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京淡(25) もしも二人が血のつながっている姉弟だったら?後編 <一年後> 札幌某病院 10月 淡「いらっしゃ~い」 竜華「淡ちゃん、お久しぶりやね~。元気してた?」 淡「うん。絶好調だよ」 竜華「京太郎君、今お仕事なん?」 淡「不動産の営業マンで一週間に一回くらいしか帰ってこないんだ」 竜華「ほえ~、大変やね」 淡「大変だよ。でも、ううん。後悔なんかしてない」 竜華「...あのな、言いにくいことなんやけどな」 竜華「今からでも遅くない、赤ちゃんのことは考え直すんや」 淡「考え直さないよ。もう、産む決心はつけた」 竜華「でも!」 淡「生まれてくる子供は絶対に私とキョータローが幸せにする」 竜華「あまりにも非現実的すぎるやろ!!」 竜華「いつかばれるときが絶対来てしまう!必ずや」 竜華「そしたら今度どこに逃げるつもりやねん!」 竜華「アメリカ?ヨーロッパ?それともオーストラリア?」 竜華「お願いや淡ちゃん!アンタもう死相が出とるで?!」 淡「りゅーか。もし、私がね...死んじゃったら」 淡「私の子供の面倒を...お願い」 竜華「...できるわけないやろ」 竜華「京太郎君はどうするんや!後追い自殺させるんか?」 淡「しないでって言ってるんだけどね...その可能性は高いかも」 竜華「...」 竜華「分かった。もしアンタら二人が死んだら」 竜華「ウチと怜が責任もって一人前に育てたる!」 淡「ありがと...それ聞いたら凄く気が楽になった」 淡「りゅーかは優しいね...ママみたい」 竜華「淡ちゃん、アカンで!そんな弱気でどうするんや」 竜華「もっと楽しいことを考えな!な?な?」 淡「大丈夫だよ。私はまだ死なない」 淡「子供の名前も考えた...から」 ピピピッ!!ピピピッ!!! 医者「まずい!」 医者「すぐに手術の準備をするんだ」 竜華「センセ!淡ちゃんはどうなってまうんですか!」 医者「すぐに旦那さんに連絡してください!」 医者「母子共々危険な状態です!早く」 竜華「分かりました。淡ちゃん!京太郎が来るまで辛抱な」 淡「........」 竜華「何黙ってんねん!なぁ?!目ェ開けぇや!大星ィ!」 竜華「おおほしぃいいいいいいいいいいいい!!!!」 ~~~~~~~~~ ~~~~~~ ~~~ <二年後> 五月 札幌 京太郎「おーよしよし。可愛いなぁ...俺の息子は」 淡「星太郎、ほーらママですよ~。こっち向いて~」 星太郎「きゃっきゃっ」 京太郎(一年前、北海道に淡の様子を見に来ていた竜華さんから電話があった) 京太郎(淡の様態が急変して、母子共々命の危機) 京太郎(その時俺は幸運なことに札幌駅の近くにいた) 京太郎(淡の病院へ車をかっ飛ばし、30分後に病院に着いた) 京太郎(淡は難産だった) 京太郎(双子のへその緒が互いの首に複雑に絡まりあい) 京太郎(帝王切開でしか子供を取り出すしか方法がなかった) 竜華「全く、ほーんと人騒がせなアホ夫婦やなぁ...」 怜「なにが『私達二人が死んだら子供を頼みます』や」 怜「病弱なウチよりもピンピンしよってからに」 竜華「ほら、淡ちゃん。もうちょいこっち」 竜華「このままだと画面から淡ちゃんがはみ出るで」 怜「はみでるのはおっぱいだけにしとくんやで~」 京太郎(結果だけ言えば、双子の一人は死産した) 京太郎(女の子だった。そして生き残ったもう一人は男の子だった) 京太郎(我が子が死んだとき、これも自分の業かと俺は気が狂いそうになった) 京太郎(もし、俺と淡が全く血のつながりがなければ...) 京太郎(多分淡も俺も、この世に生を受けた我が子を祝福できただろう) 京太郎(それでも....