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「ふふん……衣の勝ちだな」 「っ!!」 「はぁ……」 大星淡は誰も居ない廊下を一人歩く。 先ほどまであった戦意もなくなり、泣きそうになる。 憧れの照を追いかけて入った、麻雀部。 誰よりも傍に居て戦って、誰にも負けないと思っていた。 (甘かったのかな……負けるのかな) 残り半局あるが、相手の弱点もわからず、このままだと二の舞になって終わる。 そう思ってしまえば、心が折れ星の光も輝きを失った。 「っ……ひくっ」 心が折れてしまえば後は簡単だ。 気持ちが滑り落ちるように隕石のように燃えカスとなり落ちていった。 歩くごとに涙が溢れ出し、照を含め他の先輩や和、レギュラーを落ちてしまっても応援してくれた優希の顔が浮かぶ。 悔しくてたまらない、それでも泣く以外に何も出来なかった。 「……何泣いてんだよ」 「うっさい!」 廊下を歩いていれば、入り口付近で見知った声が聴こえた。 その声は同じクラスの男子生徒だ。 部活こそ違えど、何かと生意気な淡とぶつかり合い、よく口喧嘩をしている。 そんな彼が、なにやら苦しそうに息を整えながらも立っていた。 「いつもの生意気はどうした」 「うっさい、うっさい!」 「全国制覇するんだろ、こんな所で泣いてて出来るのかよ!」 相手の言葉を耳にしないように両手で塞ぎイヤイヤと首を振る。 「っ……分かった聞かなくていい」 「うぅ……」 呆れたのだろうか、淡の行動に彼はそう言って言葉を区切った。 そのことが更に淡の心に負担をかけ、倒れこみそうになる。 それでも倒れず前に歩いたのは、まだ完全に折れていないせいか。 「……?」 「……」 下を向いて前に一歩一歩歩けば、淡の頭に何か柔らかい物が当たった。 その事に不思議に思い顔を上げればそれがあった。 それは真っ赤に燃えるような色をしていて、所々金の装飾をされている。 バっと広がったそれは大きく、仲にはハンドボール県大会優勝と描かれていた。 「……優勝旗?」 「おぅ」 その物の名前を言えば、彼はニッコリと笑い答えた。 「……京太郎はバカなの?」 「お前には言われたくないわ」 幾ら優勝したとしても優勝旗など個人で持ってこれるものではない。 これは個人でなくチームメイト全員に送られるものなのだ。 それをこうやって一人で持って来てバカなのかと思った。 「怒られるよ?」 「だろうな……一応先輩達にも協力してもらったけど、大目玉かな」 レギュラー外されないといいなと彼は苦笑する。 そんなバカな行為をした彼に泣くのを忘れ、淡は呆れた。 「俺は勝ったぞ……今度はお前だ」 「……あっ」 そういった彼の言葉を聞いて思い出す。 前に喧嘩をした時に約束したのだ。 『ぜったい、ぜーたい! 優勝するから!』 『はっ! 俺が優勝するほうが早いな!』 『なにをー!』『なんだよ!』 『むむむ……ならどっちが優勝するか勝負だ』 『望む所だ!』 こっちが売れば相手は買う。そんな口喧嘩。 よく見ればだ、彼は所々怪我をしており、無茶をしたのが手に取るように分かる。 無茶しながらも、あの約束を彼は律儀に守っていた。 「んでだ……どうするんだ? 俺の勝ちで終わりか?」 「……っ! そんなわけないじゃん、勝つのは私!」 ニヤニヤと笑う彼に釣られ、胸を張り命一杯踏ん反り返る。 負けられない、こいつにだけは負けたくないと思う。 そうしていれば、鬱々した気持ちがなくなり心に輝きが灯った。 『休憩時間が終了します。 まもなく県大会決勝後半戦が……』 「あっ……休憩の時間」 「いらない……京太郎、行って来る!」 「おぅ、行って来い……淡」 そんな事をしていれば時間がなくなった。 彼はその事を気にするも淡は笑い道を戻っていった。 「……先ほどとは顔が違うな」 「まーね……ねぇ知ってる?」 「……?」 「星って終わる時は大きな爆発を起すんだ」 「爆発……さっきのでお前は終わったと?」 淡の言葉に衣は思い出す。 最後の最後、全てを吐き出すように大きな手を和了切った。 それでも点数的には龍門渕が勝っており、戦意もなくなった淡は正に終わったと思えた。 「終わらない、星は爆発して新たな星を更に作り出す……天江、新しい私を受けてみろ!」 「っ……面白い、受けきってみせよう! 大星!!」 互いに互い、負けられぬ思いを胸に戦いへと身を投じていった。 この後、二人の勝負に耐え切れず、他の両校が酷い目にあったのは省略する。 カンッ!

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