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 インターハイの開催中に迷子になっていた小蒔さんを助けた俺は、お礼がしたいと言われて霧島神境に招待された。  それは摩訶不思議な体験だ。  直前まで人でごった返す東京にいたはずなのに、気づけば無人の山や海が広がっている謎の地にいたのだから。  小蒔さんの案内に従い進めば、まさに言葉を失う大きな胸の女性、石戸霞さんに出逢った。  思わず目を奪われてしまったことに小蒔さんは頬を膨らませた。年上だと思えない可愛らしさにほっこりする。  小蒔さんから俺についての説明がなされ、とても感謝された。どうやら、彼女の行方が不明になっていたことにもまだ気づいていなかったらしい。 「京太郎様、私も腕に縒りを掛けて料理を作るので楽しみにしていてくださいね」  そう口にして彼女は六女仙と呼ばれるお付きの何人かと歓待の準備をするために行ってしまった。  残された俺の下には石戸明星という中学三年生の少女が宛がわれた。 「姫様を助けて頂いてありがとうございました」  丁寧に謝意を立て続けに述べられ、少しばかり恐縮してしまう。 「料理の準備には時間が掛かると思いますし、お風呂なんてどうでしょうか? かけ流しの天然温泉があるので気持ち良いですよ」  灼熱の大都会を出歩いていたので汗は掻いている。一風呂浴びてサッパリするのも悪くないと思い提案を受け入れた。 「…………」  明星さん、何でこの子は俺と一緒にお風呂へ入ってるんだ。見知らぬ男と入浴を供にするとか思考がちょっと理解できない。  背後で音は聞こえた時は着替えやバスタオルを持ってきてくれたのかと思い、俺は気にすることなく洗髪を続けた。  だから、真後ろから『お背中をお流しします』と告げられた時は驚き固まってしまったのだ。  即座に否定の言葉が出なかったことで了承と受け取ったのか、彼女は俺の体を丁寧に洗い出す。  その手つきがちょっと気持ちよくて、流され、気づけば全身をピカピカに磨かれてしまった。 「ご迷惑でしたか?」 「迷惑じゃないけれど、恥ずかしいというか、その、目のやり場に困るかな……?」  自己主張の激しいおもちが湯船から顔を覗かせている。  明星はあの霞さんの従妹だけはあり、素晴らしいものを持っている。悪いとは思いつつも心と体は正直なものでつい見てしまう。 「お望みでしたらどうぞ私を抱いてください」 「ふぁ!?」  何を言い出すんだこの子は…… 「失礼ですがお見受けしたところ、須賀様は女性との経験がありませんよね。それですと姫様が苦しい思いをするかもしれませんし、私で筆を下ろしては如何ですか?」  意味も意図も理解できず、俺は彼女に真意を尋ねた。  知らぬ間に俺は罠に絡め取られていたようだ。  基本的にこの神境は男子禁制である。  だからこそ、ここへ男を連れ込むことは伴侶にすると叫んだも同然とのことだそうだ。  あの小蒔さんにそのような意思があったとはどうにも思えないが、六女仙の人たちは俺が見初められたと解釈している。  歓待の準備の裏ではその後に褥を共にする用意も進められているらしい。  逃げ場はない。  まず、ここから出る方法を俺は知らない。そして、小蒔さんに忠誠を誓っている彼女たちが恐ろしい。  俺がやんわりとこの流れを拒否するようなことを口走った所、鬼もかくやという形相で睨まれた。  曰く、小蒔さんを悲しませる気か、恥をかかせるのかと、アレは雰囲気からして不味いと瞬時に悟った。 「如何なさいますか?」  悲しいかな。  最早手遅れ、どうにもならないと理解した俺は白旗を挙げた。  そして、年下の女の子にたっぷりと指導され、翻弄され、ご教授の介もあり、恙無く小蒔さんと結ばれた。  夏休み明けには鹿児島への引っ越しも決まる。その後も明星は俺の指導係として、色々と深い関係が小蒔さん公認の下で続くことになる-- カンッ!

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