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「ん…」 波のかえってくる音が聞こえ須賀京太郎は、目を覚ました。 「ここは…っ!」 痛む頭を押さえ立ち上がろうとすると体の節々が悲鳴を上げ顔をしかめた。 それでも今の状況を確認しようと周りを見渡す。 目の前には、森々とした森が広がっており後ろには果てしなく青い海。 わけがわからなかった。 「なんで 俺は砂浜に寝ているんだ?んー」 疑問に思いながら思い出そうと唸った。 ことの始まりは清澄の麻雀大会の全国優勝だった。 優勝を祝おうと透華さんが龍門淵主催のパーティーに知り合い含め咲達を招待してくれた。 映画でしか見たこと無いような豪華客船に豪華な食べ物の数々、楽しかった、幸せだなと 考えながらあてがわれた部屋で眠りについた。 幸せな時間は長くはなかった…大きな揺れで目を覚まし慌てて廊下にでれば 悲鳴、怒号、物が壊れる音、爆発、火、傾く船 地獄のような状況がかわるがわる場面を変えていく 気づいた時には救命具をつけ海の中から傾いて沈んでいく船を唖然と眺めていた。 しばらく眺めていたが、はっとなり救命ボート探すべく周りを見渡し始めた。 (やばい、やばい、やばい、このままじゃ俺も…っ!!) 夜の冷たい海にさらされ体が震え自分の状況を理解していく。 幸運なことにボートはすぐに見つかった、自分の後ろ20mぐらいの所に浮かんでいた。 (良かった!波が強いけどなんとかいける) もともと中学時代に運動部に入っていたこともあり運動は得意だ、泳ぎも普通の人以上に泳げる 自信も少なからずあった。 だが、さぁ泳ぎだそうと手と足を動かそうとしたとき 聞こえてしまった。 「…た…たすけ」 女性の声だろうか? 反射的に声がするほうを向いてしまった、見てしまった。 京太郎から見て左方向に10mぐらいの所に必死にもがき助けを呼ぶ女性がいた。 (どうする!?助けに行くか?でも俺は) 泳ぎに自信があろうと京太郎はただの高校生だ。 救命具を着けてるとはいえ暗い海の中一人の女性を抱えて行動することになる。 ボートから離れ波の強い中女性を助けに行く・・・自殺行為だ 助けたとして二人とも助かる見込みもない。 (しょうがないよな?しょーがない) 心の中で何度も呟く、そして京太郎は助かるべく行動を始めた。 女性に向かって泳ぎ始めた。 「だぁー!しょーがない!しょうがないよなっ!?」 少し涙声になりながら声を張り上げ気合を入れる。 「ちくしょぅ…人が良すぎるだろう」 何とか女性の下にたどり着く 女性も気づき京太郎の首にしがみつく 「っ!だ…大丈夫ですか?」 首にしがみつかれて動揺してしまう。暴れないでくれよと願いながら声をかける。 「げほっ…ごほ…はぁはぁ」 女性は震えながら顔を下に向け息を整えている、暴れる心配はなさそうだ。 自分の体を少し後ろにそらし女性を自分の体の上に乗せる形を作る。 (良かった間に合った) 状況は悪くなった、不安も増した だが女性を助けることができ安堵した。 何分経ったろうか?女性が少し落ち着き顔を上げて京太郎と目が合った。 その直後 今まで以上の大きな音が聞こえ二人は船のほうに顔を向けた。 暗く黒い海の壁が二人を飲み込んだ。 (やっちまったなぁ…) 波に揉まれ 自由を奪われ 意識が海の底に沈んでいく。 せめてこの人だけはと女性を強く抱きしめながら… 流れ着いたんだ…ここに そして、思い出した…全て思い出した、思い出したくなかった。 同時に不安、哀しみ、虚無感、絶望が一気に心を締め付け涙が一粒頬を濡らした。 「げほ…ん…ここは」 京太郎が絶望でうちしがれる横で声がした。 京太郎が助けたであろう女性が目を覚ました。 「…」 京太郎はそれに気づくも声をかけず、ただただ立ちつくす。 女性は座ったまま周りを見渡し状況を確認していく一通り行動すると女性は下を向いてしまった。 