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自分は地味だ。私、津山睦月はそう思っている。私の周りは可愛い女の子や綺麗な女の子ばかりで、私はそれが羨ましかった。 女としての魅力なんてない自分なんかどうせ誰にも相手にされない。男達は私よりも加治木先輩や妹尾さんを選ぶだろう。 と、昔の頃はそんな劣等感を抱えて生きていた。 今は違う。今の私には心の底から自慢できる事がある。それは・・・ 京太郎「睦月さん、今日は何処に行きましょうか?」 睦月「う、うむ・・・京太郎が望むなら何処にでも」 彼が、須賀京太郎が私の恋人であるという事だ。 始まりは麻雀部での大会の時。仲間の勝利を子供の様に喜ぶ京太郎を見て、私は恋に落ちた。 だけど・・・彼は中性的ながらも綺麗に整った顔立ちに高身長とまさに女の子にとって魅力的な外見で、私の様な地味な女の子なんて見向きもしないだろうと殆ど諦めていた。 そんな京太郎と再会したのは全国大会で会場を歩いていた時だった。 睦月『あっ・・・・』 自動販売機の近くの椅子で一人座りながらジュースを持っている京太郎を見つけたのだ。 京太郎『・・・・』 京太郎の表情は何故かとても悲しそうで、そんな京太郎の姿を見て私は無意識のうちに彼に声をかけていた。 睦月『あっ、あの・・・・君は清澄高校の須賀京太郎君・・・だよね?』 京太郎『ん?あ、あなたは鶴賀学園の・・・』 睦月『津山睦月だ・・・どうしたんだ?一人でこんな場所にいて・・・』 京太郎『いえ、別になんでもありませんよ!ちょっと疲れて休憩しているだけですので・・・』 京太郎はなんでもないといった様子で笑いながら手を振る。 だけど私にはそれが先ほどの悲しそうな顔を隠す為、無理に笑っている様に見えて・・・。 睦月『辛い事があるなら私に話してみないか?誰かに話す事で気が楽になると私は思うんだが・・・』 京太郎『そ、そんな!津山さんに話せるような事なんて何も・・・』 睦月『大丈夫だ、私は絶対に誰にも話さない。約束する』 私は真剣な表情で京太郎の顔を見つめる。そんな私を見て京太郎も観念したのか、先ほどの暗い表情に戻りぽつりぽつり話し始めた。 自分が最初、麻雀が楽しくなって麻雀部に入部した事。 そして幼馴染みである宮永咲さんを麻雀部に誘った事。 だけど、その宮永さんが自分よりも遥かに腕前が上で不思議な力を持っていた事。 宮永さんや他の仲間達の活躍を見ているうちに自分の居場所が無くなりつつあると感じている事。 そして、自分はこれからどうしたらいいのか分からなくなってしまった事。 度々、言葉を詰まらせながらも京太郎は話してくれ、話し終えた頃には彼の目には涙が浮かんでいた。 京太郎は自分と同じ劣等感を抱えている、彼の姿を見て私はそう思った。 そして、誰かが彼の側にいてあげなければ取り返しのつかない事になるかもしれないという事も。 それからというもの私と京太郎は毎日会い、話をするようになった。最初のうちはお互いに遠慮がちだったが日を重ねるうちに仲も深まっていき。 京太郎『それじゃあ睦月さん、近いうちにそちらにも行きますから!』 睦月『う、うむ!いつでも待ってるぞ!』 付き合いは長野に戻ってからも続いていった。 とはいえ、京太郎とのそれは男女の付き合いというよりも友人同士の付き合いの様なものであって私自身も、京太郎が地味な私を女として見ているはずはないだろうと考えていた。 京太郎『睦月さん・・・・俺と付き合ってくれませんか?』 睦月『・・・・へ?』 だから、京太郎の方から告白された時は自分は幻術か何かにかけられたのではないかと自分の耳を疑った。 だってあり得なかったから。幼馴染みの宮永さんでも、私なんかでは遠く及ばない美少女である原村和さんでもなく私を、こんな地味な私を選んでくれた事が。 睦月『な、なんで私なんだ京太郎?お、お前ほどの男なら私なんかよりももっと良い女の子と・・・つ、つき合えるだろ?私よりも綺麗な女の子の方が・・・』 京太郎『何を言っているんですか睦月さん。睦月さんだって十分綺麗な女性だと俺は思いますよ』 睦月『そ、そんな事・・・・』 京太郎『それに・・・あの時、心が折れそうな俺を支えてくれたのは他ならぬ睦月さんです。睦月さんが側にいてくれたから、俺は今でも麻雀を続けてられるんです。もし、睦月さんがいなかったら俺は・・・・ダメな方向に進んでいたと思います』 睦月『京太郎・・・・・』 京太郎『もう一度、言わせて頂きます。須賀京太郎は、津山睦月を心の底から愛しています。どうか・・・俺とお付き合いしていただけないでしょうか?』 私の手を握り、私の目をじっと見詰めながら静かに告白してくる京太郎の顔は恐らく一生忘れる事はないだろう。 だって私にとってその姿は、絵本に出てくる、素敵な王子様そのものだったから。 睦月『・・・・本当に私でいいのか?』 京太郎『もちろんです』 睦月『・・・私を選んで後悔しない?』 京太郎『後悔する理由なんてありません』 睦月『・・・うっ、ぐす・・・!』 京太郎『む、睦月さん!?』 睦月『うれしい・・・・!本当に・・・嬉しい・・・・グスッ・・・』 私は嬉しさのあまり、子供の様に泣き出してしまった。恥ずかしいと気持ちも情けないという気持ちも微塵もなかった。 ただただ、幸せな気持ちが私の心の中で満ち溢れていた。 そんな私を京太郎はただ優しく笑って抱き締めてくれたのだった。 今でも私は自分を地味な女の子だと思っている。けれども私はそれでも構わない。 そんな私を愛してくれる、世界で一番大好きな人がずっと側にいてくれるから。 睦月「ところで京太郎の誕生日なんだが、京太郎は何が欲しい?」 京太郎「そうですね・・・・睦月さんと二人だけで一緒にいられる時間、ですかね?」 睦月「えっ・・・?」 京太郎「俺は睦月さんと一緒にいられればそれでいいんです。それが俺にとって最高のプレゼントですから」 睦月「京太郎・・・」 ああ、やっぱりこの人を好きになった事は間違いではなかった。私はなんて幸せ者なのだろう。 これからもこの幸せが続いて欲しい。大好きな人といられるこの小さな幸せがずっと。 睦月「京太郎」 京太郎「はい?どうしました睦月さ・・・」 チュッ・・・ 京太郎「んむっ・・!?」 睦月「大好きだよ、京太郎・・・♪」 カンッ

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