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――西暦20XX年。人類は絶滅への秒読み段階に入っていた。 21世紀初頭におきた遺伝子異常による男女の出生比の変化は収まる事なく、 数十年経った今や世界の男女比は1:10という異常な数値になっていた。 そして、これだけの男女比ともなれば当然のように起こるのが男性を巡っての女性間のトラブルである。 老人も含めた全年代で1:10という男女比は額面よりも遥かに男性の希少価値を上げ、 高校生など今やクラスに一人男子が居るか居ないか。といったレベルである。 だが、どう足掻こうと男が増えるワケでもない。 故に、各国政府はこの問題を強引に解決する事にした。 ――現行の倫理に真っ向に反するまっこと合理的な解決法。 それが『自由結婚法』である。 「――と、まぁそんなワケで可決された自由結婚法ですが、これは無条件での一夫多妻を認めているわけではありません。 なにせ次世代の子どもをより多く産んでもらう為の法律ですから。 基本条項は3つ。 1つ目が『配偶者達の収入合計が家族全員を養えるだけある事』、 2つ目が『個人資産、借金等は全配偶者で頭割りする事』、 そして3つ目が『子どもの相続権は第三者機関に委任する事』。この3つです。ここはテストに出ますよー?」 「げっ、マジかよ……」 欠伸を噛み殺しながら聴いていた所を慌ててノートにメモする。 本当ならこんな事せずに寝ていたいのだが、 この先生はテストに出すと言えば必ずテストに出すのだ。しかも、書き方を変えて――そういう風に数少ない男の先輩である内木先輩から聞いている。 この世界は狂っている――それは、この世界に生きる誰もが気づいていながら無視している事だ。 埋まらない男女比、それでも回る社会、変わらない日常――気づこうが気づくまいが利益も不利益も無い。 なので誰も口にも出さない。 だけど、ふとした瞬間に思う事がある。 ――もし、この世界がもっと普通だったなら……と。 きっと、自分は誰か一人を普通に好きになって、普通に愛して、普通に家族になって……そして普通に死ぬ。 この世界との違いなんて、せいぜいが友人の男女比と家族の人数の違い程度だろうに、それが酷く羨ましく感じる時がある。 俺を好きになってくれた皆が疎ましいワケでもないのに、だ。 「なんなんだかなぁ……あとで咲とかに相談してみっか……」 こうして、須賀京太郎の日常は進む。彼と、彼を好きになった少女達と共に。変わることも無く、平然と―― カンッ!!

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