二人は喋らない…動かない、何分経ったろうか?女性が顔を上げた。 その目は絶望も不安もない強く強く希望を宿した目をしていた。 「なぁ…」 声をかけ京太郎の手を掴む。 京太郎が反応し顔を向ける。 京太郎が目にしたのは優しげに儚く微笑む女性の顔だった。 絶望していた京太郎ですら思わず見とれしまうほど綺麗だった。 「ありがとな」 「え…?」 女性の言葉が一瞬理解できず疑問の声を出してしまった。 「君のおかげで私は助かることができたんや。ありがとな!」 冷え切った心が暖かくなっていく心に火が灯った。 「私の名前は園城寺 怜や。君の名前は?」 「須賀…須賀 京太郎です」   自己紹介をした後、唐突に怜は下を向き京太郎…京…と呟き考え込んでしまう。 心配になり声をかけようとした時、怜が顔を上げた。 「決めた!きょーくんや!」 「は…?」 何を決めたのか怜はドヤ顔でそんなことを言った。 「は…?やない 京太郎のあだ名や 呼びやすいやろ?」 「はぁ」 怜は、なんや気の抜けた返事やなーと何が可笑しいのかカラカラと笑っていた。 「私の事は、怜って呼んでな?敬語もいらんで」 「え…でもいきなり呼び捨ては…」 「むー助けてくれたときは積極的だったくせに」 「それは…」 なんだろうか、さっきから押されっぱなしだなーと少し笑った。 「ほら、名前呼んで?」 「と…怜さん?」 「さんはいらん!もう一度!ワンモアや!」 「と…怜!」 やけくそ気味に名前を呼んだ。 「うん!」 怜は輝くような笑顔で京太郎の声に答える。 (不安もあるどうしたらいいのかさえわからないし 咲達がどうなったのか知らない でも…) 京太郎は怜がいまだに座り込んでるのに気づき怜に手を差し出す。 怜はその手をきょとんと不思議そうに見るがすぐに理由に気づき手を取った。 「これからよろしくな 怜」 「ふふ…よろしくな きょーくん」 この人が一緒ならどんな未来も乗り越えていける そんな気がした。 カン!
「ん…」 波のかえってくる音が聞こえ須賀京太郎は、目を覚ました。 「ここは…っ!」 痛む頭を押さえ立ち上がろうとすると体の節々が悲鳴を上げ顔をしかめた。 それでも今の状況を確認しようと周りを見渡す。 目の前には、森々とした森が広がっており後ろには果てしなく青い海。 わけがわからなかった。 「なんで 俺は砂浜に寝ているんだ?んー」 疑問に思いながら思い出そうと唸った。 ことの始まりは清澄の麻雀大会の全国優勝だった。 優勝を祝おうと透華さんが龍門渕主催のパーティーに知り合い含め咲達を招待してくれた。 映画でしか見たこと無いような豪華客船に豪華な食べ物の数々、楽しかった、幸せだなと 考えながらあてがわれた部屋で眠りについた。 幸せな時間は長くはなかった…大きな揺れで目を覚まし慌てて廊下にでれば 悲鳴、怒号、物が壊れる音、爆発、火、傾く船 地獄のような状況がかわるがわる場面を変えていく 気づいた時には救命具をつけ海の中から傾いて沈んでいく船を唖然と眺めていた。 しばらく眺めていたが、はっとなり救命ボート探すべく周りを見渡し始めた。 (やばい、やばい、やばい、このままじゃ俺も…っ!!) 夜の冷たい海にさらされ体が震え自分の状況を理解していく。 幸運なことにボートはすぐに見つかった、自分の後ろ20mぐらいの所に浮かんでいた。 (良かった!波が強いけどなんとかいける) もともと中学時代に運動部に入っていたこともあり運動は得意だ、泳ぎも普通の人以上に泳げる 自信も少なからずあった。 だが、さぁ泳ぎだそうと手と足を動かそうとしたとき 聞こえてしまった。 「…た…たすけ」 女性の声だろうか? 反射的に声がするほうを向いてしまった、見てしまった。 京太郎から見て左方向に10mぐらいの所に必死にもがき助けを呼ぶ女性がいた。 (どうする!?助けに行くか?でも俺は) 泳ぎに自信があろうと京太郎はただの高校生だ。 救命具を着けてるとはいえ暗い海の中一人の女性を抱えて行動することになる。 