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京太郎「ふふん~♪」ニヤニヤ
優希「…」
和「…」
まこ「…」
久「…」
清澄高校の麻雀部は異様な静けさを保っていた。
京太郎がニヤニヤと笑みを浮かべ紙を広げてずっと見ているのだ。
事情を知らない4人は不気味に思い遠巻きに京太郎を見ている。
久「だ、誰か行きなさいよ」
まこ「おんしがいけば良かろう…」
優希「部長が雑用ばかりさせるから…」
和「須賀君…」
4人が京太郎に声を掛ける様に言い合う。
それでも誰も行かずに押し合いが始まる。
それほどに今の京太郎は不気味だった。
和の胸を見ているときと違った笑みで本当に嬉しそうなのだ。
4人が気まずい時間を過ごしていると残りの1人が遅れてやってきた。
咲「遅れました!」
4人「「「「来た!」」」」
咲「はい!?」
~4人説明中~
咲「あ~…手紙届いたんだ」
和「手紙…ですか?」
咲「うん、京ちゃんの文通友達」
優希「文通…似合わないじぇ」
久「確かに」
まこ「おんしらは…」
京太郎「流石にひどくね?」
優希と久の素直な言葉に少し傷ついた。
久「それでいつからやってるの?」
京太郎「え~と…彼此10年以上ですかね」
和「それはまた…長いですね」
まこ「ほほ~よく続いたものじゃな」
優希「三日で飽きそうだじぇ」
京太郎「それはお前だろ」
何をー!何だよーと2人はじゃれ合い始める。
そんな2人を尻目に久は京太郎が読んでいた手紙を拾い読み始める。
暫く他愛のない会話が続き最後に”園城寺 怜”と名前が書いてある。
久「園城寺…もしかして千里山のエースの?」
京太郎「部長知ってるんですか!?」
優希「にょわ!?」
久の呟きに京太郎は過剰に反応し優希を押しのけ久に迫る勢いで食らいつく。
京太郎の勢いに押され久は顔を引きつりながらも答える。
久「えぇ…大阪の千里山女子エース 園城寺 怜なら知ってるわよ?」
京太郎「大阪…千里山…確かそんな事前に書いて…」
優希「いきなりどうしたんだじぇ?」
咲「京ちゃん相手の顔とか知らないから」
和「10年以上続けていてお互い知らないんですか?」
咲「うん、気になるけど今の関係を壊したくないって、だから聞けないらしいです」
久「なるほどね」
事情を理解すると久は京太郎から離れ何やら雑誌を漁り始めた。
暫くすると探していたものが見つかったのだろう。
一冊の雑誌を捲りながら京太郎に近づいていく。
久「この子よ」
京太郎「!」
京太郎は久から雑誌を受け取るとそのページを食い入るように見つめる。
差し出された雑誌には1人の少女が載っていた、大人しそうな美少女の写真が載っており
下の欄にはプロフィールも書いてある。
京太郎「趣味…麻雀に文通」
咲「間違いなさそう?」
和「確立は高いと思います」
京太郎「…この子が…怜なんだな」
京太郎はようやく会えたと呟き、暫くの間雑誌を見続けた。
-怜side-
怜「~♪」
泉「嬉しそうですね、園城寺先輩」
浩子「そうやね」
その日千里山の部室では怜がものすごく嬉しそうにしていた。
何時もなら死にそうな顔をして竜華に膝枕をねだっているはずなのだが…
今日はそんな素振りもなく楽しげに麻雀を始めている。
そんな怜を2人が眺めているとセーラと竜華がやってきた。
竜華「ただいま」
セーラ「帰ったで」
浩子「お疲れさんです」
泉「あ、お疲れ様です」
竜華「どうかしたん?」
泉「園城寺先輩が…」
セーラ「怜が?」
浩子「えらい、上機嫌なんです」
2人が怜のほうに顔を向けると、確かに嬉しそうな怜が居る。
竜華「あー何時ものやね」
セーラ「そんな時期やったか」
泉「?」
浩子「何が何時ものなんです?」
2人は意味がわからず首を傾げた。
