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「はあ」  一年一度。  年一回。 「羨ましい」 「何がだ?」  彼女の小さな声が聞こえたのか菫は疑問を投げる。 「ふっ、菫には分からない」  お堅く、恋をしたこともなさそうな彼女に言ってもなっとばかりに照は鼻で笑った。  そんな態度を取られればカチンっと頭に来るものだ。 「おい、照?」  語尾を強めた口調にやれやれ仕方ないと照は首を左右に振った。 「今日は七月七日、七夕だよ」 「そうだな。だからどうしたんだ?」  察しが悪いと思ってしまった照の態度にムッとした菫は悪くない。  妖怪でも超能力者でも、ましてや超科学の申し子や魔法少女SSSでもないのだから、それだけで心の内を読めと言う方が無茶である。 「織姫と彦星は一年に一回も会えるんだよ。私なんてもうずっと会えてないのにね……はあ、羨ましい」 「え? は?」  菫は衝撃を受けた。  色恋に疎そうな、普段の行動もあれな少女からまさかの言葉に混乱する。窓から遠くを見つめ、憂いを帯びた表情は恋する乙女にしか見えない。 「お、おい、まさか……本当に恋人がいるのか?」 「京ちゃんと私は結婚を約束した仲」  その一言で菫は完全に凍りついた。  照はかつてを思い出す。  それは幼い頃に交わした口約束。  今も信じている。  一途に育まれた恋心、その帰結がこの夏にて至ることをまだ知らない。再会した彼が出す答えを聞いたとき……  新たな骨肉の争いが始まる。  --『私に姉はいない』-- カンッ!

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