?そうでもない? ま、好きな男の子が横取られるを黙ってみてられないわよね? 清澄の人って面白いくらい物わかりが早いのね。 貴女の所の部長さんも、凄く私のことを買ってくれたわ。 悪ぶっていて、ひねくれているようでも、面倒見が良くて その上、自分のやっていることの罪深さも自覚している お陰で私も軽率に動くことが出来なくなってしまったわ でも、それで彼の気持ちを知れたのだから安い物よ これは私の勘なんだけど...貴女かもう一人の一年生、 それか、竹井さんが京太郎君を無理矢理襲った。 私が考えつく限り最悪の展開だけど、どうかしら? 好きって言葉を楯に進退を迫られれば、彼は悩むはず 彼は早めに結論なんか出さずにずっと悩み続けてくれる。 幼馴染みは自分だけって歪んだ優越感に浸りたいんでしょう 黙らないわよ?ようやく私と同類に出会えたんですもの。 嬉しいに決まってるじゃない。全力で叩き潰せるんだもの 警告よ、宮永さん。これ以上彼に近寄らないで 貴女以上に私は彼に尽くせる。彼のことが大好き この次も見逃すけど、三度目は...絶対に来ないわ くれぐれも早まった真似はしないでね? もう既に分かると思うけど、あの程度じゃ済まさないから     ・・・・                誰だって毟られたまま人前には出たくないでしょ?」 「二十八日目」 美穂子「お久しぶりですね...上埜さん。その髪型似合ってますよ 今度、上埜さんの行きつけのお店に私も行ってみようかしら? ああ。そんなお店はありませんでしたね、私が毟ったんだから やってくれたわね、とは...さて、なんのことでしょう? ああ。先日のIH予選の前のお話しのことですか? そんなに目をつり上げないで下さいよ。世間話でしょう? 好きな男に悪い虫がつかないように牽制するのは当然ですよね? でも、悪いのは一体どっちなんでしょうかね? 私ですか?京太郎君ですか?それとも貴女ですか? 私は京太郎君が悪いと思っていますよ。勿論貴女もね。 人を見る目がなかった、雑用以外に使い道が無かった。 言い分としては大体こんなところでしょう でも、こうして貴女が来たと言うことは彼もいるはず。 私の左目はごまかせても、右目はごまかせませんからね さぁ、早く出して下さいよ、私の大切な恋人を... さぁ、さぁ!早く!」 「二十九日目」 美穂子「こんばんは京太郎君。夜遅くにどうしたのかしら? ああ、あの二人から私のした事を教えられたのね...。 私に友達がいない理由がこれで分かったでしょう? 私は好きになった人に憎しみを抱くと深く傷つけてしまうの。 生まれながらにして、私は嫉妬深い女だったと言えるわね 最初はパパに抱きついたママを傷つけてしまった。 その次はクラスで親しかった隣の席の男の子。 三番目の犠牲者はお隣の家に住むお兄さん。 中学生の時は、少しはこの衝動も治まっていた。けど... 貴方と出会って、告白された時...また蘇ってしまった。 貴方を好きな人達を汚い手を使って引きはがそうとした。 取り返しのつかないことをしてしまった自覚はあるの でも、あなたは最後まで私と一緒にいようとしてくれた! 私の汚い部分を隠してたとはいえ、それでも嬉しかった こんな女の重い想いをあなたは軽々と受け止めてくれた だけど...もう、止められないの、これ以上耐えられない。 覚えてる?IHが終わった次の日のこと 大学受験の話は嘘。理由なんかなんだってよかった。 京太郎君と離れられるのなら、なんだってよかったのよ。 私に向かって好きだって行ってくれた人を傷つけたくない。 好きだから...傷つけたくなかったから、だから逃げようとした 教えて欲しいの、京太郎君。 私のことをどう思っているのか、これから私をどうしたいのか あなたが私以外の女に想いを寄せられるのが苦痛なの! だから私を安心させて?ちゃんと私を見て? 答えて欲しいの。 どんなことを言われても受け止めるから... 