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久「今年が最後のチャンス…、是非とも団体戦に出たいわねぇ」
まこ「最低でもそこそこ腕の立つ奴が三人はいる訳じゃし、そんな上手くいくとは思えんがのう」
久「いやいや、この窮地にこそ私の悪待ちが発揮されてって可能性があると思うのよ」
まこ「はいはい、まあわしも待つのはやぶさかじゃないんじゃがな」
久「もし揃ったら毎日遅くまで練習したり合宿してみたり、やりたいことも色々あるわね」
まこ「それもこれも取らぬ狸のなんとやらにならんといいがの」
久「夢が無いわねまこ。んー、しかしそうなると」
まこ「?」
久「五人で練習するなら今まで以上に備品の消耗とか速いだろうし合宿するにしても卓の運搬なんかもネックね。いざという時は業者なんかに頼めるよう部費も多めに取っておこうかしら」
まこ「いくら学生議会長とはいえそれは職権乱用が過ぎるじゃろう」
久「それならそういうのを任せられるそこそこ鍛えた男子部員なんかも欲しくなっちゃうんだけど流石にそれはねえ」
まこ「単なる雑用要員で男手が欲しいっちゅうのは流石に引くぞわりゃあ」
久「分かってるわよ。他所の部活から男手を借りるって手もあるけど…まこは何かアテない?」
まこ「わしに聞かれてものう。ふむ」
まこ(そういやあいつが今年清澄に入るとか言うとったな)
久「お、その顔はもしかして心当たりありかしら?」
まこ「あー、親戚で今年清澄に入るのがおってな。中学は確かハンドボールで県大会決勝まで行っとったし身体能力も申し分ないと思うが…」
久「ピッタリじゃない!その子に麻雀部入るよう頼んでみてくれない?」
まこ「まあ話をしてみるくらいなら引き受けてもいいが…、そもそも今年部員が増えんと意味無いじゃろ」
久「いーや!今年は団体戦に出る!だからお願いまこ!」
まこ「…はぁ、分かった分かった。ただしわしから無理強いはせんからあいつがもう他の部活に入るつもりだったら諦めぇよ?それに」
久「それに?」
まこ「もし入ってもただの雑用として扱わんこと。ちゃんと先輩として指導するなら引き受けちゃるけえ」
久「もちろんよ!というか私もさすがにそんな鬼みたいな先輩にならないって。なるべく雑事は分担するのも約束するわ」
まこ「なら今日にでも聞いてみるけえ明日にでも報告しちゃる」
その夜
まこ「と、いう訳なんじゃが」
京太郎「なんというか、すごい先輩だなその人」
まこ「まあ夢へのラストチャンスじゃしな。しかしあいつも約束したとはいえ、もし本当に団体戦に出ることになったらどうしてもおんしに負担はかかってしまうじゃろうし断ってもいいんじゃぞ?」
京太郎「別に一年の初心者が最初は雑用担当なんて普通だしそこは気にしてねえよ」
まこ「ふむ、まあこんな話振った側が言うのもアレじゃがちゃんと考えて返事せえよ?おんしのやりたいことを我慢させてまでってつもりは全然無いけえの」
京太郎「分かってるってまこ姉。それに俺、運動部にそこまで拘ってるわけでもねえしさ」
まこ「そうなんか?」
京太郎「なんていうかさ、あの試合で一つの限界が見えたっつーか。ぶっちゃけ燃え尽き症候群みたいになってな。麻雀なんて今まで触れたこともない未知の世界に飛び込むのも悪くないような気がしてるよ」
まこ「わしが麻雀の話振ってもまるで興味が無かった京太郎がそんなこと言うなんてのお。まこ姉ちょっと感動じゃ」
京太郎「ちょ、そういうの止めてくれよまこ姉」
まこ「そんなら入学してから部活見学に来てそれから答えを出しい。部長にもそう伝えとくわ」
京太郎「オッケー、そんじゃおやすみまこ姉」
まこ「じゃあの、京太郎」
京太郎「おいまこ姉!起きろって」
まこ「ん…京太郎?」
京太郎「部室でガッツリ寝落ちしやがって…。もう遅いから咲たちは帰したぞ」