竜華「文通友達から手紙がきたんよ」
泉「文通ですか?」
セーラ「せやせや、もう10年もしとるらしいわ」
泉「ながっ!?」
浩子「ほほぉ~」
竜華「なんでも風船に手紙をつけて飛ばしたのが切っ掛けらしい」
泉「…ロマンチックですね」
怜「竜華!セーラ!」
怜は麻雀を終え2人に気づいたのか駆け寄ってくる。
そしてそのままセーラに抱きついた。
怜「セーラ!今日付きおうてくれる?」
セーラ「あーいつものやな、わかった」
浩子「何時もの?」
竜華「便箋選びや、男の子向け用の選ぶの手伝ってもろうとんねん」
竜華「なんでも捨てられないようにやて」
泉「あー」
せーら「そこ!納得すんなや!」
怜「今日は何書こうかな♪」
怜「それにしても」
京太郎「それにしても」
京太郎&怜「「会って見たいな~」」
久「会える方法あるわよ?」
京太郎「え?」
久「彼女は千里山のエース…千里山は全国大会の常連でしょ?」
久「須賀君が個人戦で全国に行けば会えるチャンスあるわよ?」
久の思いがけない言葉に京太郎は少しの間唖然とするもすぐに理解したのかそのまま久に土下座をする。
久「はぇ?」
京太郎「部長!!!」
久「は、はい!」
京太郎「雑用もしっかりやりますので…俺に麻雀教えてください!!!!」
久「あー…」
京太郎「お願いします!!!」
京太郎は久の言葉を待ち土下座のまま待つ、少しすると上からため息をつく音が聞こえる。
顔を上げなさいと久がいい京太郎は顔を上げた。
久「後輩の面倒を見るのも先輩の役目…ね」
京太郎「部長?」
久「大会まで時間ないけどしっかりとついて来なさいよ?」
京太郎「ぶ、部長」涙目
久「皆もいいわね?」
咲「うん、頑張ろうね」
和「ん~まずは牌効率からですかね?」
優希「しょうがない犬だじぇ」
まこ「雑用頑張ってくれてたしの」
京太郎「ありがとうございます!!!」
~以下省略~
それから皆で猛練習をし大会の日が訪れた。
京太郎(まさか…本当に決勝までいけるとは)
なんとか決勝に残りあと少しの所まで届いた。京太郎は、はやる胸の鼓動を抑え会場へと歩いていく。
???「ククク…よろしく」
???「ご無礼」
???「……楽しもう」
京太郎「無理かもしんない」
-怜side-
怜「ぼへ~」
竜華「自分で言うもんやないで?それ」
浩子「あっ」
何時も通り部活でのんびりとしているとパソコンを弄っていた浩子が声をだした。
怜「…どないしたん?」
浩子「これ…園城寺先輩の文通相手じゃないですか?」
怜「どれや!!!」
浩子「わぁ!?」
膝枕していた怜は即座に反応し浩子のパソコンを奪い取る。中を覗くと4人の男性が麻雀を打っていた。
怜「えっと…えっと…男子個人戦?」
浩子「そーです、長野の決勝戦ですわ」
怜「決勝戦…京君、全国に来るん!?」
浩子「本人かわからんですし…勝ったらの話ですけどね」
怜「この人が…」
浩子「あ…無視ですか」
怜はパソコンに映る人を見る、それぞれの男性の下に名前が表示されており確かに 須賀 京太郎 と出ている。
手紙に書かれてた通りの金髪で名前も学校名も一致していた。この人で間違いないと知り怜は応援を始めた。
だが…
怜「あ…」
竜華「うわ…なんやこれ、男子ってこんなにレベル高かったっけ?」
浩子「これは…プロレベルですね」
無残にも京太郎は3人に蹂躙されて終わった、いや化け物相手に最後まで点数を残し耐え切った。
それでも全国にいけるのは3人まで…京太郎は行けなかった。
怜「…」
竜華「残念…残念やったな」
浩子「いいデータ取れましたけど…」
そういって浩子はチラリと怜を見た、怜は嬉しそうな顔から一転し今にも泣きそうだった。
そんな怜の頭を優しく竜華は撫で慰める。
怜(駄目やった…会えないんかな……京君悲しそうな顔しとったな)