別れろって言えば、私はあなたの元からいなくなるから...」 「○○日目」  今日は、私と彼が出会って結ばれてから四回目の記念日。  まだ彼は帰ってこないが、あと少しで帰ってくるだろう。  三人で住む2LDKのマンションの部屋も手狭になってきた。 ゆりかごの中で眠る我が子の頬を撫で、ミルクを吸わせる。  きょ~、た~、りょ~。    彼はその名前をろれつの回らない舌で発音する。  くりくりとした目の色は私と同じ青い瞳と赤い瞳。  私が愛した人との間に出来た最高の愛。もう一人の彼。 美穂子「ふふっ、もうすぐかしらね...」  時計の針が七時を指す。  それと同時に、彼が鍵を差し込み、部屋に入ってくる。 京太郎「ただいま。美穂子」 京太郎「おう、チビ。元気にしてたか?」  長いコートの雪を玄関で払い落とした京太郎さんは、ゆりかごで           父の帰りを待っていた息子の頭を優しく撫でる。 美穂子「メリークリスマス、京太郎さん」 京太郎「ああ。メリークリスマス。美穂子」  ジングルベルの曲を流しながら、私と彼は晩餐を楽しむ。  手の掛かった料理を作るのに時間は掛かったが、彼の笑顔は そんな私の疲れを一気に吹き飛ばしてくれる。 京太郎「あのさ...これ、プレゼントなんだけど」  顔を赤らめ、懐から取り出した小さな箱。  震える指をもつれさせながら、私はその箱の蓋を開ける。 京太郎「これからも、俺と一緒にいてくれないか?」  青い輝きが私の目の中に吸い込まれる。  それは私の瞳と同じ色の婚約指輪だった。 美穂子「はい...ずっと一緒です」 天国を追われた天使は、地に墜ちて悪魔になった。  一筋の宝石が私の頬を伝い、床に落ちる。  水晶のように美しくもあり、同時にガラスのように儚い涙。  天からこぼれ落ちたそれらは、さながら流れ星のようだった。  私と彼は天からその涙が地に落ちて乾ききるまでの刹那、 激しく愛し合い、燃え尽きる。  堕天使は報われることのない願いという名の『夢』だけを 空に残して地に墜ちて行く。  そして人は夢に寄り添い、儚さと共に眠り続ける。  美しいナニカが必ずしも醜いナニカに劣るとは限らない。  あの人の目が覚める時、そこに写る景色を私は知りたい。  fin
嫉妬深い部長と過ごす一ヶ月 美穂子編  「一日目 スーパー」 美穂子「あら?貴方は確か清澄高校の男子部員の、須賀君? ああ、良かった。間違えて呼んでしまわないかと...つい えっ?そんなこと気にしないで? 貴女みたいな綺麗な人に呼んでもらえるだけ光栄です...って もう、そんなこと言われてもなにも出ませんよ..../// 私がここで何をしているかって?備品の買い出しですよ。 部員達が目一杯麻雀に打ち込めるようにするのは当然です。 部長としてって...あら?なにか悪いこと言ってしまったかしら? いえ、その...なんていうか貴方が苦しそうに笑ってたから、つい なんでもない?...口を挟むのも図々しいかもしれないけど そんなに重苦しい顔をさせたまま別れるのも何か悪いわ そうだ!一旦荷物を置いて風越まで来てもらえないかしら? 今日と明日は練習お休みだからお話ししましょう。 何か悪い気がする?そんなこと気にしないで欲しいわ。 お友達だって最初は初対面の人同士でしょう? じゃあ、明日の午後四時、風越の正門前で待ってます」 「二日目」 美穂子「あっ。来てくれたのね。須賀君。 私ってば機械音痴だから、携帯電話を親が持たせてくれないの そんなバカなって顔しても、本当に音痴なの。 この前、文堂さんのおうちのパソコンを壊しちゃったし... え?そんなに機械音痴なら証拠を見せて下さい? あまりおすすめできないわ。買い換えるのにお金掛かるでしょう 一応、携帯電話は持っているけれど、一日に30分も使わないわ じゃあ、これ。って...須賀君の連絡先? こんな大切な個人情報を私なんかに教えちゃって良いの? 仲良くなって、お友達になれたらいいな?...