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嫉妬という単語を辞書で引くと、自分の愛する者の愛情が他に向けられることをうらみ嫌うと出る。 そう、この意味合いからすると、男が付き合ってる女以外の女と何らかの接触をする際に、 愛情がなければ嫉妬してはいけない。 例えば街中で見知らぬ女性に道を聞かれた時、丁寧に応対しても嫉妬はされない。 まして、食事後の支払いで釣銭を受け取る際に女性店員と手が偶然触れても嫉妬してはいけない。 何故ならそこには、愛情なんて存在しないから。嫉妬の定義に反する行為はもはや、 単なる被害妄想に成り下がる。 それはとてつもなく見苦しく、失笑を誘発するような愚行だと言って差し障りない。 勘違いすることは誰にでもある。 見知らぬ女が嬉しそうな表情をしていたと錯覚したのかもしれない。 だから俺は、彼女に、宮永咲に、明白な意思を伝えた。お前以外の女性に気が向くことなんてありえない、 そういう意味の言葉を何度も、そして誠実に伝えた。 だが咲の嫉妬深さを常軌を逸脱していた。付き合い始めた頃は多少の焼餅で片付いた。 だが今は他の女と話しただけ、いや、俺の目に他の女が入っただけで声を荒げて俺を叱責する。 何故だ?俺は理解できなかった。 考え抜いた結果、一つの結論に至った。 咲の嫉妬は、ある種の幻想だ。 俺の弁明に耳を貸さず、優希や和等の他の女とほんの些細な接触があっただけで情緒不安定になるのは、 もはや改善できるものではない。 嫉妬妄想、ありもしない事象を無意識的にでっちあげ、本来あるはずもない不安を感じる。 無意味なことだと思う。 恋愛において一番大事なことは何だと問われたら、俺はこう答える。 「信頼関係」 どんなことがあってもお互いを信じ、欠点を相互補完できる関係。 相手のことを思いやり、高め合える関係。それが俺にとっての、恋愛の理想系だ。 残念なことに、咲の間にはそれがなかった。 相手の立場に立ち最大限の愛情を注いだ。だが現実は、お互いを高め合うことなく、 逆にマイナスとなった。 付き合っておよそ半年、蓋を開けてみれば双方とも疲弊していた。 俺はありもしない事実を突き付けられ、それを弁明することに心身を削られ、 咲はありもしない妄想に怯えることに心身を削られた。 一体何が悪かったというのだろうか。それはきっと、どちらかに落ち度があると 短絡的に言えるものではない。 どうしようもないことだった。運が悪いことに、俺と咲は相性が良くなかった。それだけだ。 だから俺は咲と別れることにした。 咲は今までとは比べものにならないぐらい取り乱したが、お互いの将来を考えれば俺の決断は 妥当だと思う。 彼女もいつか気付いてくれるに違いない。俺は何も、間違ってはいない。 ――――――こうやって、論理的に、頭のいい奴が考えるようなことを考えてれば、自分を保てる。 たぶん、今日で十日目だ。あと、何日で、いつになったら、俺は自由になれるんだ? ああ、なんで俺、咲に監禁されてるんだ?なあ、誰かおしえてくれよっ!? ……腹、減った。 ずっと、何も食べてない。頼む、何でもするから、ご飯、たべたい。 ……いや、駄目だ、屈したら、俺が俺じゃなくなる。 おい、十日も、学校行ってないんだぞ。幾らなんでも変だと、思うだろ? だれか助けに来いよ…… 部長…染谷先輩…和…優希…嫁田…ハギヨシさん…… 誰でも良いから早く、来て……お願い……します…… ――――十五日後 咲「京ちゃん、ご飯が出来たよ~」 あぁ…… 咲「お腹すいたでしょ?ほら、京ちゃんの大好きな美味しい美味しいごはんだよ?」 もう…… 咲「はい京ちゃん、あーん」 無理だ…… ほら、やっぱり私の思った通り。京ちゃんは、ちょっとだけ厄介な病気にかかってただけ。 愛をもって看病すればすぐに良くなるんだから。 京ちゃんったら、嬉しいからってそこまで泣くことないのに。 やっぱり病気だから多感になってるんだよね。 京ちゃんが正常に戻るまでちゃんと看病してあげるからね。 ……ううん、今まで以上に、私がいなきゃ生きていけないようにしなきゃ。 時間はかかると思うし大変なんだろうけど、でもね、何だか楽しそう。 和ちゃんにも優希ちゃんにも出来ない、私だけにしか出来ない京ちゃんへの看病…… ……えへっ、えはっ、あはっ、あははっ何で、こんなっ、うふっ、楽しいんだろ、 ははっ、うひっあははっ!! 京ちゃん!私の大好きな京ちゃん!!これからもずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと一緒だよっ! カンッ

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