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~初夏のある日のこと~
ハギヨシ「失礼、須賀京太郎さんですね?」
京太郎「はい、そうですけど」
ハギヨシ「では、こちらの書類にサインをお願いします」
京太郎「あ、はいはい」
ハギヨシ「…」ワクワク
京太郎「…って、いきなりこんな怪しげな書類にサインするわけないでしょう!」
ハギヨシ「チッ」
京太郎「舌打ちしたよこの人!」
ハギヨシ「惜しかったですね」
京太郎「惜しくないですよ!つか何語ですかこれ?こんな字読めませんよ!」
ハギヨシ「地獄語です」
京太郎「は…?」
ハギヨシ「このセカイを守るために、あなたに協力して欲しいのです」
京太郎「あ、なんだ、変な人か」スタスタ
ハギヨシ「違います!」チョットマッテ!
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京太郎「駆け魂?」
ハギヨシ「左様でございます」
京太郎「というか、あなた何者?」
ハギヨシ「あくまで執事ですが、名は…長いのでハギヨシとでもお呼び下さい」
京太郎「で、駆け魂って?」
ハギヨシ「駆け魂とは、地獄から脱走した邪悪な悪魔の魂であり、人の心のスキマに入り込む性質があります」
ハギヨシ「そして、負の感情を糧として成長し、転生して身体を取り戻そうとしています」
ハギヨシ「それを阻止するためには、駆け魂を心のスキマから追い出し、捕える必要があります」
京太郎「説明台詞乙!で、俺に協力者になって欲しいと…」
ハギヨシ「その通りでございます」
京太郎「そんな世迷言…」
ハギヨシ「信じられませんか?」
京太郎「あんたが空を飛んだり透明になったりしてなければ、信じなかったでしょうね…」
ハギヨシ「話が早くて助かります」
京太郎「でも、俺には荷が重すぎます」
京太郎「…悪いけど、他を当たってください」
ハギヨシ「…」
京太郎「じゃ、失礼します」
ハギヨシ「…」
ハギヨシ「…宮永咲」
京太郎「…!」
ハギヨシ「知っていますね?」
京太郎「…」
ハギヨシ「先日、彼女の中に駆け魂を発見しました」
京太郎「…」
ハギヨシ「…」
京太郎「放っておいたら、どうなるんですか?」
ハギヨシ「駆け魂が成長し、ある程度まで成長すると宿主を乗っ取ってしまいます」
ハギヨシ「そうなると討伐隊が組まれ、宿主ごと捕獲する事になります」
ハギヨシ「端的に言うと」
ハギヨシ「宿主…宮永咲は」
ハギヨシ「死ぬことになります」
京太郎「…っ!」
ハギヨシ「…」
京太郎「…」
ハギヨシ「やっていただけるでしょうか?」
京太郎「…やるよ」
ハギヨシ「宜しいのですか?」
京太郎「やらないと、咲が死ぬんですよね?」
ハギヨシ「はい」
京太郎「なら、やるしかないじゃないですか」
ハギヨシ「良い返事をいただき、ありがとうございます」
京太郎「よく言うよ…」
ハギヨシ「では、契約を…っと、その前に一つ」
京太郎「なんですか?」
ハギヨシ「契約を達成できない場合、あるいは破棄しようとした場合」
ハギヨシ「契約不履行のペナルティにより、首が飛びます」
京太郎「えっ」
京太郎「それって、文字通りの意味で…?」
ハギヨシ「はい、端的に言うと死にます」
京太郎「…」
ハギヨシ「では、最終確認です。契約していただけますか?」
京太郎「そんな条件聞いたら、誰も受けないですよ」
ハギヨシ「そうですか…。まあ、誰にも責められは…」
京太郎「だから俺がやるしかないでしょう」
ハギヨシ「…!」
京太郎「友人の命がかかっている以上」
京太郎「投げ出す気も失敗する気もありませんよ」
ハギヨシ「…グッドです!」
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京太郎「この首輪が契約の証ってとこですか?」
ハギヨシ「はい、契約が達成されれば、首輪は外されますので」
京太郎(もう後戻りは出来ない…か)
京太郎「で、具体的には何をすれば?」
ハギヨシ「対象、宮永咲の心のスキマを埋めていただきたい」
京太郎「はぁ、とは言っても、あいつ別に悩んでる風には見えないんだけど…」
ハギヨシ「さあ?そういった感情の機微は、私には分かりませんので」
京太郎「とりあえず、暫く様子を見るしかないかな」
ハギヨシ「では、私は情報収集を行いますので」
京太郎「お願いします」
ハギヨシ「はい」
京太郎(とりあえず、今日は帰るか…)
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~須賀家~
京太郎「ただいまー」
京母「おかえりー」
ハギヨシ「お帰りなさいませ」
京太郎「」ズコー!
京太郎「…」
京太郎「…」チョイチョイ
ハギヨシ「???」
京太郎「ちょ、ちょっと!なんでハギヨシさんが居るの!」ヒソヒソ
ハギヨシ「協力者とは原則的に一緒に行動する必要がありまして」ヒソヒソ
京太郎「聞いて無いよ!」ヒソヒソ
ハギヨシ「ふふ、そうでしたっけ?」ヒソヒソ
京太郎「あのなぁ…」ヒソヒソ
京母「あら、内緒話?」
京太郎「いや、なんでもない…」
京母「ところで京太郎、あなた兄弟が居たのね」
京太郎「は?はぁっ?」
京母「生き別れの兄弟が居たなんて…」ウルウル
京太郎「いや、何言ってんの…?」
ハギヨシ「聞くも涙、語るも涙」ウルウル
京太郎「あんたも何言ってるの!」
京母「もー、冗談通じないんだから」
ハギヨシ「ですね」
京太郎(頭痛ぇ…)
京太郎「あー冗談だったんだなー。良かった良かったー…」
京母「そりゃそうよ、だって産んだ覚えなんてないもの」アハハ
京母「ていうか、その…兄弟ってアレでしょ…?」
京太郎「えっ」
京母「大丈夫よ?お母さんそういうのには理解があるほうだから…」ポッ
京太郎「いや、違っ…」
ハギヨシ「お義母様…」ポッ
京太郎「おいぃ?」
京父「京太郎、ほどほどにな…」ポッ
京太郎「うわぁぁぁ!父さんまで!」
京太郎(だめだこの家族…腐ってやがる…)
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~数日後~
ハギヨシ「京太郎、起きてください。遅刻しますよ」
京太郎「ん~…」
ハギヨシ「朝食、出来ていますよ」
京太郎「ふぁ~い…」
……
京太郎「おは~…」
京母「ハギヨシくんが来てくれて、お母さん助かっちゃうわ」
京父「この味噌汁も絶品だな!」←ステマ
ハギヨシ「ありがとうございます」
京太郎(なんで普通に馴染んでんだよ…)
京父「ははは、良いお嫁さんになれるぞ!」
ハギヨシ「お義父様…」ポッ
京太郎(もう、つっこむ気も起きない…)