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――通学路―― 京太郎「フゥゥ~…冷えるな」 京太郎(とはいえ俺の心は熱い。今日はバレンタイン・デイだからだ) 京太郎(男臭い関係しかなかった去年とは違い、俺の花色の高校生活では、アツいバレンタイン・デイは約束されている) 京太郎(コツコツと積み上げてきた努力の甲斐あって、俺は部の皆からの信頼もアツい) 京太郎(まあ受験でめっきり部室に顔を見せなくなった竹井先輩や、実際一番欲しいけど性格のカタい和からは、望めないかもしれないが、他の3人はどうだろうな?) 京太郎(咲は言うまでもなし。部長の染谷先輩は部員の士気上げに手段を選ばないだろう。優希もアレで行事にはノッてくるタイプだし、収穫は間違いないぞ……!)わくわく 京太郎(ん?)ぴく 咲「……」てくてく 京太郎「……!」 京太郎(……フフ。去年は咲も恥ずかしがって渡せなかったようだが、今年はどうかな?) 京太郎「お~い、咲!」たたっ 咲「! 京ちゃん」 京太郎「へへ、偶然だな。一緒にガッコ行こうぜ……と、ところでさぁ」 京太郎「咲、今日何の日か知ってるか?」 咲「今日? ……なんかあったっけ?」 京太郎「あるだろ? 国民的イベントがさ……」にやにや 咲「なに?」 京太郎「え? それは俺の口からは、ちょっとな……」にやにや 咲「なんか京ちゃん、様子がヘンだね」 京太郎「そ、そうか? それは、はは、わるいね……」ぽりぽり 京太郎(いけねえ、がっつきすぎたな。咲はそこらの女子高生みたいに、男に気軽にチョコ渡せるタイプじゃないんだ) 京太郎(ここは男の俺が余裕を見せるべき場面だな。こいつが渡しやすい状況を作ってやらないと) 京太郎「今日、俺さ、寝坊しちゃって、急いで支度しててさ、朝何も食べてないんだ。だからハラ減っててさ」 京太郎「このままじゃ俺、昼までモたないかも。どうしようか、咲!」 咲「そ、そうなんだ。大変だね……」 京太郎「そう、大変なんだよ」にやにや 咲「まあ頑張って!」 京太郎「……え?」 京太郎「な、なんかないの?」 咲「な、なんかって……私、おべんとも何もないけど……? お昼は学食で済ますし」 京太郎「いや、そうじゃなくてさ、その……チ……チチチ、チョコとかさ……?」 京太郎「だって今日バレンタイン・デイじゃん!!!」くわっ 咲「ああ。そういえば」 京太郎「そういえば、って……」 咲「えーっ……と。その……」ちら 京太郎「」 京太郎「ああ~……そ、そうだよな! ハハ! 咲はそういうタイプじゃないもんな! はははは! いや、言ってみただけだからさ!」 京太郎「いや~、わかってたけどね。言ってみただけだからさ……」 咲「ご、ごめん……京ちゃん。で、でもね――…」 京太郎「いや……謝るトコじゃねえよ……いいんだ、別に……」 咲「……そうだ! 今日日直だったの忘れてたよ! わ、私先行くね!」あせあせ  たたたっ 京太郎「……マジかぁ」 京太郎「……割と、クるな。結構仲良かったと思ってたんだけどな……まあ、咲は義理チョコとか渡すタイプじゃないもんな……」 京太郎「まあいい。俺にはまだ、アテはある。ガッカリすることはない……」 ――教室―― 京太郎「優希! オハヨ!」にこっ 優希「……」 京太郎「……なに黙って俺の顔見てるんだよ? 挨拶したんだから挨拶し返せよ」 優希「いや……あいさつの声が、京太郎とは思えないくらい甘ったるい感じだったから……こいつはほんとにあの京太郎なのか? と確認する必要があったじぇ」 優希「つづくまぬけな声の感じで、ああ、こいつはやっぱりあの京太郎だ・と確認できたところだじょ。やれやれ」 京太郎「随分酷い言いぐさだな。俺の声のどこが間抜けだって? まあいい……そんな事よりも、ほい」すっ 優希「……?」 京太郎「ほら。ほい」ずいっ 優希「右手をさしだして、どういうつもりだ? タコスなら私のぶんしかないじぇ?」きょとん 京太郎「ちげーよ。タコスじゃなくて、もっと甘いものだ。チョコだよチョコ!」 優希「そんなものはないが」 京太郎「ハイィ?」 優希「ん? ほほう? フフフ、そうかなるほど! 今日はバレンタインデー。ゆえに京太郎は手あたりしだい、女の子にチョコレートをねだってるってわけだな!?」 優希「でも残念! 私は好きでもない男にチョコレートを渡すほど浅はかなオンナじゃあないじぇ!」どーん☆ 優希「私のみもちのかたさを誇らしく思え、京太郎!」びしっ 京太郎「」 優希「な、なんだ? なんで固まってるんだ? ……ま、まさか、そんなことないと思うけど……期待してた、とか?」 優希「で、でも……まさかで、しょっ? 京太郎に、私が、そんな……!?」 京太郎「ああ……優希なら、俺にくれると思ってたんだけどな……」 優希「~~!」ぷしゅー 優希「あ、あ……」 京太郎「いや、いいんだ。考えてみたらお前にチョコ貰ったから何だ・ってハナシだよな。悪い、忘れてくれ」 優希「…………な、なぬう!? ふ、ふんっ、失礼な奴め……!」 優希「まあタコスにチョコレートをいれてみるっておいしそうな想像をさせてくれたところは感謝だじぇ♪」 京太郎「はいはい。