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「ねえ、京ちゃん」  私と彼の関係を表すにはどんな言葉を用いるのが正しいのだろうか。  単なる友達と呼ぶには縁が深過ぎて、幼馴染みと言うには付き合いが短く、恋人と語るには愛が足りず、何もかもが中途半端。 「何だよ?」 「優希ちゃんから聞いたんだけど、今度の休日に和ちゃんとデートするって本当?」  彼が彼女に気があることを私は知っていたし、部活の仲間たちも当の本人である和ちゃんを除けば早い段階で気づいていた。 「おう、その日に俺は和に告白するつもりだぞ」 「ふーん、そうなんだ。上手くいくと良いね」  十中八九、二人は交際を始める。  私は彼女が彼に少しずつ惹かれていたことを知っている。距離が縮まり、彼女が彼を名前で呼ぶようになったのは何時からだったかな。 「ありがとな」  眩しい笑顔を見せる彼は分かっていない。きっと関係の変化がもたらす波乱の影響までは見通せていないんだろうね。  優希ちゃんは泣いてるよ。  染谷先輩は笑って誤魔化してる。  部長は諦める気はないみたい。  暫くは部活の雰囲気が面倒になりそうで嫌だな。  そんな私の杞憂にまで彼は鈍いから気づかない。和ちゃんは分かっていても彼を手に入れることを止めはしない。  愛情と友情。  二つに一つ。  彼女は恋をしているのだから。  複雑な人間模様、その煩わしさと過去の失敗から私は人とのコミュニケーションが苦手。  そう、それが些細な掛け違いで壊れてしまうことがあることをよく知っている。 「だけど、京ちゃんはエッチだからね。愛想尽かされないように気をつけないとダメだよ?」 「はは、分かってるって……うん、大丈夫、大丈夫」  コミュ症で孤立しがちな私を助けてくれるのは何時だって京ちゃんだった。ドジな私にいつも手を差し出してくれた。  そんな彼に新しい恋人ができる。  京ちゃんと和ちゃんはきっと上手く付き合っていく。二人は凸と凹のように相性は噛み合わさるだろうから。  正反対のようで似ている部分もある二人、互いの欠点も補えるんじゃないかな。 「それじゃあ、また明日」 「気をつけて帰れよ、咲!」  私にとって京ちゃんは特別だ。  彼には幾つもの恩があり、たくさんの思い出がある。今でも好意がないと言えば嘘になる。  だけど、私と彼がもう一度恋人になることはあり得ない。  そう言うのには向いていないのだと中学時代に学んでしまった。流れで付き合い、気づけば消滅していた。  一ヶ月だけ交際した元彼女が私だ。  交際する前でも、後でも、私たちの関係は全く変化がない。後腐れもなく、変わらぬ間柄が続いている。  きっとこの関係には優希ちゃん、染谷先輩や部長も、和ちゃんですら立ち入れない。  私と京ちゃんの不思議な距離感。  この関係につける名前が私には分からない。 カンッ! -オマケ- 和「咲さんって京太郎くんの元恋人だったんですね」 咲「うん、そうだよ」 和「羨ましい……」 咲「ん?」 和「彼が初めて付き合ったのは私じゃなかったんですよ?」 咲「そうなるね」 和「私は彼が初めてなのに、彼は違うなんて……」キッ 咲「ごめんね?」 和「別に謝って欲しい訳じゃありませんけど、咲さんは狡いです」 咲「あはは……」 和「京太郎くんのファーストキスも、童貞も奪われてしまったのが悲しいんです!」 咲(京ちゃんのファーストキスはお姉ちゃんだったのは言わない方が良いのかな?) 和「まあ、私が彼にとって最後の女性になるので問題ないですけどね!」 咲「京ちゃんにとって和ちゃんは理想のタイプだよ」 和「ふふふ、そうなんですか……へぇー……」 咲「大きな胸で、家庭的な女の子が好きだって昔から言ってたよ」 和「私の夢はお嫁さんですからピッタリですね♪」 咲(和ちゃんは惚気出すと止まらなかった……嫉妬されるのも面倒だけど、赤裸々な話に付き合うのは精神的に疲れたよ……) もう一個カンッ!

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