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 目の前に美少女がいたとしよう。  その子は好みのタイプにド直球だとする。しかし、知り合いじゃないから性格は分からない。  それでも容姿だけはすばらなんだ。  さて、指を咥えて見ているか、話しかけるか、どうする?  もちろん、俺はコミュニケーションを取ることを選んだ。そりゃあ当然だろう? 親しくならなきゃ何も始まらないからな。 「「…………」」  ああ、沈黙が痛い。  胃が痛い。 「京太郎くん、説明してください」  不機嫌な顔で俺を睨むのは和だ。  怒っている表情も可愛いなと不謹慎ながら思ってしまう。 「その、だな……ユキは以前に突き合った仲というか……」  中学の卒業旅行で友人たちと北海道に行ったとき、ナンパした少女がユキだった。  普段ならそんな真似はしないんだが、旅の恥は掻き捨てと言うか気が大きくなっていたのだろう。  運が良いことに人生初のナンパは成功し、俺はユキと行きずりで関係を持ったんだ。  後悔はしていない。  すばらな旅先での思い出であり、連絡先を交換したわけでもなく、その場だけの関係だと信じていたからだろうか。  だから、もう彼女と会うことはないと思っていた。  しかし、運命の女神ってのは気紛れらしい。  インターハイの時は気づかなかった。  ユキは以前よりもずっと綺麗になっていて、地味な頃と姿が重ならず、同姓同名の別人だと考えてしまったのはおかしくはないと思う。  もしもはないけど、夏に再会していたなら-- 「最低ですね」  ユキとの関係を素直に答えれば、和は冷たい侮蔑を含んだ目で俺を見た。 「京太郎くんと原村さんはどういう関係なんですか?」  ユキは静かに問う。  傍目からは怒っているようには見えないが、その瞳には異様なほどに戸惑いや困惑がない。 「和は、俺の恋人だ」  高校に入学した俺は和に出会った。  そして、誘蛾灯に導かれるかのように魅せられ、惹かれ、麻雀部に入った。  しかし、和と親しくなろうとしては空回り、雑用、迷子、タコスな日々。それはそれで楽しかったから不満はない。  インターハイに懸ける部活の仲間たちを微力ながら応援し、清澄が誉れある栄光を勝ち取れたことを誇りに思っている。  何よりも縁の下での活動を見ていてくれた人がいたんだ。  新学期が始まる前、夏休みの最終日、和から呼び出された俺は告白された。  意中の相手、あの和から好きだと言われ、拒むはずもなく交際がスタートした。  俺たちの仲は客観的に見ても睦まじく、今日まで何の問題もなく順調だった。  そう北海道代表として国麻出場のために長野へと訪れたユキと再会する”今”までは-- 「そうですか。二人は付き合っているんですね」  俺の説明を受け、ユキは情報を解すように首を振る。 「「「…………」」」  再び生まれた沈黙にキリキリと胃が痛む。   「原村さんは京太郎くんを軽蔑しましたか?」 「少し……軽い所があるとは思っていましたけど、まさかナンパをしていたなんて……」 「はい、……すみません」  責めるような視線に俺は身を竦めるばかりだ。 「軽蔑したんですね。嫌いになりましたか? もしそうでしたら、私が貰っても良いですよね?」 「は!?」  腕が柔らかい触感に包まれる。  ユキの大きなおもちに挟まれ、思わずにも鼻の下が伸びてしまう。 「何、デレデレしているんですか京太郎くん! 真屋さんも勝手に人の彼氏にくっつかないでください!!」  反対側の腕が和のおもちに挟まれる。  睨み合う二人、のどパイとユキパイのすばらな触感。キュッと締まる胃、天国と地獄の国麻が幕を開ける。 カンッ!

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