絶対マズいだろうけどな」 ――部室―― 京太郎「お疲れさまです! 部長!」 まこ「おう。今日は元気がええな」 京太郎「へへ、肩でも揉みましょうか? 日ごろから何かと気を遣う事が多いでしょう」 まこ「人を老人みたいに言うな。なんじゃ今日は? えらい調子がええようじゃが」 京太郎「ま、初心に戻って、先輩を労う気持ちを思い出したってトコっすね」にやにや まこ「はぁ……? そう言えば、京太郎に渡すものがあったんじゃった。ほれ、こっちに来い」 京太郎「!」 京太郎(やっぱり配慮の無い同級生連中とは違うな。染谷先輩はわかってるわ) 京太郎「はい、何でしょう!」たたっ まこ「ほれ」すっ 京太郎「……何ですか、コレ?」 まこ「見た通りじゃけえ。先日執り行った卓の牌譜じゃ」 まこ「やる気は感じるが、京太郎はまだまだ見切りが甘いことがわかる牌譜じゃ。いつも通り、わしなりに問題点を分析して、アドバイスも書き加えておいたんじゃが……」 まこ「そんな顔をするな、京太郎。面倒じゃろうが地道な努力は必ず結果に繋がる。次の県予選では絶対に戦える。京太郎が戦う気持ちを失わなければ――…」 京太郎「はは。ははは……」がくがく 京太郎「先輩……! ありがとうございます! 俺、頑張ります! 麻雀頑張ります!」くわっ 京太郎「うおおおおおお! 優希、咲、和! やるぞ!! 席につけぇ!」 優希「万年焼き鳥がなんか燃えてるじぇ♪」 京太郎「何とでも。俺は変わる。強くなってお前らと対等に戦ってやる!」ぎらん 咲「……! この感じ――…京ちゃんから、これまで感じたこともない気配が――!?」 京太郎「……」ごおっ まこ「ほう……」 和「す、須賀くん……!」 ――帰り道―― 咲「京ちゃん、今日はほんとう凄かったね! まさか私の嶺上牌を盗られるとは思わなかったよ」 咲「正直に言うとね、京ちゃんと麻雀して、今日初めて、ワクワクしたんだ」 咲「だから……明日からも楽しもうね!」にこっ 京太郎「そうだな」 咲「あ……そ、それとね、京ちゃん。実はね? えっと……」 京太郎「もったいぶるなよ。チョコレートじゃないんだろう」 咲「も、もう、どれだけ欲しいのっ? 別に渡したくなくて渡さなかったわけじゃないのっ」 京太郎「……?」 咲「私の口から言うのは、ダメだよね。この先の道、ちょっと京ちゃん一人でいってくれる?」 咲「私、ここで待ってるからさ」にこ 京太郎「??? どういう――…」 咲「も、もう。京ちゃんは何も考えず、ただこの先の道を一人で行ってくれればいいの! ほら!」ぐいぐい 京太郎「おいおい、押すなよ。わかったから。行けばいいんだな?」 咲「うん」にこにこ 京太郎「わかったわかった。全く、何をにこにこ笑ってるんだか……」  すたすた 京太郎「……真っ暗だな」  すたすた 京太郎「……? 人影?」  すたすた 和「……」もじもじ 京太郎「の、和!?」 和「す、ストップ! 止まって下さい!」 京太郎「え。お、おう」ぴた 和「落ち着いて落ち着いて何でもないような顔のままで何でもないような……」ぶつぶつぶつぶつ 京太郎(??? 独り言か? 聞こえないな) 京太郎「つーか、何で和はそんな街灯もないとこにぽつんと立ってるんだよ。危なくないか」 和「だ、大丈夫です!!!!」 京太郎「そ、そうか。ならいいんだけどさ」 京太郎「それで。どうしたんだよ。和の帰り道はこっちじゃないだろう」 和「――…」すう 京太郎「……?」 和「す、須賀くん!!!」たたたっ  ぽすんっ 京太郎「!?」 京太郎(気付けば、和が急にこっちに駆け寄ってきて、俺の胸に何かを押し当てていた) 京太郎「和!?」 和「う、うけ、うけっ」 京太郎「な、なになに!? え!?」 和「~~っ! 受け取って下さい!! それじゃあ!!! また明日!!!!」  たたたっ 京太郎「……な、何だったんだ。一体」 京太郎「ってか、和、走って行っちゃったけど、やっぱりそっちは和の帰り道じゃないだろうに……」 京太郎「……それで、何だコレ?」 京太郎(和に押し付けられたものを見ると、小奇麗な包装がされていて、ピンクのリボンで結ばれている四角い箱だった)  どくん 京太郎「こ、これって」 京太郎「いや、落ち着け。まさか。あの和だぞ。そんな筈は」 京太郎「あ、咲! いつの間に隣に……な、なんだ、ニヤニヤして。何だよ、何か知ってるのか!? どういうコトか説明してくれ!!」 咲「えへへ、私の口からはダメって言ったでしょ? ほら」 咲「開けてみたら――…?」 京太郎(その後、俺の人生は何もかもうまくまわり始め、目も眩む程のデジタル戦法で俺は県予選を軽々突破し男子高校生でトップに輝いた) 京太郎(それもこれも恋人の親身な指導のお陰だ。俺の恋人。彼女は大学に進み法律の勉強をしているが、麻雀を辞めたわけじゃなく、プロを志望しているようだ) 京太郎(俺は高校を出てすぐプロ雀士になり、名を上げてそこそこ稼げるようになった。名声に眩んで寄ってくる女の子も増えたが俺には心に決めた恋人がいる) 京太郎(そう、バレンタインにチョコレートをくれた、ただ一人の運命の人がね) カンッ

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