嬉しいわ 私、あまりお友達がいないから...ありがとう、京太郎君 えっ?須賀って呼んで下さい?ダメよ? お友達はお互いを名前で呼ぶんだから。だから、ね? 私のこと、美穂子って呼んで下さい。京太郎君」 「六日目 夜」 美穂子「あっ、もしもし京太郎君...あっ、出てくれた。 こんばんは。美穂子です。どうしたんですかって? ふふっ京太郎君に買って貰った携帯電話の本があるでしょ? あの本とてもわかりやすかったわ。おかげで本当に助かったの 部員の皆とメールのやりとりも出来るようになったし アプリやカメラの使い方も凄く分かりやすかったの。 これからは皆に機械音痴なんて呼ばせたりしないわ。 それでね、お礼というかなんというか...なんだけど 今度の水曜日、私にPCの使い方を教えてくれないかしら? 本当なら駅前のPCスクールで自分で習うのが筋なんでしょうけど わざわざごめんなさいね。迷惑だったら気が向いたらでいいから 私は、その人見知りで...教わるなら、そのお友達が...って 本当に?部活は大丈夫なの?嬉しいわ、ありがとう京太郎君 じゃあ、また水曜日に会いましょう。おやすみなさい」 「十日目 夕方」 美穂子「ここのタブを開くを押して画像を挿入すると...出来たわ こんなことも出来たなんて、PCってこんなに楽しい物だったのね! なんだか今まで敬遠していたのが恥ずかしくなって来ちゃったわ ぐすっ、まさか、機械を壊さないで済む日が来るなんて これもみんな京太郎君のお陰ね。ありがとう えっ、まだまだ一杯教えてあげますよ?本当に? でも...ごめんなさいね。私これから大会で忙しくなって... 本当なら、貴方にお返しをしなければならないんだけど... 気にします。気にするなって言われたら余計に気になります そうだ!えいっ 男の子はこうして抱きしめられるとイチコロだって華菜が言ってたの ううっ...でも京太郎君の身体、凄く逞しくて...ドキドキする あのね...恥ずかしいんだけど、もっと抱きしめてもいいかしら? きゃっ。そ、そんな私の胸に耳を当てるなんて... あうっ...どっ、どこを触ってるんですか。そこお尻ですよ?! そ、そんなに顔を近づけないで。私の顔をあまり見ないで! だって、私の右目は...左目と色が違くて...気持ち悪い...し 格好良い?そんなことありません。だって皆気持ち悪いって 確かに両親は二人とも日本人ですけど、それとこれとはまた... 俺じゃダメですか?俺はアンタをいじめた奴とは違う? でも、まだ私達知り合ってから十日も経ってないのよ? それに京太郎君の前では隠してるけど、私、重い女よ? 一緒にいたら変わった人だって、噂されるかも知れないのよ? 俺は軽い男だから、美穂子さんくらいが丁度良いです...って 貴方も物好きな人ね。 ええ、私で良ければいくらでも求めて下さい。あなた」 「十二日目」 美穂子「なんでしょうかコーチ?え?私にクレーム? 清澄高校の麻雀部の男子生徒をたぶらかすのは止めろ? それは、清澄の部長さんからですか? そうですか。その人は他にはなんて言っていたんですか? ...お互いが困ったことになる前に、手を引けと? すいません。コーチ。私、手を引けと言われても引けません だって、私と彼は相思相愛、彼氏と彼女の間柄です。 学生の分際で粋がるんじゃない?私は真剣に考えてます。 風越のことだって、彼とのことだって一生懸命です。 そんなことで全国に行けるのか?行けます。 華菜でダメなら、私が大将になって天江衣を倒します。 前進しなければ勝機はありません。だから私は進みます。 私が勝ったら彼との仲を認めて下さい。 これは?清澄の部長さんの電話番号?分かりました。 コーチ、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」 「十五日目」 美穂子「初めまして、でよろしかったですよね?竹井さん 私が風越の部長の福路美穂子です。