俺は、我が子の幸せを願っている) 淡「キョータロー?」 淡「どうしたの?」 京太郎「いや...この子にどういう教育を...」 淡「え~?もう今からそんなこと考えてるの~?」 京太郎「あったりまえだろうが」 京太郎「お前とコイツの幸せのために俺は働くんだよ」 京太郎(選んだ道は既に間違っていた) 京太郎(それでも後悔はないと俺は断言した) 京太郎(だが、俺達はもう引き返せない場所にまで自分達を追いやってしまった) 京太郎(この子の人生は幸福の数より、不幸の数の方がきっと多い人生になるだろう) 京太郎(だから...) 京太郎「いなくなってしまった娘の分まで、コイツには...」 淡「強くなって欲しい。幸せになって欲しい」 淡「大丈夫だよ。私がちゃんとキョータローとこの子を支えるから」 竜華「目の前でいちゃいちゃすんなや!うらやましい!」 怜「iPS細胞で子供が出来るなんてまやかしやったんや...」 淡「りゅーかとときは相変わらずだね...」 怜「いや...竜華、逆転の発想をするんや」 怜「ちっちゃな男の子も、ありやろ?」 京太郎「手を出した時点で警察呼びますからね」 淡「っていうか、まだキョータローを狙ってるんですか?」 竜華「仕方ないやん!」 竜華「ウチら二人、好きな男が他の女に取られても諦められんバカやもん!」 竜華「せやったら、その人の子供の子供をな...」 淡「う~わ~。それはいくらなんでもないですよ...」 怜「はっきり言って逆セクハラやんか、それ」 怜「星太郎が高校生になった時点でウチらは三十路のオバンやで?」 怜「オバンの裸みて、星太郎が変な性癖に目覚めたらどうするんや!」 竜華「うわぁあああああん!」 怜「じゃ、ウチらはホテル戻るわ」 京太郎「ハハハ。お二人には本当になんてお礼を言えば良いのか」 竜華「ええよええよお礼なんて」 怜「好きな人は助ける。たったそれだけのことをしただけ」 竜華「うんうん。次は夏休みに三人で大阪に遊びにおいで」 淡「じゃあ。遠慮なく一週間くらいお邪魔するね」 竜華・怜「ほななー」 淡「またねー」 京太郎(温かな春風が巻き上げた桜の花びらと共に二人は去って行った) 京太郎(さらりと洒落にならないことを言い残したあの二人だったが) 京太郎(十年後にはそれを容易く現実にしてしまいそうなのがちょっと怖い) 淡「さて、そろそろ私達も我が家に戻りますか」 京太郎「ああ。家に帰ったら風呂入るか」 淡「うん」 京太郎「星太郎もパパと一緒にお風呂入るよな?」 星太郎「や~!」 淡「アハハハ。まだママと離れたくないんでちゅね~。星太郎君は」 京太郎「好きな人にはとことんべったりなところは、本当に淡に似てるのな」 淡「じきにパパのことも好きになるって」 京太郎「そうだったら俺としては嬉しい限りだよ」 京太郎「淡」 淡「なに?」 京太郎「今、幸せか?」 淡「うん。とっても幸せ」 淡「姉としても、母親としても、女としても最高に幸せだよ」 京太郎「そうか...」 淡「ね、キョータロー」 京太郎「ん?」 淡「大好き」 京太郎「嗚呼...」 京太郎「俺もだ。ずっと...ずっと何度でもお前に言い続けてやる」 京太郎「ずっと側にいてくれ、淡。お前なしじゃ、俺は生きていけない」 淡(こうして、私達は先の見えない未来へと歩いて行く) 淡(頑なに貫いた信念の先にあるのが地獄への入り口だとしても...) 淡(私とキョータローは自分自身を貫いてずっと生きていく) 淡(だから、これからもずっと...そう永遠に) 淡「私達、ずーっと一緒だからね?」 カン

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