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 恋心と友情。  二つに一つを選らばなければいけない。 「咲ちゃん、話ってなんだ?」  彼女は厳しい目で私を見る。  その眼差しは決して友達に、仲間に向けて良いものじゃない。だけど、それはきっと仕方ないことだとも思う。  私との友情よりも恋を選んだ。  その時点で同じ相手に想いを寄せる私は負けられない恋敵なのだ。そして、今では私の作意を知り、敵だと認識されている。 「何だと思う?」 「ふざけるなら帰る」  彼女には余裕がない。  事情を顧みれば察せられる。  一番の親友、自分の味方だった者が獅子身中の虫となるかもしれず、恐怖に懊悩している。 「ふふ、カリカリしてていつもの調子がないね、優希ちゃん。和ちゃんが隠していた気持ちに気づいちゃったから?」 「このぉぉおおっ、誰のせいで!」  彼女は詰め寄り、掴み掛かった。  服が皺になるから止めて欲しいな。 「あは、私は間抜けな優希ちゃんが気づけるようにヒントをあげただけだよ」  罪悪感、焦燥、敵愾心、嫉妬、憤怒、様々な感情が優希ちゃんを支配している。本来の持ち味である天真爛漫さが陰り、殺してしまうほどに染め上げる。  まあ、そうなるように私が仕向けたんだけどね。 「和ちゃんはどんな気持ちで優希ちゃんを応援していたのかな?」  口撃に腕からだらんと力が抜け、彼女は視線を下へと落とす。想像の水を呼び、彼女の心は罪の意識に苛まれる。  ああ、私と違って優希ちゃんは良い子だね。だから、嫌いになれない。これが、開き直るような手合いなら容赦しないんだけど。 「ねえ、優希ちゃん」 「な、何?」  強張る身体、震える声は怯えの証。  優位に立っていることを確認し、内心でほくそ笑む。きっと、彼女は勝てないと心の奥底では認めている。  格付けは完了。  だから、私の声を彼女は無視できない。 「和ちゃんが本気になれば、勝てないよ」  学校一とも評判の美少女。  男子の視線をくぎ付けにする大きな胸、真面目で可愛く家庭的。ある意味、男の子の理想像を写し取ったような女の子。 「京ちゃんは和ちゃんに憧れにも似た好意を持っているんだから」  勝ち目なんて最初からない。  友情と恋心。  和ちゃんが友情を選択し、自分の心を殺して親友の背を押していなければ早々に勝負は終わっていた。  私たちのアプローチに彼は靡かない。  少なくとも、彼女が身近な距離にいる間は誰かと交際することはない。京ちゃんは不器用だから。  延長戦で逆転勝利を私は狙わない。  私は私自身に自信がない。  誰よりも京ちゃんを愛しているとは叫べても、彼からの愛を勝ち取れるとは口にもできない。  ポンコツでちんちくりん。  唯一の取り柄は麻雀だけ。  女性としての魅力もない。  そんな私が京ちゃんの前にこれからも現れるであろう魅惑的な人たちに打ち勝てるとは思えない。  だから、私は策謀する。  恋心と友情。  どうして天秤に掛ける必要があるのかな。  常識さえ覆し、果実を得るためなら唯一の恋人じゃなくても良いと私は許容する。 「ねえ、私と優希ちゃんに和ちゃん。三人とも幸せになれるなら、どうする?」 「いったい、何を言って……」  ハーレムは男の子の夢。  私のような自分に自信のない女の子なら、必ずしもそれは悪じゃない。一番じゃなくても一緒になれるなら構わない。  優希ちゃんも和ちゃんも私にとっては大切な友達だから、別に気にならない。見ず知らずの誰かに盗られるよりずっと-- カンッ! 咲さんのハーレム計画 -オマケ- 誠「久しぶりだな京太郎」 京太郎「そうだな、こうして会うのはいつ以来だ?」 誠「高校を卒業して、成人式で会って以来かな」 京太郎「はは、懐かしいな。最近はどうだ?」 誠「仕事は順風満帆、今度係長に昇進だよ。来年の秋頃に入籍予定だしな」 京太郎「へえ、そりゃあ目出度いな。じゃあ、今日は俺が奢るよ」 誠「サンキュー。京太郎はどうなんだ?」 京太郎「あれ、言ってなかったっけ? 俺は専業主夫だぞ」 誠「ふぁ!?」 京太郎「まあ、入籍はしていないんだけど三人の子供もいるし、嫁さん妊娠中だ」 誠「待て待て、お前まだ二十代だろうが! 子供いるとか聞いてないし、相手は誰だよ? それに四人目って!?」 京太郎「ん? ああ、俺は嫁さんが三人いるからな。一人で四人も孕んだわけじゃないぞ?」 誠「は!? 嫁が三人とかハーレムじゃねえか!!」 京太郎「そうだな。ちなみに全員、誠も知ってる人だよ」 誠「えっ……まさか?」 京太郎「お察しの通りだと思うぞ」 誠「爆発しろ!」 京太郎「ハッハッハハハハァぁ……(夜は三人の相手するからマジキツイ、まあ幸せだけどな……)」 カンッ!

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