怜は自分と同じく悲しそうな顔をしていた京太郎を思い出す、今すぐ会いたい会いに行きたい。
だが自分にも大会がある、それ以外も距離の問題や金銭面なにより学生という身分が親が許さないだろう。
いや…会いに行こうとすれば行けるのだ、全てをかなぐり捨てれば…でも出来ない。
そんな勇気のない自分に怜は嫌気がさした。
怜「……京君」
怜が一言呟くが答える者はいない。
-京太郎side-
京太郎「あー負けちまった」
京太郎は自室で思い出す、自分は負けたのだと…
京太郎「…」
京太郎は茫然自失で自分の部屋に帰ってくると泣いた…思いっきり泣いた。
暫く泣くと涙が出なくなった、その後も暫くボーとしているとなんとか気持ちが持ち直った。
あぁ…仕舞わないと と言って京太郎は胸ポケットから一通の手紙を取り出す。
その手紙はボロボロで所々汚れている。
この手紙は一番最初の手紙だ、お守り代わりに持っていたのだ。
その手紙を暫く眺めた後大切に大切に宝箱の中に仕舞った。
-怜side-
「次は…」
怜「…」
怜は放送を聴きながらボーと眺めていた。彼女が立っている場所は全国大会の会場だ。
あれからせめて自分だけはと頑張り全国大会の切符を千里山が勝ち取った。
嬉しい反面、彼が居ないのだと知ると悲しくなった。
それでも竜華達の為に…何より頑張っていた京太郎の為にここに立っている。
怜(でも…でも…会いたかったな)
怜が唇を噛み気持ちを抑えようとした時だった。声が聞こえた…何度も何度も動画を見返し聞いた声だ。
???「頑張れーーー!!!清澄ーーー!!!!」
怜「なん…で…?」
怜は見た…金色に輝く彼の髪を、暫く唖然とするがすぐに彼がここに居る理由に思い当たり確認の為後ろを振り向く。
後ろには竜華達が居てニヤニヤとこちらを見て笑っている。清澄が全国大会に来ることを知っていたのだろう。
怜「む…」
竜華「アハハ」
怜は抗議の意味も込め頬を膨らませ涙目で睨む、そんな怜に竜華達は軽く笑い視線をそらした。
暫く睨むと竜華達から視線を彼に合わせる。動画でも手紙でもない…本物の彼に…
怜は竜華達に呼ばれるまで京太郎を見続けていた。
怜「はぁ…はぁ…どこや?」
竜華「怜落ち着き…疲れて倒れてしまうで?」
怜「でも…でも…」
開会式が終わると怜は駆け出し京太郎を探し始める。気持ちが逸る、会いたい…会いたいと
辺りを見渡し探すがホールは既に人がいっぱい居て探すのが難しかった。それでも諦めずに探していると…
セーラ「怜ぃーーー!!!こっちや!!」
怜「!」
セーラの大きな声が聞こえた。セーラの指差すほうに、居た、彼だ…。
彼は自分達と同じぐらいの女性達と会話をしている、清澄の人達だろう。
怜は駆け出し残り10Mの距離まで近づいた。
胸が痛いほど鳴っている、それでも息を少しずつ整え京太郎に向かって歩く。
残り5M…京太郎が怜に気づいた。
怜は反射的に立ち止まった、そんな怜を京太郎は驚いて見ている。
どうやらあちらも自分を知っているらしい、それが無性に嬉しかった。
京太郎は怜の姿を確認するとわたわたと自分の服を弄り何かを探し始める。
そんな彼の後ろで清澄のメンバーがニヤニヤと笑っていた。
暫くすると京太郎はポケットから赤いゴム状の物を取り出し息を込め始める。
息を吹き込められ徐々に大きくなっていく…
赤い赤い風船に京太郎は紐と手紙をつけた
それを上に投げ飛ばす…風船はただ空気を入れただけなので重力と手紙の重さで下に落ちてくる
長野と大阪…本来なら届かない距離だった
でも、でもこの時だけは…この瞬間だけは…怜に届いたのだ
怜は震える手で手紙を外し広げた
最初の文に目を通す
それを見て京太郎は声をだした
手紙の文と同じ言葉を……
『はじめまして…俺の名前は……』
カンッ