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洋榎「はぁー、つまらん。部活終わっても誰も捕まらんし」 洋榎「一応誕生日なんやけど……このままだと、今年もおかんと絹におめでとう言われて終わりやな」 洋榎「めげるわ……恭子やないけどめげるわ……ん、この匂いは唐揚げ?」 京太郎「そこで俺の登場ですよ!」 洋榎「チェンジで」 京太郎「それが誕生日を祝いに来た後輩に対する言葉かよぉ!」 洋榎「うっさい、もうなに持ってきたとかもわかっとるからはよ出せや」 京太郎「なんだよ、この仕打ち……やっぱり母性の象徴に乏しい人は心まで狭いのか……」 洋榎「あぁん!?」 京太郎「ちょ、痛い痛い! そこは弁慶も泣いちゃいますって!」 洋榎「泣け! 泣いてうちに詫びろ!」 京太郎「あだだだだっ!」 ―――――― 洋榎「で、プレゼントは?」 京太郎「あれだけ蹴っておいて……」 洋榎「うぐ……悪かったわ」 京太郎「え、なんだって?」 洋榎「悪かったって言うとるやろ!」 京太郎「しょうがないなぁ、許してあげますよ」 洋榎「……このにやけ顔、どつきたい……!」 京太郎「なんか言いました?」 洋榎「いやー、プレゼント楽しみやなーって」 京太郎「そうでしょうそうでしょう。なんたって俺の自信作ですからね」 洋榎「ま、匂いで大体わかっとるけどな」 京太郎「そこまでは俺も想定済み……驚くのはここからだぁ!」 洋榎「……なんやこれ」 京太郎「ズバリ! 生クリーム唐揚げですよ!」 洋榎「それは見ればわかるわ! どないな理由でこんな暴挙に出たかっちゅーことを聞いとるんや!」 京太郎「いやぁ、実は唐揚げとケーキで迷いまして……だからその二つを組み合わせてみようかなと」 洋榎「それで唐揚げの上にクリームを乗っけたと」 京太郎「はい!」 洋榎「アホかっ!」 京太郎「あいたっ!」 ―――――― 洋榎「信じられん……! レモンをかけるのみならず生クリームぶっかけるとは……!」 京太郎「えー、だってマヨネーズつけて食べる人だっているし……」 洋榎「今度お前が食べるケーキの上にマヨネーズかけたろか!?」 京太郎「それこそ暴挙でしょ!」 洋榎「うっさい、同じことやらかしとるやろが!」 京太郎「この際偏見は捨てて食べてみてくださいよっ!」 洋榎「食えるかっ」 京太郎「俺の心がこもってるのにっ」 洋榎「ぐぬっ……しゃあない、一口だけ食ったるわ」 京太郎「どうぞどうぞ、箸はこちらです」 洋榎「あむ……ん?」 京太郎「どうですか?」 洋榎「案外……いや、めっちゃうまいやん!」 京太郎「でしょ?」 洋榎「唐揚げになにかつけるんは邪道や思とったけど、これはありやな」 京太郎「俺たちはまさに今、新しい道を開拓したんですよ」 洋榎「せやな……今までぼろくそ言って悪かったわ。謝る」 京太郎「いいんですよ。こうやって主将っていう理解者を得られたんですから」 洋榎「……その主将ってのもいい加減堅っ苦しいもんやな」 京太郎「そうですかね?」 洋榎「うん……せ、せやからな? 今日から名前で呼ぶことを許す!」 京太郎「はぁ、名前ですか」 洋榎「その代わり、うちも名前で呼ばせてもらうからな!」 京太郎「俺はかまいませんけど……」 洋榎「じゃ、練習やな……きょ、京太郎?」 京太郎「洋榎、さん?」 洋榎「京太郎」 京太郎「洋榎さん」 由子「……一体これはどういうことなのよー」 洋榎「ゆ、ゆーこ!?」 京太郎「いつの間に……」 由子「どういうことかって聞いてるのよー……」 洋榎「いや、これはっ、お互い認め合ったっちゅーか……」 由子「どうしてっ、唐揚げに生クリームが乗っかってるのよー!」 洋榎「へ?」 京太郎「よくぞ聞いてくれました! これは俺の革命的な閃きによる……」 由子「生クリームと言えばケーキ! 唐揚げにかけるなんて冒涜もいいところ!」 洋榎「あわわ……普段温厚なゆーこがすごい顔しとる……」 京太郎「いやいや先輩、それは偏見ってやつですよ。ここはまず一口……」 由子「そんな汚らわしいもの、食べられるわけがないのよー!」 京太郎「……いいでしょう、そこまで言うのならもう道は一つだ」 由子「須賀くん、私は悲しいのよー……」 京太郎「……」 由子「……」 京太郎「これは――」 由子「戦争は――」 「「避けられないっ!!」」 ―――――― 絹恵「せんぱーい? お姉ちゃんと須賀くん見つかりまし……ってなにこれ?」 洋榎「見事にはぶられてもうたわ」 絹恵「いや、なんで須賀くんと先輩がバトルかましとるの?」 洋榎「まさかゆーこがあそこでぶちぎれるとは……」 絹恵「お姉ちゃん、話見えないんやけど」 洋榎「話しも何もな……見たまんまや」 京太郎「さあっ、この唐揚げを食べるんですよ!」 由子「そうはいかないのよー! ケーキの名誉にかけてその存在を否定するのよー!」 絹恵「あちゃー、いつものか……まさか先輩がこうなるとは」 洋榎「京太郎もゆーこもうちのことそっちのけや」 絹恵「こうなったらもう仕方ないというか……あれ、お姉ちゃん須賀くんのこと今……」 洋榎「~~っ、べ、別に絹が思とるようなことはっ」 絹恵「まだなにも言うとらんよ?」 洋榎「……」 絹恵「まぁ、ようやっと素直になれてよかったんちゃう?」 洋榎「うっさい!」 カンッ

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