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京太郎「あの、竜華さん。少しいいですか?怜さんのことで相談が……」
竜華「怜の?どうしたん?」
京太郎「怜さんの未来視の能力、あれって絶対代償ありますよね?普段はそんなようには見えないですけど、
前に姫松高校と練習試合した時……」
竜華「……ちょっとフラついて帰って来たな、確かに。うん、せや。怜の能力には代償が存在しとる」
京太郎「それって一体何ですか!?まさか、危険なものじゃ……!」
竜華「……怜にとってはちょっと危険かも知れん……あれな、使うと体力持ってかれるらしいねん」
京太郎「そんな……だったら!」
竜華「うん、ウチらもそれ知ってから止めたんよ。でも、怜は部のみんなの為にってやめへんねん。やから、
せめて『ときシフト』敷いて、ってなってんねんよ」
京太郎「……聞く限り、1巡先を読む、ってことですよね?何回くらい使うと危ないんですか?」
竜華「実は1巡やったら割と回数こなせるみたいやねん。前、放課後練習やけど一日の全卓で使っても倒れへんかったって
言ってたし」
京太郎「その言い方だとまるで……」
竜華「せや。怜はやろうと思えば2巡先を見ることも出来る。けど、これは絶対にさせへん。ウチらが禁止にした。
なんせ、怜がこれを始めて使った時、たった一回で倒れてもうたんやから……
まあ、そのおかげで能力の代償を知れたようなもんやけど」
京太郎「……恐らくですけど、怜さん、まだ2巡先を練習してますよね?」
竜華「……せやろな。そうとしか思えへん時が確かにあるから。けど、シラを切られたらもうどないしようも無いから……」
京太郎「なるほど……スイマセン、竜華さん、時間取らせてしまって」
竜華「ううん、ええよ。京くん、こんな重い話聞かせといてなんやけど、京くんも一緒に、怜の事支えてやってくれる?」
京太郎「ええ、勿論です。怜さんは俺の尊敬する先輩の1人ですから」
竜華「そっか。ありがとうな、京くん」
京太郎「いえ……」
~~~~
怜「あ~、疲れた~。京太郎~、膝枕~」フラフラ
京太郎「またですか?しょうがないですねぇ。はい、どうぞ」
怜「ん、おーきに。あ~、やっぱ京太郎の膝は落ち着くわ~」
京太郎「お疲れ様です、怜さん。しばらく休んでいていいですよ」ナデナデ
怜「ほうか?ほんなら、お言葉に甘え……て…………Zzz」
京太郎「…………」ナデナデ
京太郎(いくら皆のためとは言え、怜さんの能力は怜さんにとって危険すぎる……かと言って一方的に封印するのも忍びない。
…………だったら)
京太郎「これしかない、よな。ゴメンな、母さん。でも少しくらい、許してくれ……」 キ…ン
セーラ「ロン!6000、さんぜ……っ!?」ゾクッ
竜華「ん?どうかしたん、セーラ?」
セーラ「い、いや、なんか今、妙な寒気が……」キョロキョロ
竜華「??クーラー入れすぎやったかなぁ?」
~~時は流れて全国準決勝の日~~
怜「ほな、行ってくるわ」
竜華「怜、臆しなや!」
セーラ「そうやぞ!チャンピオンとか言っても俺らと同じ高校生やねんからな!」
京太郎「怜さん、頑張ってください。でも、あまり気負いすぎないでくださいね」
怜「大丈夫や。ウチに任せとき!」
怜(1巡は完璧、ダブルも家で練習はしてきた……流石に乱用はヤバイんやろうけど、後半戦に絞れば……いけるはずや!)
~~~~
照「ロン、8000」
煌「すばらっ!?」
恒子『前半戦終了~~!終わってみればチャンピオンの圧倒的一人浮き!他の3校は後半戦で巻き返せるのかーー!!』
テクテク
怜「ただいま~」
竜華「おかえり、怜。後半戦、いけそう?」
セーラ「怜が1巡先見てようがお構いなしって感じにバカスカ和了ってたもんなぁ」
怜「ん、多分大丈夫やと思う。ちょっと点差大きなってもうたから捲るのは無理かも知れんけど、
せめてピッタリ後ろに付くとこまでは行ったるわ」
京太郎「怜さん、頑張ってください。微力ながら俺も力をお貸ししますので……」
怜「おう、任せとき。京太郎も応援頑張ってくれな?」
京太郎「勿論です」
~~~~~
照「ロン。10200」
恒子『決ぃまった~~っ!!チャンピオン、これで怒涛の6連続和了!!止まりません!止められません!!』
怜(あかん……このままやと点差が……!まだ東場やけど、やるしかない……!)
