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両親が死んだ。
そんな一報が届いたのは暑い夏の日だった。
大学が夏休みに突入し俺は小遣い稼ぎのためにほぼ毎日のように夜勤のバイトに入っていた。
だからだろうか、その連絡を聞いたのは夜勤明けで仮眠をとった後の夕方頃だった。
俺はすぐさま財布と携帯を持って下宿先のアパートを飛び出した。
その後、どうやって故郷に戻ったのかはよく覚えていない。
気が付いたら俺は霊安室に置かれた両親の死体と対面していた。
原因は事故だった。
信号を右折する際に対向車が過ぎるのを待っていたらトラックが信号を無視して突っ込んで親父たちを轢いたらしい。
相手はその日自分の子供が生まれて浮かれていたらしい。
わが子と妻に会いたい一心で気持ちが焦り、結果事故は起こった。
俺は何も言えなかった。
俺の目の前で泣きながら土下座するトラックの運転手を見て、色々言いたいことがあったはずだ。
恨み言の一つや二つあったはずだ。
けれど言えなかった。
俺は、ただもういいんです。あなたに何を言ったて両親は帰ってこないのだから。
そんなこの世でもっとも残酷な言葉を叩き付けて家に帰った。
葬式は、親戚のことを両親はどちらも言わなかったしそれらしい人も来た記憶もないため簡単に供養と火葬だけした。
家には老いたカピーがいた。
カピバラの寿命は7年から12年ほどらしいので高校時代から飼っているカピーもだいぶ年だろう。
観察してると寝床からほとんど動かない。
両親はカピーの面倒をどうやって見てたんだろう?
いやに広く感じるようになった実家のリビングでそんなことを考えていたら。
ピンポーン、と。
家のインターホンが鳴った。
出るのも億劫な俺はそれを無視していたんだが。
ピンポーン、ピンポーンとまた鳴った。
それをさらに無視したら。
ピピピピピピピピピピピピピピピピピンポーン、ってうるさいわ!。
俺は勢いよく玄関の扉を開ける、と。
「お?やっぱりいたねぇ」
最近知り合った小柄な日本代表雀士が居た。
「なんでここにいるんですか」
俺は、少し不機嫌気味に咏さんに話しかけた。
「ん~?なんでだろうねぃ」
そう言いながら咏さんは「ちょっと上がるよ、知らんけど」などと言って俺の腕下を通って家に入っていった。
俺はため息をついて家の中に戻った。