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三人とも大学生です
3月末
和「こちら、須賀京太郎くんです」
京太郎「たしか前に一度会ってると思うけど、はじめまして…みたいなもんかな」
憧「あ、新子憧です。ょろしく…」
和「須賀くんは少し…いえだいぶエッチなところがありますけど、信頼できる人ですので」
京太郎「貶すのか褒めるのかどっちかにしてくれない!?」
和「憧は男性が苦手だそうなので、あまり変なことはしちゃダメですよ須賀くん」
憧「ちょっと和!そんなことわざわざ言わなくても…」
和「須賀くんの当たり前が憧にとってキツいこともあるかもしれないでしょう?なら先に注意しておいた方がいいと思いますけど」
憧「それは、そうかもだけど…」
京太郎「……苦手なの?」
憧「ぃやその苦手というか、接し方とか距離感とかわからなくて、だから…」
京太郎「なんだそんなことか。じゃあ慣れればいいだけだな」
和「簡単にいいますね」
京太郎「阿知賀って女子校だよな?やっぱりそういうところで育つと多少はしかたないんじゃないのか」
京太郎「よし、じゃあ改めてよろしくな新子さん!」
憧「はい!??えぇと…」
和「大丈夫ですよ。言ったでしょう、須賀くんは信頼できる人です」
憧「和……うん、よろしくね須賀くん」
憧「ところで」
和・京太郎「?」
憧「ふ、2人は付き合ってたり―」
和「ありえません」ズバッ
京太郎「ぐへぇ」
4月
憧「お待たせ~」
和「おはようございます。あと須賀くんだけですね」
憧「須賀くんまだなんだ」
和「もう来るそうです。さっきメールが来ました」
憧「須賀くんの家って近いの?」
和「たしかここから歩いて5分くらい…?」
京太郎「あれ?俺が最後かぁ。オッス」
憧「おそい!」
京太郎「えぇ?約束より5分早いですけど」
憧「女を待たせたら、それはどれだけ早くても遅いのよ」
京太郎「早くても遅い、なんかの哲学かな」
京太郎「じゃあこれから新子さんとの約束のときは10分前行動するよ」
憧「へ?そ、そうね!いい心がけだと思うわ!!うん!」
和「それじゃ行きましょうか」
京太郎「あ、そうだ。途中で飲み物とかつまめるもんとか買って行こうぜ」
京太郎「和はミルクティーでいいよな?新子さんはどれがいい?」
憧「あたしはお茶でいいけど…」
京太郎「あいよっと、じゃあ俺は珈琲牛乳~」
京太郎「あとは適当に菓子でも買ってくか」
憧「あの、お金は…」
京太郎「いいっていいって、待たせちゃったみたいだからここは俺の奢りで」
京太郎「すいませんレジいいっすかー」
憧「あたしそんなつもりで言ったんじゃ…」
和「憧」
憧「和…」
和「あぁなったら聞きませんから」
憧「でも…」
和「わかってます、なので――」
京太郎「お待たせっと、じゃ行くか」
和「ありがとうございます。今度は私たちがお昼でも奢りますね」
和「ね、憧」
憧「え?えぇ、はい、うん奢ります」
京太郎「別にいいのに。それじゃあ、まぁ楽しみにしてます」
和「こうすれば双方角が立ちませんから。あ、うやむやにしたわけじゃなくて、ちゃんと奢りますからね?」
憧「……なんか長年連れ添った夫婦みたいね」
和「ありえません」
和「…まぁ3年間一緒でしたから、多少は」
憧「…そんなもんなのかしら」
京太郎「あー見えた見えた。俺んちあれの2階な」
和「……そういえば須賀くんの“家”ってはじめてかもしれません」
京太郎「あー、そうかもな。集まるときはだいたい咲の家だったし、あとは染谷先輩の店とかか」
憧「というか男子の家ってはじめて…」
京太郎「そんな身構えなるなよ、ちゃんとマズいものは片付けたし」
憧「あるんだ、見られたらマズいもの」
京太郎「そりゃ俺だって健全な18歳なんだから、一つや二つや三つや四つや…」
憧「多くない!?」
京太郎「新子さんはいまからそんな男の家に上がるわけだがグヘヘヘ」
憧「ええっ…」
和「脅かしてどうするんですかまったく…」
京太郎「冗談ジョーダン。はい到着、入ってどうぞどうぞ」
和「お邪魔します」
憧「おじゃましまぁす」
5月
憧「和は土曜日に戻ってくるんだっけ?」
京太郎「らしいぜ。やっぱ大変だよな名門の部活ってのは、あっち行ったりこっち行ったり」
憧「そういえばあの子、部活に友達いるのかな。そういう話全然しないじゃない?」
京太郎「普段は気のつくタイプだし、うまくやってるとは思うけど―」
