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「h48-36」(2014/06/08 (日) 23:50:33) の最新版変更点
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ウチは小さい頃から体が弱かった。
小学校に上がってもそれは同じ。
普通の日常を送るのが精一杯で、外で目一杯遊ぶなんて夢みたいな話やった。
子供なんて正直なもんや。外で一緒に遊ぶことも出来んウチには、友達なんてほとんど出来んかった。
「ときー!今日は一緒に遊ぼ?」
誰にでも優しくていつもウチを気にかけてくれる竜華。
「なんや、りゅーか、今日は中でか?おっしゃ、ほんならときも一緒やな!」
いつも明るくてウチにも嫌な顔せず話しかけてくれるセーラ。
この2人が例外やったんやろうなぁ。
でも、ウチも自分の体のことは分かっとったから、そんな境遇にも何とも思ってへんかった。
せやからかな?あの日もウチはいつも通りボーッと朝の先生の話を聞いてるだけやった。
「え~、皆静かに。今日は皆に1つお知らせがある。この教室で一緒に勉強する新しい子だ。君、挨拶出来るかな?」
「はい!長野から来ました、○○○○○です!よろしくお願いしますっ!」
転校生。普通ならクラス皆が沸き立って興味を持つ出来事。
事実、クラスメイトたちは転校生に質問の雨を浴びせてた。
でも、その転校生を一目見た瞬間、ウチは興味を失った。
その転校生はどう見ても周りの大勢と同じ、すぐに外に出て遊びたがるタイプにしか見えんかったから。
ウチがそんなんやから、結局その転校生とちょっとした関わりも持たんと1週間が過ぎてもうた。
「なぁなぁ。何で皆あの子誘わないんだ?俺、まだあの子と一度も遊んでないんだけど」
「え?あ~、園城寺さん?あの子はお外で遊ばないから」
「そうそう。始めは俺達も誘ってたんだけどさ~。体弱いから無理だってさ」
「ふ~ん……」
「なぁ、それよりさ、○○!今日はサッカーしようぜ、サッカー!」
「お~、いいな!やろうやろう!」
ある日の昼休みにふと聞こえてきた会話。
ウチが話題に上がるんも、もう随分珍しいことやったから今でも内容を覚えとる。
……思えばこの頃からなんやな。
セピア色でしか無かったウチの思い出に色が付き始めたんは……
その翌日やったかな?昼休みに入ると、また皆で外に遊びに行こうとしとった。けど……
「わりぃ、俺今日はパスな!」
「え~っ!なんでだよ~?」
「ちょっとやらなきゃいけないことがあるんだ。だから、ゴメンっ!」
「ちぇ~っ。でも、しょうがないか。いける奴は行こうぜ!」
あの転校生が珍しく教室に残ったらしいことが会話から分かった。
けど、ウチには関係ないこと、そう思って気にもしとらんかったら……
「園城寺さん。一緒に遊ぼうぜっ!」
「ふぇ?」
突然声を掛けられた。
「え?ウチ?でも、ウチ外いかれへんよ?」
「うん、聞いた。だから……ほら!」
そう言って転校生は満面の笑みでトランプとUNOを取り出しよったんや。
これまた突然のことで反応出来んと固まっとったウチに転校生は。
「あ、大丈夫だぜ?これ内緒だけどな?ほら」
そう言って箱の裏を見せてきた。
「江口さんから借りてきた奴だから、例え先生に見つかっても怒られるのは俺達じゃないぜ?」
わざとらしくキザってウィンクしてくる転校生に、ウチは遂に耐え切れんくなって吹き出してもうた。
「ぷっ…!あはは、あんた、何気に酷いやっちゃな!」
「お!やっと笑ってくれた!うん、やっぱり思った通り、園城寺さん、笑うとめっちゃかわいいじゃん!その顔見せたらもっと友達増やせるよ!」
「ちょっ!?い、いきなり何言ってんの!?あ、えっと…」
「あれ?まだ名前覚えて貰えて無かった?俺、須賀京太郎!よろしくな、園城寺さん!」
「う、うん。ウチは園城寺怜っていうねん。よろしく」
転校生、京太郎の言葉にテンパって、真っ赤になってもうて……
そっからスピードやらUNOやらやったはずなんやけど、どうにも覚えとらんわ。
それが、ウチが京太郎と始めてコミュニケーションを取った日やった。
その日からウチは変わった。
京太郎が引っ張ってくれて、竜華やセーラが手助けしてくれて。
ゆっくりやけど、ようやくウチもクラスの仲間として皆に溶け込んでいくことが出来た。
中学生になってからも京太郎は色んな世界をウチに教えてくれた。
カラオケとかボーリングとか、ウチでもやれんことない遊びをたくさん。
そんで、そのくらいからやったかな?
その頃にはいつも一緒におるようになった4人、ウチと京太郎、竜華とセーラ、揃って麻雀始めたんは。
いつまでもモタモタしとるウチと京太郎とはちごて、竜華とセーラはすぐに上手くなっとった。
中学3年の時には大会でも活躍して、2人とも千里山高校から声掛けられたくらいや。
ウチと京太郎はそれを祝福した。2人には推薦を受けるよう言った。
ほんで、ウチらは一般入試で後を追って、無事合格。
また4人で一緒にやれること、手を取り合って喜んだっけな。
竜華もセーラもホンマに強うて、2年の時には完全にレギュラーに定着しとった。
ウチは相変わらずやったけど。
何事もなく過ごせとった高校生活やったけど、2年の秋に大きい事件が起こった。
まあ、事件ゆうてもウチが倒れてちょっと三途の川見てきただけやねんけど。
それ以来、今までにも増して京太郎がウチを気にかけてくれるようになった。
先読みの能力の代償を知って、真っ先に止めたんも京太郎やった。
それは今も変わらん。全国に勝ち残って、ここまで上がってきてもずっと。
けどな、京太郎。何があっても、ウチはこの能力を捨てへんで?
だって、ウチ知っとるんやから。
京太郎がウチの世話を優先するあまり、麻雀に集中できひんで、実力が中々伸びひんかったこと。
個人戦で負けてもうて、裏でこっそり涙流しとったこと。
それは皆ウチのせいや。きっと京太郎は、そんなことない、って言うんやろうけど。
やから……
ウチは京太郎に、天辺から見た世界を教えてやりたい。
同じ高校ってだけかも知れん。ウチの自己満足かも知れん。
けど、ウチをモノクロのつまらん世界から救い出してくれた京太郎に、ウチから出来る恩返しなんて、これくらいしか無いと思っとるから。
『さぁ~~~っ!!全国2万人の高校生、その頂点を決める最後の戦い!その戦いの幕が今!切って落とされました!!』
待っててや、京太郎!
ウチが必ず、連れってたるからな!
カン!