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小鍛治健夜は家事が出来ない、という訳ではない。 確かにどちらかと言えば苦手な方だが、致命的に下手なレベルではない。 だから、非才の身でありながらいつも頑張っている義理の弟の為に、お姉さんが頑張って労ってあげようと意気込んだ――ところまでは良かった。 貰い物の西瓜を切ってあげようとしたら、運悪く雷が落ちてきて驚いた拍子に手元が狂ったり。 健夜「痛っ!」 京太郎「姉さん!?」 高級なお茶を振る舞おうとしたら、少し大きめの地震が来てお湯を零してしまったり。 健夜「熱ぁっ!?」 京太郎「大丈夫っ!?」 とにかく、運命に呪われているレベルで尽く失敗してしまい。 結果として、弟に余計な手間をかけさせてしまった。 普段は酒も煙草も吸わない彼女もコレには流石にメゲる。 恒子「両手が絆創膏だらけなのはそういうワケかー……」 健夜「やっぱり駄目なんだ……わたしは麻雀しか駄目なんだねこーこちゃん……」 アルコールで顔を真っ赤に染めて相方に愚痴る健夜。 普段は彼女をからかう立場の恒子もかつてないダウナーっぷりにかける言葉が見つからない。 健夜「だから私はアラフォーなんだ……こんな私は一生独り身の方が良いんだね……」 恒子「……いや、そんなことは無いみたいだよ?」 健夜「……え?」 京太郎「――あの、ここに姉がいると聞いたんですけど……」 京太郎に背負われて帰路につく夜。 逞しくなった義弟の体温を感じると同時に、情けなさも痛感した。 健夜「ダメなお姉ちゃんでごめんね……」 京太郎「そんなことないって」 健夜「でも今も、京ちゃんに迷惑かけてるし……」 京太郎「そんなこと言ったら、いつもは俺が迷惑かけてるし。仕事で疲れてるのに麻雀の指導までしてもらって」 健夜「別に、あれは私も楽しいから……」 京太郎「そういうこと。俺もこうやって姉さんの世話焼いたりするの楽しいし。お互い様ってヤツ」 健夜「……そっかぁ」 京太郎「そうそう」 健夜「……」ギュッ それに、背中に当たる感触は役得だし――などとは、流石に言えない。 まだまだ弟離れ出来そうにない姉と、姉離れ出来ない弟であった。 カンッ 健夜「頭痛い……」 京太郎「あんなに飲むから……ほら、水」 健夜「ん……」こくこく 健夜(もう……京ちゃんと結婚しよ) もいっこカンッ

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