京太郎「先輩方には疎まれてたりしてな。麻雀も外見もいろいとろやっかみ受けそうなタイプだ」
憧「大丈夫かな…」
京太郎「こっちからとやかく言うことでもないし、あいつが弱音を吐くことがあれば受け止めてやればいいんじゃないか」
京太郎「んで、それは俺じゃなくて新子さんの役目だと思う」
憧「…そうかな」
京太郎「まぁ、いらん心配だろ。あいつ強いもん」
憧「……あのさ、」
京太郎「ん?」
憧「須賀くんは和のことが好きなの…?」
京太郎「お?う~ん…好きは好きだよ。ただ、付き合いたいとか恋人になりたいとか、そういう気持ちは今はもう無いかな」
京太郎「実はさ、あいつに告白したことはあるんだ。たしか…5、6回くらいはしたな」
京太郎「その度に『ありえません』って一蹴されてさ。最後の方はほとんどギャグみたいな感じだったけど……」
京太郎「う~ん…つまりなにが言いたいかというとだな…」
京太郎「いまは和のことは恋愛感情じゃなく、親友というか仲間というか…そんな感じです」
京太郎「向こうはどう思ってるかわかんねーけどな」ハハッ
京太郎「とまぁこんな感じですが、ご満足いただけましたかな?」
憧「…うん、なんとなくわかった、と思う」
京太郎「そういえば、こっちも聞きたいことがあったんだ」
憧「聞きたいこと?あたしに?」
京太郎「新子さんはどうして麻雀部入らなかったんだ?てっきり和といっしょに、って思ってたからさ」
憧「あぁ、そんなこと…通用しないと思ったから。それだけよ」
京太郎「通用しないって…新子さんだってインハイ決勝進出メンバーだろ」
憧「あたしは連れてってもらったみたいなもんだし、それに決勝に行ったからこそ、ここが精一杯だって感じた」
憧「実際、宮永姉妹とか手も足も出ないと思っちゃった人でもプロでは勝ったり負けたりしてるじゃない?」
憧「それにね、あたしが高校のとき頑張れたのはインハイで和と打つっていう理由があったから」
憧「この先も続けていくっていうモチベーションも無くなっちゃった」
京太郎「なるほどね」
憧「遊びで打つのはいいけど、競技としてはもうお腹いっぱい」
憧「それにしても…」
京太郎「ん?」
憧「須賀くんも一応3年間麻雀部だったのよね」
京太郎「そうだけど?」
憧「その割に弱すぎじゃない?なんか基本からして出来てないっぽいし」
京太郎「うぐぅ…!」
京太郎「だってみんな言うことがバラバラだし、オカルト前提で話すし…ぐぬぅ!」
憧「あ、あたしでよければ麻雀、教えてあげようか?」
京太郎「……ほぁ?」
憧「す、須賀くんにその気があればだけど…」
京太郎「お、おう!是非とも頼むよ!」
京太郎「いや実はさ、インハイのときにうちの部長が言ってたんだよ。新子さんは素直にうまいから、俺は参考にするといいって」
憧「へ、へぇ~なかなか見る目あるのね、その部長さん」
京太郎「夏休みに集まる予定だからさ、そのときにあいつらを見返してやるぜ!」
京太郎「ってことでよろしくお願いします新子先生!」
憧「……一つ、条件があります」
京太郎「条件?」
憧「あ、あたしのことも名前で呼んでよ。和みたいに」
憧「アタラシさんて呼ばれるの、なんかくすぐったいし…」
京太郎「わかった。今後ともよろしくな“憧”」
憧「うん、えへへ」
京太郎「あ、なんだったら俺のことも京太郎でいいぞ?」
憧「ふきゅ!?」
6月
和「今日は須賀くんはいないんですね」
憧「うん、和と2人だけで話がしたくて」
和「てっきり付き合ってるって報告されるのかと」
和「最近、2人だけでよく遊びに行ったりしてるようですし」
憧「知ってたの!?」
和「さすがに気づきますよ。最近3人でいても少し疎外感を感じてますし」
憧「ごめん、そんなつもりは無いんだけど…」
和「で、話というのは須賀くんのことですね?」
憧「うん……あのね、あたし京太郎のことが好き」
和「えぇ、知ってます。ていうかまだ付き合ってなかったんですか?」
憧「ぅぅ…まだ京太郎にはなにも言ってないし、言われてないし…」
和「でもデートはしてるじゃないですか」
憧「あ、あれはっ!遊びに行ってるだけでデ、デートじゃないし…」
和「男女が2人で出かけたらそれはデートでしょう、よく知りませんけど」
憧「そ、そうかな」
和「そうだと思います。まぁ付き合ってないのはわかりましたけど、なにか問題でも?」
憧「あのね…和は京太郎のこと、どう思ってるの?」