今日は風越にようこそ。 さ、そこの椅子に座って下さい。 さてと...遠回しなお話しは抜きにして本題に入りましょう。 竹井さんは私と彼を引き離したい。私は彼と別れたくない。 こんな所からお話しを始めましょうか さて、最初に私側から明確にしておきたいことがあります。 私は京太郎君を使って情報収集なんて考えてません。 言わせて頂くと、彼から私に告白してくれました。 その他にも清澄の麻雀部が今年出来たばかりだと言う事と、 なんだか強い三年生の選手が県大会優勝を狙っていること 加えて、京太郎君が一人部の中で浮いていることや 学生の部活と言うにはあまりにも雑用が多すぎるということ これが私が彼と出会ってから聞いた事です。 それらを踏まえた上で、敢えて聞かせて欲しい事があります 京太郎君のことを、貴女はなんだと思っているんですか?」 美穂子「そうですか。確かに私にも非がありましたね。 最後の夏に一花咲かせたいという想い、確かに理解できます。 その為に彼にしわ寄せが...というのはアレですけど...。 夏が終わった後に指導する約束ですか。そうですよね。 彼との間に了解があるのなら私はこれ以上なにも言えません。 私ったら...熱くなると周りが見えなくなるって言われてて 先程までの不躾な言い草、失礼でした。ごめんなさい。 ええ。お互い来週の県予選、優勝目指して頑張りましょう。 これで心置きなく目の前のことに打ち込む事ができますね。 あ、最後の質問をしてもいいですか? 一分程度ですぐに済む簡単な質問です。 久さんは、清澄の部員さんは京太郎君が好きなんですか? .....ふふっ、愚問でしたね。わかりました。 県予選が終わるまで軽率な行動は控えるつもりです。 元々、私に非があったことですので。はい。 それでは、また県予選が終わった頃にお会いしましょう」 「二十日目」 美穂子「さて、今日は県大会です。今回は私が大将を務めます。 大会に出る人も、応援に回っている人も応援をお願いします 一丸となって、全国への切符をつかみ取りましょう!! あ、それと文堂さんと深堀さんにはこの後お話しがあります 華菜?ええ、二人には簡単なアドバイスをするつもりよ。 じゃあ先鋒は任せたわよ華菜。図々しく大暴れしてきなさい。 ふふっ、期待してるわ....」 美穂子「さて、文堂さん。貴女の当たる相手なんだけど... そう、清澄の部長さんよ。そうね、かなり手強いわ。 おそらく華菜なら+収支で戻ってくるでしょう 多分次鋒戦でも風越が一位のリードを保っているはず。 そうなれば、必然的に中堅戦は風越VS残りの三校になる そして清澄の部長はくせ者。言いたいことは分かるわよね 中堅戦で振り込めない局面に陥ったときが必ず来るはずです その時場に三枚の安全牌が切れてたとしてもそれを捨ててはダメ 逆に良い手があったとしても、リーチを掛けてはダメ 降りるふりをしながら、こつこつ稼ぐつもりで打ってね。 深堀さんはその逆よ。ガンガンリーチを掛けていって頂戴。 もし私の読みと文堂さんの力が重なれば、きっと分かるはず 他の四校の内、必ず焦った顔をする人がいるでしょう その人の様子を注意深く見守れば、必ずチャンスは来るわ だから、私のことは気にしないで全力で打ってきなさい。 来年からは貴女達が風越の主力になるのだから... ええ。今日という日を一生の記念日にしてやりましょう」 「二十一日目」 美穂子「あ、京太郎君。お久しぶりね。寂しかったわ。 県大会予選、お互いに残念だったわね 一年生の宮永さんだったかしら?あと一歩で勝てたのに... 私も...私も全力で打ったけど...龍門渕には勝てなかった 凄く悔しくて...涙が、涙が止まらないの...! 皆を必ず全国に連れて行くのが私の仕事だったのに...! 勝つって、皆に誓ったのに...なにも、出来なかった!! ううん。私なんか強くないわ。まだまだ精進しないと... 京太郎君は夏休みの間はどうするの?