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 夢に現を抜かす頭を目覚めさせるコール音、布団の山からのそのそと手が延びる。  携帯電話を布団の中へと取り寄せて彼は画面をクリックした。 『おはようございます須賀君』  電話から聞こえた可愛らしい声に寝惚けは直ぐに吹き飛んだ。  口元には涎の跡が残り、締まりのない表情を浮かべてしまう。  元の素材がどんなによくとも、見られたら幻滅されるだらしのない顔だ。 「おはよう和。毎朝モーニングコール悪いな」 『気にしなくて良いですよ』  インターハイも終了し、夏休みの感覚が抜けきらない京太郎は何度か寝坊してしまった。  それを見兼ねた和がウェイクアップコールを引き受けてくれたのだ。 『今日は秋晴れの良い天気ですよ。お弁当は楽しみにしておいてくださいね』 「おう、愛妻弁当だな」 『違います。いつも学食やコンビニで買ってきたお惣菜なんかで済ましているのを不憫に思っただけですからね!』 「はは、分かってるって……家も母さんが忙しいから弁当を作ったりはしてくれないからな。だからって早起きして自分の弁当を作る気にはならないし、本当にありがとうな」 『友達を助けるのは普通のことですよ。それじゃあ、また後で』 「またな」  通話が切れ画面がブラックアウトする中で京太郎はポツリと呟く。 「友達か……」  目覚ましの電話、手作り弁当、仲は深まっているように見える。  しかし、そこに自分への恋愛感情があるのか否かが京太郎には分からない。  真夏のインターハイが終わる前、彼女の態度は余りにも素っ気なく、好感度は高くはなかったはずだ。  特別な出来事があったわけではない。  だから、期待するなと京太郎は自分に言い聞かせる。  彼女が特別に優しいだけで、彼女も自分を好いているなんて空想は捨てるべきなのだ。  今の好ましく心地好い関係を壊しちゃいけない。  それでも、日に日に募る想いに胸は苦しくなる。  彼が一歩踏み出すまであと少し……

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