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 須賀京太郎くん。  同い年、同じ部活に所属するどこにでもいるような男性。その認識が変わったのは何時からだったでしょうか。  彼も私の胸を見ます。  男の人たちからの性的な欲望、それの乗った厭らしい眼差しは昔から慣れていました。 「気持ち悪い」  嫌悪を抱かないはずもなく、気づかないはずもない。私は視線を集めることで優越感に浸る性分でもありません。  インターミドルの個人戦で優勝し、インターハイの長野代表となり、全国で躍進する程に嫌が応にでも注目される。だから、告白されることも多くなりました。 「面倒です」  断れば角が立ち、同性からの嫉妬、顰蹙、陰口も増えました。悔しさを覚えることも、怒りを感じることも、悲しくなることもあります。  弱っていたんでしょうね。  部室で一人ぼっちの時、ふとした拍子に涙が零れ、それを部活へとやって来た彼に見られてしまった。その場では誤魔化しましたが、見抜かれていたのだと思います。 「お節介なんですよ」  常識的に考えれば赤の中で黒一つ、肩身が狭く居心地だって悪いはずでしょう。体よく雑用だっていっぱい押し付けられているじゃないですか。  だけれど、彼は腐らない。  女子の大会に同じ部活の仲間とは言え東京まで一緒に来ることを学校からも認められていたんですよね。  凄いと言うか、無駄にコミュニケーション能力が高くて、口の上手さや顔の良さ、兎に角要領が良い。  いつの間にか味方が増えていました。多数派が形成されていて、陰口や嫌がらせは鳴りを潜めました。誰かさんが然り気無く立ち回ってくれたおかげですね。 「狡いんですよ……」  私には何も告げない。  何時もと変わらぬ素振りで胸を見てくる。どうせ、知らないと思っているんでしょう。バレてないと考えているんでしょう。舐めないで下さい。  高久田くんからネタが上がってます。あなたと同じ中学校の出身者からも色々聞き出しましたよ。以前も咲さんが孤立しないように振る舞っていたらしいですね。 「……卑怯です」  そんな真似をされたら……  気づいてしまったなら……  私は……もう…… 「はあ、京太郎くんは本当にヘタレですね」 「いきなり何だよ?」  どうして伝わらないんでしょうか。  名前の呼び方が変わりましたよね。  体が触れ合うことが異常に多いと思いませんか。わざと押し当てているんですよ。  毎日頻繁に連絡しているじゃないですか。登校時に毎回会うのも偶然じゃありませんから。  はっきりと私の口から告げないと駄目なんですか。告白は彼からしてもらいたいなって思っているんですが…… 「京太郎くん」 「おう、改まって何だよ?」 「そ、その……今度……」 「今度?」 「……またネト麻で特訓しますよ」  本当はデートに誘いたいのに、恥ずかしくて言えません。私のおバカ、ヘタレ……根性なし…… カンッ!

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