長野にいるのかしら そう、ずっと長野にいるのね。私はどうか? その...言い辛いのだけれど、受験勉強があって... 狙っている国立の倍率が高くて、勉強量をふやさないと... だから、これからはちょっと会いづらくなるかも知れないわ 本当にごめんなさい。貴方に辛そうな顔をさせてしまうなんて そんな?!私を応援する?清澄の人達に悪いわよ。 自分の高校の応援ならともかく、他校の応援なんて... いいんです?どうせ行ったって何もすることなんかない? そんなこと言っちゃダメ!大切な仲間って言ってたじゃない? それは...でも、そこら辺の事情は部長さんから聞いたわ 大会の二週間前くらいに風越にって...ええ?! 部長さんの他に一年生の子にも告白されたぁ!!! だから辞めようにも辞められなくて困っている...? じゃあ、私は最初からただのかませ犬だったってこと? 京太郎君は、ただ、三人と向き合うのが怖くてたまらなくて お手軽そうな私に目をつけて、三人から逃げる方便にしたの? ...ごめんなさい。京太郎君だって辛かったのよね。 熱くなり過ぎちゃった。でも、私達少し距離を置きましょう 私のことを選んでくれたあなたの事は大好きよ。でも... ケジメをつけない限り私も素直に好きって言えないわ。 分かった。私にも手伝えることがあったら手伝うわ そんな泣きそうな顔しないで...男前が台無しよ? 全部が終わったら、キスより先のことをしましょう...?」 「二十四日目」 美穂子「あら?貴女は確か清澄の宮永咲さん、でしたよね? 風越までわざわざ大変だったでしょう?そうでもない? ま、好きな男の子が横取られるを黙ってみてられないわよね? 清澄の人って面白いくらい物わかりが早いのね。 貴女の所の部長さんも、凄く私のことを買ってくれたわ。 悪ぶっていて、ひねくれているようでも、面倒見が良くて その上、自分のやっていることの罪深さも自覚している お陰で私も軽率に動くことが出来なくなってしまったわ でも、それで彼の気持ちを知れたのだから安い物よ これは私の勘なんだけど...貴女かもう一人の一年生、 それか、竹井さんが京太郎君を無理矢理襲った。 私が考えつく限り最悪の展開だけど、どうかしら? 好きって言葉を楯に進退を迫られれば、彼は悩むはず 彼は早めに結論なんか出さずにずっと悩み続けてくれる。 幼馴染みは自分だけって歪んだ優越感に浸りたいんでしょう 黙らないわよ?ようやく私と同類に出会えたんですもの。 嬉しいに決まってるじゃない。全力で叩き潰せるんだもの 警告よ、宮永さん。これ以上彼に近寄らないで 貴女以上に私は彼に尽くせる。彼のことが大好き この次も見逃すけど、三度目は...絶対に来ないわ くれぐれも早まった真似はしないでね? もう既に分かると思うけど、あの程度じゃ済まさないから     ・・・・                誰だって毟られたまま人前には出たくないでしょ?」 「二十八日目」 美穂子「お久しぶりですね...上埜さん。その髪型似合ってますよ 今度、上埜さんの行きつけのお店に私も行ってみようかしら? ああ。そんなお店はありませんでしたね、私が毟ったんだから やってくれたわね、とは...さて、なんのことでしょう? ああ。先日のIH予選の前のお話しのことですか? そんなに目をつり上げないで下さいよ。世間話でしょう? 好きな男に悪い虫がつかないように牽制するのは当然ですよね? でも、悪いのは一体どっちなんでしょうかね? 私ですか?京太郎君ですか?それとも貴女ですか? 私は京太郎君が悪いと思っていますよ。勿論貴女もね。 人を見る目がなかった、雑用以外に使い道が無かった。 言い分としては大体こんなところでしょう でも、こうして貴女が来たと言うことは彼もいるはず。 私の左目はごまかせても、右目はごまかせませんからね さぁ、早く出して下さいよ、私の大切な恋人を... さぁ、さぁ!早く!」 「二十九日目」 美穂子「こんばんは京太郎君。