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それは多分、遠い遠い夢物語。 私の中ではっきり残っているけれど、ありえない、空想上の事。 『京さん。またいつか、私が誰にも見つけて貰えない存在に生まれたとしても私を見つけてくれるっすか……?』 『あぁ。何度だって、何回だってモモを見つけてやる。絶対にな』 前世なのか、別世界なのか、はたまた他の何処かなのか。 何れにせよこんなのはただの妄想と片付けられても仕方がない。 それでも私は物心ついたころにはそんな約束を思い出し、こうしてここまで私を見つけてくれる人を待ち続けた。 加治木先輩をはじめとする鶴賀の人達に出会った。 そんなオカルトありえませんとちゃんと私を見たおっぱいさんに出会った。 それで充分、満足だって。 そう思ってた。 でも見つけてしまった。 桃「あ、あの……」 京太郎「ん?」 柔らかそうな金髪の髪の毛。 私よりも幾分も大きな背。 振り返り際の疑問符の声でさえ、聞いた瞬間涙が出そうになった。 この人だ。 私がずっと待ち続けた人。 思わず抱きつきそうになったが、瞬間、すっと熱が冷める。 この人は私を覚えているんだろうか。 もし覚えていないのならこれは私の妄想だ。 どこか遠い夢物語の妄想の中の人がたまたま現実で見つかっただけ。 そうでなくたって、仮にこれが本当にどこかで交わした約束だとしても、彼が覚えている保証はない、と。 桃「私のこと、覚えてるっすか……?」 恐る恐る聞いてみる。 答えを聞くのが恐ろしい。 それでも確かめずにはいられない。 京太郎「えっと………鶴賀の東横さん……だっけ?和と戦ってた」 桃「……っ」 『東横さん』 あぁ。この人は覚えてないんだ。 一瞬、世界から色が消えたかのような感覚に見舞われた。 彼との距離が遠く感じる。 妄想か、はたまた覚えていないのか。 どちらにせよ私の中の約束はこの世界では叶わない。 酷く絶望したーーーーーーその時だった。 京太郎「……なんてな。ごめんなモモ。見つけるのに少し手間取っちまった」 モモ「……ぇ?」 ぽんっ、と頭に手が乗せられる。 ゴツゴツとした大きくて、温かい手。 初めてのはずなのに酷く懐かしい。 京太郎「あ、あれ……?もしかして違う……?ご、ごめんなさい!俺ちょっと勘違いして!もしかして俺の妄想だったのか……?いやでもこんなに一致してるってのに……」ブツブツ モモ「京……さん……」 京太郎「へ?」 モモ「京さんっ!!」ダキッ 京太郎「うおっ!?」 モモ「間違いじゃないっす。合ってるっす。モモっすよ。あなたをずっと待ち続けた、見つけてくれるって約束したモモっす!」 京太郎「よ、よかった~。俺てっきりあの約束覚えてるのが俺だけだと……」 モモ「そんなわけないっす。ずっと前から思い出してたっすよ。あなたがいつか見つけてくれるって。でも遅いっすよ!しかも東横さんだなんて酷いじゃないっすか!」 京太郎「ごめんな。でもちゃんと見つけねただろ?惚けたふりはしても、声かけられて驚かなかった」 桃「あ……」 そういえばそうだ。 あの時は緊張と恐怖で気が付かなかったけど、確かにあの時、京さんは驚くことなく私に反応した。 つまりもうあの時点で約束は果たされていたのだ。 覚えていても覚えていなくても、この人はちゃんと私を見つけてくれたんだ。 京太郎「高校まで時間掛かったけどさ、これからはちゃんとモモに時間をかけていく」ギュッ 私を抱きとめたまま、京さんは腕の力を強める。 耳元で話しかけられて少し擽ったいけれど、その言葉はとても甘くて今にも蕩けてしまいそうだ。 京太郎「だからモモ。もしよろしければ俺と付き合ってください」 涙が止まらない。 嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて。 ぽろぽろと溢れる涙が京さんの服を濡らしていく。 この腕の中の温もりは私がずっと待ち続けたもので、これからはまたこの感覚を味わえるんだ。 そう思うと、余計に涙が止まらなくなってしまった。 それでも今だけは。 どんなに涙が出ていたとしても、この幸せを噛み締めるために言おう。 モモ「はいっす!」ニコッ 溢れる涙のままの私の精一杯の笑顔は一体京さんにはどう映っているのどろうか。 そんなことを考えながら私は唇をそっと京さんに重ねていった。 カンッ

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