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「なあ、久。なんでおぬしは京太郎にあんな無茶をやらせるんじゃ?」  そうまこに尋ねられたとき、私は咄嗟に答えることができなかった。いつもなら飄々と口が回るはずなのに…… 「パソコンも雀卓も必要なのは分かるがのぉ、唯一の男手とは言っても限度があるじゃろ?」 「そうね、……次からは気を付けるわ」  心にもない返事だと、彼女は気づいていただろうか。  最も信頼している仲間から忠告を受けようと、私は彼を体の良いように使うことを止めなかった。  優希の我儘を諌めるどころか加速させ、本来なら自分で用意させるべき好物のタコスも彼が準備するのが当然との空気を作る。  迷子になりがちな咲への有効な対策方法を思い浮かびながらも、そ知らぬ顔で彼を奔走させる。  和やまこが指導する時間を削り、雑用として馬車馬の如く働かせた。  彼をのけ者にするように振るまったことも何度あっただろうか。  我ながら酷い人間だ。  それでも、私は彼を不遇し続けた。  どうして、腐らないの?  何で、平気な顔で笑っているの?  おかしいって普通は気づくでしょう?  麻雀部に在籍しているのに、本物の牌に触れることが殆どないのよ?  苦しかった。  どうしようもなく悔しかった。  意にも介さない彼に打ちのめされ、敗北感に私の良心が先に悲鳴をあげた。  私と母を棄てた男。  須賀京太郎は似ていた。  彼を虐げることはあの人への冷めやらぬ憎悪を発散する代償行為。理不尽な、間違った行いだと知りながらも甘美な毒を捨て去ることはできなかった。  良心の呵責に堪えかね、私は浅ましい心情を彼にぶちまけた。 「何で、何で、怒らないのよ?」  理解できない。  見苦しく泣く私をどうして慰めるのか、その優しさに責め立てられる。それでも愚かな私は、こんな状況でも彼の中にあの人の影を見てしまう。  大好きだった。  だから、赦せない。  憎いのに嫌いになりきれない。  抱いてはいけないはずなのに、須賀くんを好きな自分がいる。ああ、どうしようもない愚者だ。 カンッ!

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