夜遅くにどうしたのかしら? ああ、あの二人から私のした事を教えられたのね...。 私に友達がいない理由がこれで分かったでしょう? 私は好きになった人に憎しみを抱くと深く傷つけてしまうの。 生まれながらにして、私は嫉妬深い女だったと言えるわね 最初はパパに抱きついたママを傷つけてしまった。 その次はクラスで親しかった隣の席の男の子。 三番目の犠牲者はお隣の家に住むお兄さん。 中学生の時は、少しはこの衝動も治まっていた。けど... 貴方と出会って、告白された時...また蘇ってしまった。 貴方を好きな人達を汚い手を使って引きはがそうとした。 取り返しのつかないことをしてしまった自覚はあるの でも、あなたは最後まで私と一緒にいようとしてくれた! 私の汚い部分を隠してたとはいえ、それでも嬉しかった こんな女の重い想いをあなたは軽々と受け止めてくれた だけど...もう、止められないの、これ以上耐えられない。 覚えてる?IHが終わった次の日のこと 大学受験の話は嘘。理由なんかなんだってよかった。 京太郎君と離れられるのなら、なんだってよかったのよ。 私に向かって好きだって行ってくれた人を傷つけたくない。 好きだから...傷つけたくなかったから、だから逃げようとした 教えて欲しいの、京太郎君。 私のことをどう思っているのか、これから私をどうしたいのか あなたが私以外の女に想いを寄せられるのが苦痛なの! だから私を安心させて?ちゃんと私を見て? 答えて欲しいの。 どんなことを言われても受け止めるから... 別れろって言えば、私はあなたの元からいなくなるから...」 「○○日目」  今日は、私と彼が出会って結ばれてから四回目の記念日。  まだ彼は帰ってこないが、あと少しで帰ってくるだろう。  三人で住む2LDKのマンションの部屋も手狭になってきた。 ゆりかごの中で眠る我が子の頬を撫で、ミルクを吸わせる。  きょ~、た~、りょ~。    彼はその名前をろれつの回らない舌で発音する。  くりくりとした目の色は私と同じ青い瞳と赤い瞳。  私が愛した人との間に出来た最高の愛。もう一人の彼。 美穂子「ふふっ、もうすぐかしらね...」  時計の針が七時を指す。  それと同時に、彼が鍵を差し込み、部屋に入ってくる。 京太郎「ただいま。美穂子」 京太郎「おう、チビ。元気にしてたか?」  長いコートの雪を玄関で払い落とした京太郎さんは、ゆりかごで           父の帰りを待っていた息子の頭を優しく撫でる。 美穂子「メリークリスマス、京太郎さん」 京太郎「ああ。メリークリスマス。美穂子」  ジングルベルの曲を流しながら、私と彼は晩餐を楽しむ。  手の掛かった料理を作るのに時間は掛かったが、彼の笑顔は そんな私の疲れを一気に吹き飛ばしてくれる。 京太郎「あのさ...これ、プレゼントなんだけど」  顔を赤らめ、懐から取り出した小さな箱。  震える指をもつれさせながら、私はその箱の蓋を開ける。 京太郎「これからも、俺と一緒にいてくれないか?」  青い輝きが私の目の中に吸い込まれる。  それは私の瞳と同じ色の婚約指輪だった。 美穂子「はい...ずっと一緒です」 天国を追われた天使は、地に墜ちて悪魔になった。  一筋の宝石が私の頬を伝い、床に落ちる。  水晶のように美しくもあり、同時にガラスのように儚い涙。  天からこぼれ落ちたそれらは、さながら流れ星のようだった。  私と彼は天からその涙が地に落ちて乾ききるまでの刹那、 激しく愛し合い、燃え尽きる。  堕天使は報われることのない願いという名の『夢』だけを 空に残して地に墜ちて行く。  そして人は夢に寄り添い、儚さと共に眠り続ける。  美しいナニカが必ずしも醜いナニカに劣るとは限らない。  あの人の目が覚める時、そこに写る景色を私は知りたい。  fin

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