ボートから離れ波の強い中女性を助けに行く・・・自殺行為だ 助けたとして二人とも助かる見込みもない。 (しょうがないよな?しょーがない) 心の中で何度も呟く、そして京太郎は助かるべく行動を始めた。 女性に向かって泳ぎ始めた。 「だぁー!しょーがない!しょうがないよなっ!?」 少し涙声になりながら声を張り上げ気合を入れる。 「ちくしょぅ…人が良すぎるだろう」 何とか女性の下にたどり着く 女性も気づき京太郎の首にしがみつく 「っ!だ…大丈夫ですか?」 首にしがみつかれて動揺してしまう。暴れないでくれよと願いながら声をかける。 「げほっ…ごほ…はぁはぁ」 女性は震えながら顔を下に向け息を整えている、暴れる心配はなさそうだ。 自分の体を少し後ろにそらし女性を自分の体の上に乗せる形を作る。 (良かった間に合った) 状況は悪くなった、不安も増した だが女性を助けることができ安堵した。 何分経ったろうか?女性が少し落ち着き顔を上げて京太郎と目が合った。 その直後 今まで以上の大きな音が聞こえ二人は船のほうに顔を向けた。 暗く黒い海の壁が二人を飲み込んだ。 (やっちまったなぁ…) 波に揉まれ 自由を奪われ 意識が海の底に沈んでいく。 せめてこの人だけはと女性を強く抱きしめながら… 流れ着いたんだ…ここに そして、思い出した…全て思い出した、思い出したくなかった。 同時に不安、哀しみ、虚無感、絶望が一気に心を締め付け涙が一粒頬を濡らした。 「げほ…ん…ここは」 京太郎が絶望でうちしがれる横で声がした。 京太郎が助けたであろう女性が目を覚ました。 「…」 京太郎はそれに気づくも声をかけず、ただただ立ちつくす。 女性は座ったまま周りを見渡し状況を確認していく一通り行動すると女性は下を向いてしまった。 二人は喋らない…動かない、何分経ったろうか?女性が顔を上げた。 その目は絶望も不安もない強く強く希望を宿した目をしていた。 「なぁ…」 声をかけ京太郎の手を掴む。 京太郎が反応し顔を向ける。 京太郎が目にしたのは優しげに儚く微笑む女性の顔だった。 絶望していた京太郎ですら思わず見とれしまうほど綺麗だった。 「ありがとな」 「え…?」 女性の言葉が一瞬理解できず疑問の声を出してしまった。 「君のおかげで私は助かることができたんや。ありがとな!」 冷え切った心が暖かくなっていく心に火が灯った。 「私の名前は園城寺 怜や。君の名前は?」 「須賀…須賀 京太郎です」   自己紹介をした後、唐突に怜は下を向き京太郎…京…と呟き考え込んでしまう。 心配になり声をかけようとした時、怜が顔を上げた。 「決めた!きょーくんや!」 「は…?」 何を決めたのか怜はドヤ顔でそんなことを言った。 「は…?やない 京太郎のあだ名や 呼びやすいやろ?」 「はぁ」 怜は、なんや気の抜けた返事やなーと何が可笑しいのかカラカラと笑っていた。 「私の事は、怜って呼んでな?敬語もいらんで」 「え…でもいきなり呼び捨ては…」 「むー助けてくれたときは積極的だったくせに」 「それは…」 なんだろうか、さっきから押されっぱなしだなーと少し笑った。 「ほら、名前呼んで?」 「と…怜さん?」 「さんはいらん!もう一度!ワンモアや!」 「と…怜!」 やけくそ気味に名前を呼んだ。 「うん!」 怜は輝くような笑顔で京太郎の声に答える。 (不安もあるどうしたらいいのかさえわからないし 咲達がどうなったのか知らない でも…) 京太郎は怜がいまだに座り込んでるのに気づき怜に手を差し出す。 怜はその手をきょとんと不思議そうに見るがすぐに理由に気づき手を取った。 「これからよろしくな 怜」 「ふふ…よろしくな きょーくん」 この人が一緒ならどんな未来も乗り越えていける そんな気がした。 カン!

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