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淡「ふふんっ♪」 午前9時半、事前に打ち合わせしていた時間まであと30分の猶予があるが、大星淡は既に待ち合わせの駅前に到着していた。 この日のために、淡は先週に購入したばかりの服を引っ張り出してきた。 淡「まーだ、かなっ!」 淡の煌めくような金髪に映える赤いチェック柄のコートは、派手すぎる気がして友達と遊びに行くときはどうしても着ていく気がしなかった。 短めに詰めたフレアスカートも、狙ってる気がして早々に着ていけるものじゃない。 それもこれも、これからここに訪れるヤツに見せるために必死にコーデした組み合わせだ。 京太郎「おーい、淡ー!」 淡「来た……っ!」 思わず、淡はその場で飛び跳ねるように方向を後ろに転換させた。 駅の出口からは、自分と同じ髪色の少年……須賀京太郎ことキョータローが現れた。 京太郎「あもう来てたのか、待たせちまったか?」 淡「ううん、今来たと…………ころ?」 あれほど待ちわびていた待ち人が来て、弾んだ心は、しかし一気に萎んでしまった。 待ち合わせしていた駅は地下鉄のもので、出口も下から上に登る階段で構成されている。 だから、彼の後ろにいる者の姿に、一瞬気が付かなかった。 淡「…………なんで?」 照「おはよう、淡」 淡「……なんでテルーがいるの?」 京太郎「いや、部の買い出しをするって話をしたら付いて来るって言ってきて……」 そう、今日は麻雀部の備品の買い出しのために出かける事になっていた。 故に、デートという訳では無かったのだが、キョータローと二人きりでという予定だったし、何よりもその買い出しが終わったら本当にデートに洒落込もうと目論んでいた。 京太郎「おっ、なんか今日のカッコー、すげー可愛いな!」 淡「…………ありがとう」 嬉しいはずなのに、全然嬉しくなかった。 照「ねえねえ、京ちゃん京ちゃん、私はどう?」 京太郎「照さんも可愛いですよ」 照「本当?ありがとう」 まるで媚びるように、テルーは京太郎に接する。 その表情も、取材の時の表面だけの営業スマイルとは全然違う、凄く自然で嬉しそうな笑顔が浮かんでいた。 京太郎「それじゃあ行こっか」 淡「…………」 京太郎「…………どうしたんだ淡?何怒ってんだ?」 淡「怒ってないっ!」 京太郎「怒ってるじゃん……」 照「いいから、行こっ」 淡「ああっー!?」 あろう事か、テルーはキョータローの腕をガッチリと抱きつくように掴んできた。 京太郎「ちょっと、照さん!?」 照「こうしないと、はぐれちゃうから」 京太郎「まあ、確かに……」 テルーには迷子癖があるけれど、これは絶対に狙ってやってきている。 淡「…………えいっ!」 京太郎「お、おい!淡まで!?」 淡「こうしないと…………どっかに行っちゃいそうだから」 京太郎「え、俺が?」 淡「そうだよ!」 キョータローと二人きりじゃないのはスッゴく残念だけど…………今日はいっぱいいっぱい甘えるんだからね!覚悟してよねっ!! 京太郎「あの、歩きにくいんだけど……手を繋ぐだけじゃ、駄目?」 「「駄目!」」 京太郎「はい…………」 短いけどもういっこ、カン!

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