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「誕生日が夏休みのど真ん中やとな」
恭子は両手の中に収めた小箱を弄びつつ、恥ずかしげに頬を染めて言った。
「誕生日って、友達には中々祝って貰えんかったわ」
「ああ、やっぱりそうなんですね」
「せやから友達の誕生日パーティがほんま羨ましくて」
子供染みた羨望だが、当時の恭子にとっては大きな悩み事だった。
自分は蔑ろにされている、そんな被害妄想まで浮かぶほど。
「去年はインハイの合間にみんなが祝ってくれたんやけど、ただのOGになった今年はそうもいかへんし」
「それじゃ、今年はサプライズにはなりましたか?」
してやったり、と彼は口角を釣り上げる。身長差のせいで上から降りかかる声が癪に障った。
いつもの恭子なら、「調子のんな」と怒るところだろう。後輩には優しくも厳しく接するのが彼女だ。
そしてきっと、彼もそれを予期している。身構えているのがよく分かった。
「うん、驚いたわ」
だからこそ。
「でも、めっちゃ嬉しい」
「えっ」
素直に、頷いてやる。戸惑う彼と目を合わせられず、恭子は明後日の方向を向く。
自分で言っておきながら、激しい羞恥心に見舞われていた。手の中の箱をぎゅっと握ってしまう。
「こ、これ、空けてもええか」
「も、もちろんですよ。恭子さんのために用意したんですから」
誤魔化すように訊ねると、何故か彼も上擦った声で返事をしてきた。何なのだろう、この空気は。
らしくない、と恭子は自省しつつも。
開いた箱から出てきた彼のプレゼントに、頬を緩ませてしまうのだった。