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「「「はあ」」」  洒落た個室に妙齢の女性が三人。  アルコールの満ちたグラスを傾け、ほんのりと上気しながら息を吐いた。 「結婚したい……」  鬼すら裸足で逃げ出す、対局相手を圧し潰す魔王宮永咲(28)は願望を口にする。  当然、男の影一つないポンコツである。 「私もだじぇ……」  追随するは一流のプロ雀士、稼いだ賞金、年俸、報酬を注ぎ込んでタコス専門会社を立ち上げた片岡優希(28)独身。  女性プロのジンクスから彼女もまた逃げられない。 「二人はまだ良いじゃないですか。私なんて父が鬱陶しいくらい見合いを勧めててくるんですよ……はあ、録な相手がいませんし……」  大学卒業後、夢だった教職に就いたは良いがもう一つの夢が叶う素振りは少しもない原村和(28)。  高過ぎる学歴、出会いのない職場、恵まれた容姿とお堅い性格に男は避ける。 「清澄の麻雀部でまだ結婚していないのって私たちだけらしいよ……」 「後輩にも抜かれ、既に子供までいる奴もいるんだからやってられないじょ……」 「プロへ進まなかった友人の中では私だけが独り身なんですよね……」  アラサーは嘆く。  半ば自業自得な現状を悲しまずにはいられない。 「京ちゃん……」  寂寥の中で咲は何時だって幼馴染みを思い出す。あの時、もしかしたら、あり得たかもしれない幸福を脳裏に描くのだ。  されど、現実は孤独なマイホーム。  麻雀にのめり込み、気づけば彼との距離が大きく離れていた。 「優希様の何が不満なんだじぇ……」  積極的なアピール、構ってくれと甘えたり、大胆なエロスで誘惑したのに一度も京太郎は振り向かなかった。  不満が苛立ち、ストレスは横暴に、負の螺旋にタコス厨。  もしも、彼女がタコスからタコチャーにワープ進化していたならば、現実は無情である。 「逃した魚は大きかったですね……」  魅惑の豊満な身体、麻雀部の中では比較的に初心者である京太郎を気にかけていた優しさが彼を虜にしていた。  そして告白もされたが和は振った。  最も親しい異性の友人、嫌っていたわけではない。しかし、彼女は親友の想いを知っていたから。  以後、和の異性に対する基準は京太郎である。彼を超える男など早々に現れはしない。 「「「はあ」」」 「京ちゃんは幸せそうだよね……」 「のどちゃんに負けないおっぱいだもんな……」 「入り婿でしたっけ……」  助けた巫女に連れられて、霧島神境へ来て見れば、大きなおもちの美しさ。姫様の歓待に、六女仙に絆されて、気づけば外堀埋められた。 「大学を出たら直ぐに結婚したよね。子供も既に三人いて、今、奥さんは双子を妊娠しているそうだよ」 「犬め、おっぱいの大きな嫁さんでお金やお手伝いさんにも困っていないからって盛り過ぎだじぇ」 「それで霧島神社を継ぐべく修行中らしいですけど、稀に意味のわからないオカルトの話をしてくるんですよね……そんなのあるわけないのに」  深く息を吐き、アラサー三女は酒を煽る。この苦味が、人生の苦難を示すような苦さに身を委ねなければやっていられないのである。  一方、須賀京太郎改め神代京太郎は幼く可愛い子供たちと嫁さんに囲まれながら杯を傾ける。  手厳しい義父から手酌をされ、酒の旨さと幸せに今宵も酔いしれていくのであった。 カンッ!

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