――――
セーラ「うわ、マジかぁ。えげつないなぁ、チャンピオン」
竜華「怜……」
京太郎「きっと大丈夫ですよ、怜さんなら。あ、ほら今度はいい配牌ですよ」
セーラ「お、ホンマや!しかも2巡で一向聴!これやったらいけるはずや!」
京太郎「ええ、チャンピオンの快進撃もきっとここまででs……っ!」
竜華「??どないしたん、京くん?」
京太郎「い、いえ。ほら、怜さんがあまりにもドンピシャな牌を引いたからビックリしまして」
竜華「え?あ、ホンマや!聴牌や!」
セーラ「おっしゃ!良形3面張!って、ええ!?なんでそっち切んねん、怜!」
――――
怜(このツモで聴牌。捨て牌は二択。やけど、待ちの広なるこっちはチャンピオンに鳴かれて新道寺の捨て牌で和了される……
ホンマ恐ろしいやっちゃな……でも、これであんたの連続和了も終いやっ!)タンッ!
照「……」タン
怜「それ、ロンや。8000の4本場は9200!」
照「っ!?はい……」
――――
竜華「やった!怜が和了った!」
セーラ「よっしゃ、チャンピオン止めたで!まだ親番も残っとるし、いけるで!」
京太郎「…………」
――――
怜(……なんやろう?なんかおかしい……確かに練習はしとった。けど、それでもダブル使ってこれは……)タン
玄「……」タン
照「ロン。1300」
怜「っ!」
怜(速いっ!また更にギア上げてきたっちゅうんか!?……いや、考えてもしゃあない。どんな訳か知らんけど、
ダブルが使えるんやったら……)
怜「あんたの好きにはさせへん……!」
――――
怜『ツモ!2900オール!』
恒子『おお~っと、千里山・園城寺選手、チャンピオンのお株を奪う3連続和了!!これは面白いことになってきたぞ~っ!!』
セーラ「なんや、怜、めっちゃ調子ええんちゃうん?」
竜華「うん、うん!これはもしかしたらもしかするかも……!」
京太郎「…………ぐっ……!」
セーラ「およ?どないかしたか、京太郎?」
京太郎「あ……い、いえ、何でもありません」
竜華「……なあ、京くん。さっきから随分と調子悪そうやけど、ホンマに大丈夫?」
京太郎「ええ、何も問題ありませんよ」ニコ
セーラ「マジでやばかったらちゃんと言えよ?怜のこともあるし、俺らはそういうの慣れっこやからな」
竜華「せやで。遠慮なんていらんからな」
京太郎「はい、ありがとうございます……」
京太郎(はは、これはキツイな……でも、正解だった。やっぱり、これは怜さんには背負わせてはいけないものだったんだ……)
――――
怜(あれからチャンピオンは更にギア上げてきよった……けど、ウチの方もダブルでなんとか食いついたった。
オーラスの今、チャンピオンが16万でウチが11万……せめてもう一和了詰めたいけどダブルやと心もとない……
やったら……!)
怜「悪いな、みんな。ちょっと無理させてもらうで……」ボソ
怜(トリプルやっ!!)カッ!
――――
京太郎「っっ!?……うぐっ!」
竜華「!?きょ、京くん!?」
セーラ「おい!どないしたんや、京太郎!!」
京太郎「うぁ……」
京太郎(これは……ダメだ、引き受けきれない……っ!このままじゃ、怜さんが……!)
京太郎「ぅくっ……りゅ、竜華、さん……」
竜華「!!なんや?どうしたん?」
京太郎「と、怜さんに、念のため救急車、を……お願い……しま、す……」ガクッ
竜華「きょ、京くん!?京くんっ!!」
セーラ「こらアカン!泉!救護室に連絡入れろ!」
泉「は、はいっ!!」ダダッ
――――
怜(っ!やっぱトリプルは無茶やったんか……?でも、見えたで。最後の最後、跳満への道が……!)フラッ
怜「っとと……はは、流石にキツイなぁ……でも、これで」タン
煌「ポンッ!」タン
怜(2巡目、聴牌……)タン
玄「……」タン 照「……」タン 煌「……」タン
怜(3巡目、ここやっ!)タンッ
玄「……」タン
照「……」グッ 照「…………」タン
怜「ロンや!12000!」
照「……はい」
恒子『先鋒戦、終~~了~~!!なんとなんと、千里山高校後半戦怒涛の追い上げ!一時大きく空けられた差を
3万弱にまで詰めてきたーーーっ!!』
――――
コツ… コツ…
怜「ただいm」
竜華「怜!大変や!京くんが……京くんが!!」
怜「ちょっ、竜華、どないしたん?京太郎になんかあったん?」
セーラ「さっき、オーラスん時にいきなり倒れてもうたんや!」
怜「っ!?」
怜(南入くらいから?オーラスの時?それって、ウチがダブルとか使い始めたのと……なんか嫌な予感がしよる……!)