まこ「おお、もうこんな時間か」
京太郎「初出場で全国決勝まで行った後の部長引継ぎだから色々大変なのはわかるけどさ、ちゃんと寝れてんのか?」
まこ「おんしに心配される程じゃないけえ安心しい。それに学校じゃ染谷先輩と呼べと言ったじゃろう」
京太郎「もう俺達だけしかいねえしいくら呼んでも起きないのが悪い。そんなに幸せな夢見てたのかよ?」
まこ「……おんしを麻雀部に誘った日の夢を見とったわ」
京太郎「へえ。そういやあの日誘われなきゃ清澄の大快挙の現場に立ち会えなかったんだなぁ」
まこ「それもこれもおんしが陰で頑張ってくれたおかげじゃよ。わしらは皆そう思っとる」
京太郎「俺だってまこ姉が誘ってくんなきゃ麻雀の楽しさも咲のすごいとこも知らず和と仲良くもなれなかったんだから感謝してるよ」
まこ「一番最後が本音のような気がするがのう」
京太郎「うっせ」
まこ「ま、ある程度予想してたとはいえ色々押し付けすぎた分これからしっかり指導しちゃるけえ楽しみにしとれ」
京太郎「おう、ありがとなまこ姉」
まこ「礼には及ばんけえ」
久「私も色々教えてあげるからね」
「「うわあ!?」」
まこ「ひ、久!?いつからおったんじゃ!?」
久「んー、須賀君がまこを起こそうとしてたとこから?」
京太郎「全然気付かなかったっす…」
久「いやー須賀君がまこを襲っちゃわないか見まm…警戒してたんだけどぉ、思わず珍しいもん見させてもらっちゃった」
まこ「おんしな…」
久「そんな怒んないでよまこ姉」
まこ「やかましい!」
久「そうそう須賀君」
京太郎「え?」
まこ「無視すんなや!」
久「元はと言えば私が須賀君を誘うようまこに頼んだわけだし、私にも感謝してるわよね?」
まこ「あんだけ京太郎に諸々押し付けとった奴がよう言うわ」
久「そこは私も悪かったと思ってるわよ。だからこれ」
京太郎「これ…麻雀の教本?」
久「昔お世話になったやつでね、私も推薦やらで受験の心配もしなくて済みそうだしそれを元に改めて須賀君には基礎からしっかり教えてあげようかと」
京太郎「ぶ、部長…」
久「ふふっ、部長はもうまこでしょ?だからこれから私の事は」
京太郎「事は?」
久「久姉って呼んd」
まこ「調子に乗りなさんなや」
久「やーだ嫉妬?須賀君のお姉ちゃんは私一人でいいってやつ?」
まこ「おふざけも大概にしとかんと京太郎も困っとるじゃろうが」
京太郎「いや、別にそこまで「困っとるな?」…はい」
久「はいはい、分かりましたよーだ。今日はこれ渡しに来ただけだしちょっと用事もあるから帰るわね」
京太郎「あ、お疲れ様です」
まこ「ったく、ほんならわしらも帰るか」
京太郎「おう」
数分後
まこ「京太郎も久の奴の妄言にいちいち付き合う必要は無いけえの」
京太郎「まあからかってきたりはするけどさ…ん?」
まこ「どうした?」
京太郎「いや、メールが…部長?」
まこ「なんて書いてあった?」
京太郎「えーと…うん、さっきの教本にお気に入りの栞を入れっぱなしにしてたから明日渡してくれって」
まこ「…本当か?」
京太郎「え?何言ってんだよ、別に嘘つく理由なんて」
まこ「ちょっと貸してみぃ」
『さっきはまこに怒られちゃったけど見つからない時は久姉って呼んでほしいな。これまこには内緒ね☆』
まこ「………」
京太郎「あ、あのやっぱ先輩の言うことは聞いとかないとかなーって」
まこ「そうかそうか、それならわしの言うことももちろん聞くよな?」
京太郎「は、はい!」
まこ「それなら今日はみっちりしごいてやるけえ家に泊まっていきい」
京太郎「ということは今日はまこ姉の晩飯にありつける?やったー!」
まこ「ったく、そこまで喜ばんでもよかろうに…」
まこ(ま、こんなに純粋に喜ぶ弟分に免じてしばらくあいつには卵焼きを渡さん位で済ましちゃるか)
カンッ