和「はぃ?」
憧「だって京太郎は和のこと好きだったんでしょ?何回も告白したって聞いたよ?」
和「えぇ、まぁ何度かされましたけど、全部断ってますし」
和「最後の方なんて時候の挨拶みたいな感じでしたしね」
~~~~~~
京太郎「ずっと好きだったんだ、付き合ってくれ」
和「すいませんありえません」
――――――
京太郎「今日から3年だな、好きです付き合ってください」
和「ごめんなさい」
――――――
京太郎「あけましておめでとう、好きです付き合ってくれ」
和「これからもいい友達でいましょう」
京太郎「そうだな!よし、じゃあ初詣行くか。咲、迷子になるなよ?」
~~~~~~
憧「うん、京太郎ももう吹っ切れたみたいに言ってたけど…」
憧「そう言ってても、和に迫られたらきっとグラっときちゃうよ…」
憧「和が相手じゃ、絶対に敵わないもん…」
和(そういうことですか…)
和「大丈夫ですよ――って口でいくら言っても無駄なんでしょうね」ハァ
憧「なんか、ごめんね…」
和「憧はもう少し自分に自信を持つべきだと思いますよ?」
和「そもそも憧が好きになった人はそんなに信用できないんですか?」
憧「そんなことないわよ!京太郎はそんなんじゃ――」
和「知ってます。須賀くんはそんな不誠実な人じゃありません」
和「そもそもですよ!私だって親友の彼氏をとるなんてことしませんよ!」
憧「ホントごめんね、変なこと言っちゃって」
和「まったく…もう少し私と須賀くんを信用してください、いいですね?」
憧「…はい」
和「さてと…」ピポパッ
憧「和?」
和「もしもし?いま時間ありますか?それはよかった、じゃあいつものお店に来てもらえますか?じゃあ待ってますので急いで来てください火急の用件なので」
和「須賀くんを呼んだので、あとは頑張ってください。」
憧「えぇぇええええ!!???」
和「鉄は熱いうちに打て、です。それでは」
憧「の、和っ!」
和「はい?」
憧「ありがとう!」
7月
和「久しぶりですね、須賀くんと二人っていうのは」
和「憧にはなんて言ってきたんですか?」
京太郎「別に、普通に和と会うとしか言ってないって」
和「嫌な顔してませんでした?」
京太郎「普通だったよ。まぁ本心どう思ったかは知らんけどな」
和「もうひと月くらいになりますか…どうです?うまくやってますか?」
京太郎「仲良くやってるよ、そりゃあたまに喧嘩したりもするけど――」
京太郎「ありがとうな、全部和のおかげだ」
和「私はなにもしてませんよ、時間の問題だったじゃないですか」
京太郎「それはそうかもしれないけど、でも和がいなかったら憧と出会うことも無かったわけだしさ」
和「……ねぇ、須賀くん」
和「もし私が須賀くんのこと好きだって言ったらどうします?」
京太郎「ははは、いまさらそんなこと言われても冗談としか思えないって」
和「そう…ですよね、ごめんなさい変なこと言っちゃって」
京太郎「どうせ憧になんか言われたんだろ?カマかけてみろとかさ」
和「…そ、そうなんですよ。あの子すごく気にしてましたから」
京太郎「あいつ、テレビ見ててアイドルとか女優とか褒めただけでも拗ねるからな」
和「それだけ愛されてるんですよ」
京太郎「ぶっちゃけちょっとめんどくさいけどな」
和「へぇ~」
京太郎「あ、いまのは内緒だぞ!絶対に言うなよ!」
和「わかってます、わざわざ波風立てるような真似はしませんよ」フフッ
京太郎「マジで頼むよ」
和「そういえば咲さんたちにはもう知らせたんですか?憧と付き合い出したこと」
京太郎「いや、まだだけど…もしかして和から話したとか?」
和「しませんよ、そんなこと。わざわざ私が言うことじゃないでしょう」
京太郎「だよな。まぁ来月集まったときにそういう流れになったら隠しはしないけどさ」
和「憧もきっと話してないでしょうね」
京太郎「そういえば和は奈良の方にも行くんだっけ?」
和「えぇ、長野でみんなと会ってから奈良へ向かって、憧と一緒に東京に戻る予定です」
和「須賀くんは奈良へは行かないんですか?」
京太郎「いやいやいや、付き合って二ヶ月で両親と対面とかハードル高過ぎだろ」
和「あー…たしかに、それもそうですね」
京太郎「でも年末年始は憧んちでバイトしないかって誘われてるけど…神社なんだよな」
和「立派な神社ですよ、お正月となるとすごい人です」
京太郎「マジか」
ちなみに部長は地元の実業団、まこと優希は同じ地元の大学、咲はプロ