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「んー……相変わらず見えない」 「んぁ? ……あぁ、モモのことか」 「居るの?」 「今は居ない。用事済ましたらくるってよ」 昼ご飯を食べる為に食堂で京太郎が座っていれば、前に友人の高久田が聞いてくる。 目を細め、京太郎の脇に注目するも桃子が見えないのか首を傾げるばかりだ。 そんな高久田に京太郎は、苦笑しつつも桃子は用事があって来てない事を伝えた。 「モモに用事か?」 「いや……モモちゃんよりお前にかな」 「俺に?」 食事をしていた京太郎はその言葉に不思議そうに眉を顰める。 桃子の所在を聞いてたのでてっきり桃子に用事がある物だと思っていたのだ。 しかし、高久田はそんな京太郎を意に返さず、顔を近づけ囁くように言葉を発する。 「お前のこと……『また』噂になってんぞ」 「あぁー……そういうことね」 「そういうことって……お前な」 その言葉に京太郎は納得し、何でもないように食事に戻る。 そんな態度に高久田は溜息を付いて、親友の無頓着さに呆れた。 「自分の事だぞ?」 「別にいいさ……『変人扱い』なんて慣れたよ」 「慣れるなよ」 微妙な表情でそういうも京太郎は相変わらずだ。 特に思う事無く当たり前だと言わんばかりに受け入れた。 「『須賀の奴が昨日も一人で隣に話しかけながら帰っていた』だってよ」 「何時もの事だな!」 高久田が聞いたばかりの噂話を伝えると京太郎はいい笑顔でスプーンを親指代わりに上げる。 京太郎の噂は最近始まった事ではない。 大学入学時に桃子に出会い、彼女と友達になってからずっと続いている。 元々高校の時に知り合い程度の付き合いはしていたため、すんなりと彼女と友達になった。 京太郎が桃子の胸に注目し、彼女のステルスを見破れるのも大きい。 そんな京太郎と桃子であったが、桃子のステルス体質のせいで京太郎には変な噂が飛び交う。 やれ、あいつは一人で喋っている。 やれ、また一つの机に二人分の食事を置いている。 やれ、一人で……。 桃子を見えない人が多いためか、そんな噂が多い。 それでも京太郎は特に気にせず、桃子との付き合いを楽しんでいた。 「別にモモちゃんとの付き合いをやめろというわけじゃないぜ?」 「おう」 「せめて人の目に気を使えって言いたいんだ」 「おう、無理だな」 「……そう言うと思った」 高久田は高校のときからの親友を心配するも、無駄かと椅子に深く沈みこむ。 そんな彼を見て京太郎も自分を心配してくれている親友に感謝しつつも変えようとは思わなかった。 「……あいつを見える奴は少ないからな」 「……そうだな」 「今まで普通の学園生活を味わった事がないんだ」 そう言って思い出すのは桃子から聞いた思い出話。 鶴賀に居た時は、自分を見つけてくれる先輩が居た。 他の高校で自分と友達になってくれた咲達が居た。 しかしだ、先輩は先輩。咲達は別の学校。 同年代で同じ学校の友達が今まで居なかった。 「だからさ……最後の学校生活ぐらい、普通に同級生と青春を過ごさせてやりたいんだ」 「はぁ……お前はいいのかよ」 「いいよ。俺にはお前が居る。理解してくれる友人が一人居るだけでいい」 「っ……!」 「何より周りの評価なんて気になんねーよ。俺の目にはモモが見えている、それだけで十分だろ」 それだけを伝えきれば、高久田は顔を真っ赤にさせそっぽ向く。 この友人のこういうところが本当に苦手であるが、同時に本当にいい奴だとお人よしだと思い、笑う。 「しょうがねーな、俺がある程度フォローしとくわ」 「無茶すんなよ?」 暫くし、高久田が胸を張り答え、それに対して京太郎は苦笑した。 「それにしても……モモちゃん遅いな?」 「そうだな? 何処まで行ったやら……」 そんな日常的なやり取りをしつつ、二人は遅れている話題の友人を待つのであった。 (出れるわけないっすよ!) そんな二人を近くの柱の影から桃子がツッコンだ。 用事を済ませ、戻ってくれば二人が自分の話題を出していた為、隠れていたのだがこうなるとは思っても見なかった。 桃子は先ほどの話を聞いて真っ赤に染まった頬を両手で触り、激しく鳴る胸の鼓動が収まるの待つ。 嬉しさと喜びと幸せが混じったむず痒い感情がどうしようもなく、体を這いずり回る。 そんな感情に身をゆだねながら、これからどうしようと桃子は一人で悩んだ。 カンッ!

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