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京太郎(北海道といえば名物が多くて大変だが、俺の腹はすでに決まっている。ジンギスカンだ。しかしどの店へ入れば……) 由暉子「たしか先輩からはこの店と……」 揺杏「ユキー、こっちこっち」 由暉子「あ、先輩。すいませんおまたせして」 京太郎(うむ、佇まいといい、客層といい、ここしかあるまい。いざ、ジンギスカン!) 店員「いらっしゃいませー!こちらへどぞー!」 京太郎(お、鞄とジャケット用のビニール袋。こういった気配りができる店はうまい店と相場が決まっているもんだ) 爽「しっかり食って“そこ”にたくわえろよー?」 由暉子「はいはい。ところで注文は?」 成香「いつもの通りですよ」 誓子「私たちにとってはね」 成香「ああ、そうか、しまった!」 京太郎(まずは烏龍茶だな。それに、このおすすめの熟成マトンと、フレッシュラム。あと野菜セットに……ん?これは?) 京太郎「すいません」 店員「はい」 京太郎「この、最初の野菜無料とは?」 店員「最初に無料で野菜セットをお出ししてるんです」 京太郎(そうか。なら野菜セットはいいな) 京太郎「なら、熟成マトンとフレッシュラムに、ホルモンセット、あと烏龍茶とライス大をお願いします」 店員「はいかしこまりました。それでは先に七輪に火をつけさせていただきます」 京太郎(おお、七輪の上に網ではなくジンギスカン鍋が置かれた。シュール) 成香「じっくり焼かないとだめですよー」 爽「おいしそー!」 揺杏「まだ焼けてないって。お腹壊すよ?」 京太郎(そう、ジンギスカンはじっくりゆっくり育てなければならない。焦らず、はやらずに) 店員「おまたせしていたしましたー」 京太郎(来た、肉と野菜とホルモン!正に黄金の組み合わせ!) 揺杏「んー、おいしー!」 由暉子「おいしい」 爽「ほーら、じゃんじゃん焼いてしまえー!」 京太郎(周囲に野菜を敷いて、真ん中に肉とホルモンをのせる。流れ出る旨味が野菜に行く。肉と同時に野菜も育てるのが流儀) 京太郎(焦らず、はやらず、烏龍茶で己を落ち着かせる……よし!) 京太郎「はふぅ、は、はむぅ、うはぅ!」 京太郎(んん!肉の旨味が野菜に流れ、その2つを米と一緒に口へ流し込む!ああ、俺は今、これほどなく幸福だ) 誓子「はい、あーん」 成香「じ、自分で食べれるよぅ!」 爽「ユキ……」 由暉子「却下です」 爽「ちぇー」 揺杏「なら私にあーんして?」 由暉子「どうぞ」 爽「なにぃ!?」 京太郎(野菜がここまで旨味をまとっていると、まるで野菜の食感の肉を食っているようだ) 京太郎(それに、特筆すべきはことマトンだ。臭みが強いと思ったが、確かにクセはあるものの、嫌味なクセじゃない。むしろ心地よいクセだ) 京太郎(ホルモンもうまい!甘い油が俺の腹をフルスロットルにさせている!) 京太郎「ふぅ……」 京太郎(怒涛の肉と野菜。そしてホルモンのアクセントが飽きのこない食事を演出してくれた……) 京太郎「すいません、烏龍茶おかわり」 店員「はい、かしこまりましたー」 京太郎(今日は追加で注文する必要がないほどボリューム満点だった) 店員「おまちどうさまです」 京太郎「んぐ、んぐ、ぐ、ぐ、ふぅ……」 ーーーーそして 店員「ありがとうございましたー!」 京太郎(試される大地。試されたのは、肉が焼けるまでの辛抱強さだった。そして、試練を乗り越えた先にあったのは、幸福) 京太郎(……お土産にカニでも買っていくか。まぁ、食べるのは自分だが) カンッ!

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