怜「竜華!京太郎は今どこおるん?!」
竜華「い、今は会場の救護室や。一応浩子が付いてくれとるんやけど……」
怜「ウチが付く。ちょっと聞きたいことも出来たことやし、丁度ええから」
竜華「で、でも、怜、あんたもちょっとフラついとるやん!」
怜「ウチやったら大丈夫やから。竜華達は泉の応援しといたってや。ほな行ってくるわ」パタン
~~~~
京太郎「……う……ここ、は……」
怜「京太郎、起きたんか?」
京太郎「え?あ、怜さん。スイマセン、迷惑かけちゃいましたね」
怜「……なぁ、京太郎。正直に答えてや?京太郎が倒れたんとウチの能力のこと、なんか関係あるやろ?」
京太郎「……何を言ってるんですか、怜さん。どうしてそんなこと……」
怜「京太郎。ウチは真剣に聞いてるんや。もう一度だけ聞くわ。どうなん?」
京太郎「…………確かに、あると言えばありますね。ですが、これは俺が勝手にやったことで……」
怜「やっぱり……!どういうことなん、京太郎!?さっきの試合、ウチはダブル使うても全然しんどくならへんかった。
やから、オーラスには思い切ってトリプルも使った。けど、あんた、もしかして……!」
京太郎「……はい、ちょっと”会話”して、怜さんが消費するはずの体力を俺から奪うように矛先を変えてもらったんです」
怜「……どういう、ことやねん。なんであんた、そんなこと出来んねん」
京太郎「皆さんには話してませんでしたが、俺は大阪に来る前は鹿児島にいたんです。そこにあるとある神社、
俺の実家にもあたるそこでは、時々特殊な人間が生まれます。
怜さんは永水女子の神代小蒔さんを見たことはありますか?」
怜「永水の?一応あるけど……」
京太郎「彼女もそういった特殊な人間の一人。要は、神様をその身に降ろす、いわゆる降霊術を神様レベルにまで
引き上げたようなものです。
そして……俺もその一人です。俺が降ろすことが出来るのは、須賀神社が祀る祭神・須佐之男命。
八百万の神々に顔がきく彼に協力してもらって怜さんに力を与えているモノに話をつけたんですよ」
怜「やからって……ウチが体力取られへんでもあんたが危険な目にあっとったら意味ないやんか!なんでこんなこと……」
京太郎「怜さんはいつも周りのみんなの為に努力していました。俺はそんな怜さんを尊敬しています。
ですから、少しでも怜さんのお役に立ちたい、と、そう思っただけですよ」
怜「……京太郎。それ、今すぐ取り消してくるんや。ウチのせいで京太郎が倒れるんは見たない」
京太郎「嫌です」
怜「な、なんでや!ウチはあんたのこと心配して……!」
京太郎「怜さんこそ、竜華さん達が止めているにも関わらずダブルや、果てはトリプルまで使ったんでしょう?」
怜「そんなん、ウチはみんなの為にウチに出来ることを……」
京太郎「俺も同じですよ。千里山麻雀部が勝利を収めるために俺が出来る限りのこと、それをやっているだけです。
幸い、俺は怜さんより体力がありますからね」ニコ
怜「……どうしても、か?」
京太郎「どうしても、です」
怜「…………京太郎。あんたの感覚でええから、これだけは教えといて。ダブル、何回まで耐えられる?」
京太郎「…………6回。恐らくそれが限界です。トリプルを入れるのでしたら……」
怜「いや、もうトリプルは使わへん。こんなことになってもうてんから……」
京太郎「……そうですか。ですが、それだとチャンピオン相手は辛いのでは?」
怜「はっ、ウチを誰やと思てんねん。ウチは関西の名門・千里山の誇るエース、園城寺怜やで!」
京太郎「……ええ、そうでした。怜さん。勝ってください。みんな、それを望んでいます」
怜「当たり前や……あんたもちゃんと見ときや。ウチの勇姿を」
京太郎「ええ、勿論です」
その後、千里山高校は無事決勝に進出。その決勝先鋒戦では準決勝より一段と激しい攻防が繰り広げられた。
怜はまたも照に収支で敗れはするも、その差は僅かに1万点以内であった。そして……
チームの結束をより強固にし、千里山高校は辛くも優勝をもぎ取った。
優勝に沸き立つ部員達の中には、苦しそうな汗を浮かべながらも満面の笑みを零す京太郎と、
こちらも満面の笑みに更に涙を浮かべて抱きつく怜の姿があったとか……
カン!