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咏「んー…」パタパタ 京太郎「どうしました?深刻な顔して」 咏「いやぁ…バレンタイン、お高いチョコ買って来たぐらいで何もしないままに終わっちまったなーとねぃ…」 京太郎「あぁ…まぁしょうがないですよ。急にお仕事入っちゃったんですし…それにほら、その代わりに3連休になりましたし」 咏「けど、付き合い始めのバレンタインじゃん?何かしらしたいって思うもんなんじゃね?知らんけど」 京太郎「分からなくはないですけどね…俺はこうやって一緒に過ごすだけでも満足ですけど。咏さんは何がしたかったんですか?」 咏「んー…チョコをさ、手作りしたかった」 京太郎「手作り、ですか?」 咏「そだよ。綺麗なラッピングもしたかったし、待ち合わせてデートもしたかった。これでもさ、私だって女だよ?」 京太郎「…」 咏「中学も高校も昼も夜も麻雀漬け。青春も人生も麻雀に捧げてきたような女でもさ、普通の子みたいな夢だってあるんさ」 京太郎「…」 咏「初めてのバレンタイン。期待しちゃいけなかったのかい?望んじゃいけなかったのかい?いくら仕事だからってさ、この日に入れるのはあんまりなんじゃないかい?」 京太郎「咏さん」 咏「化け物みたいに強いから、麻雀が何よりも好きだから。普通の生活しちゃいけないっていうのか?他人とは違うから麻雀に縛られないといけないっていうのか?」 京太郎「咏さん」ギュ… 咏「…ん、ごめん」 京太郎「謝るようなことはしてませんし、されてませんよ」 咏「そーかい」 京太郎「えぇ」 ――― ―― ― 京太郎「ねぇ、咏さん。これからちょっと出掛けませんか?」 咏「出掛けるって…どこに?」 京太郎「決めてませんけど…まだ開いてるお店だってあるでしょう?ぶらつくだけってのもありですし」 咏「別にかまわんけど…なんでさ?」 京太郎「理由なんてありませんよ。強いて言うなら…俺にとっては、寝るまでがバレンタインだから、ですかね?」 咏「…ぷっ、なんだいそれ?」 京太郎「そもそも時間に縛られるのがおかしな話なんですよ。バレンタインを過ごすのは俺達なんだ。世間がどう言おうと関係ありませんよ」 咏「私達は私達の好きにやるってか?」 京太郎「俺たちらしくていいでしょう?それに、今日は晴れてて――月が、綺麗ですから」 咏「っ!…っとーに、気障だねぇ…京太郎はさ」 京太郎「俺だってカッコつけたくなる時があるんですよ。似合ってました?」 咏「はんっ!そんなのとーぜん―――」 「わっかんねー!」 カンッ

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