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「遅くなっちゃったなー、よし乗れ京太郎!送っていってやるぞー」 車のドアを開けて京太郎に乗車を促す 「それでは…お願いします、帰る手段がもうないですし」 そうしてあっさりと助手席に乗ってくれる京太郎 何の警戒もしてくれないところが少し寂しい 実際、送り届ける為に乗ってもらうのだから、別のところへなんか連れ込まないけど 「シートベルトしめたかー?ようし、出発だーワハハ!」 ドライブに入れてアクセルを踏む いつもだったらここで少し強めに踏んで発進するところだけど、 さすがにこんな夜道を飛ばす気にはなれない それに早く着きたくないという気持ちもあった …… 私達が京太郎と知り合ったのは清澄高校との合同練習のときだった かおりんと一緒の卓についたとき、私の対面に座っていたのが京太郎だった 彼もかおりんと同じ初心者だったから、ぎこちなく牌を積む動作がおかしかった それで対局が終わったあとで少し見てやる事にすると、かおりんもそれに付き合ってくれた 特にかおりんは自分が少しは経験があるため、年下の男子に教えるということが楽しいらしく 私よりも熱心だった その合同練習が終わった後も連絡は取り合うような仲になり、今日のように遊びに行くことも多くなった 彼の裏表のない性格が気に入り、過ごす時間が長くなっていくにつれて、心に熱い感情が生まれ始めていた 日に日に膨らんでいく気持ちを抱えて過ごしていたとき、かおりんから告げられた 「京太郎君に告白されちゃった…どうしよう、すごい嬉しいよ」 私にできることなんて限られていた …… 「ずっと雨だったせいか、今夜はよく晴れて星が綺麗ですね」 ぼんやりと呟いた声が横から聞こえた 「ワハハ、ごめんなー」 「何がですか?」 「いやいや、もしかおりんと一緒だったらロマンチックな話もできたろうにって思ってな!」 少し嫌味だったろうか、私の心配をよそに 「あはは、ロマンチックな話なんて俺の口からは出ませんって!」 こんなことを言って笑ってくれる もし、私がかおりんだったら京太郎はどんな顔で綺麗って言っていたんだろう 潤んだ瞳で互いを見詰め合う二人を想像して、すぐに消した フロントガラス越しの夜空を見る 雲ひとつない空に誘うように月が光っている ――もし、このままどこかへ連れ去っていけるなら 邪な考えがよぎる ――空へ飛んでいってしまえば誰も私達を追いかけられないのに なんでこんなことを考えてしまうんだろう 辛い 京太郎の相手がかおりんだから余計に辛い 彼女は親友だ、絶対に裏切りたくない なんで……なんでかおりんが好きになった男を私も好きになってるんだろう この空に浮かんでいる星と同じくらいに人はたくさんいるのに その中でどうして……京太郎に会っちゃったんだろう 一番苦しいと思うのは、 こうして私がかおりんとの友情を重んじているために京太郎にアプローチがかけられないことじゃなく、 共通点の多い二人がどうしようもなくお似合いで、私がそれを妬んでいるということだった 「先輩…」 「ん、どしたー?」 「俺、先輩達に会えて本当によかったって思ってます」 どうして、突然こんなことを言ってくるんだろう 私の心を読んでいるんじゃないだろうかとドギマギしてしまう それでも、勘違いする事もできそうなその言葉をそのままで受け取る事しか私には許されないから 「ワハハ!私もだぞ京太郎ー!かおりんだっていっつもそう思ってるさ!」 冗談まじりに言う事で私の気持ちを薄めて、更に親友の名前を出して誤魔化す事しかできない ――多分、私は京太郎のことがずっと好きなままでいるんだろう でも、それでも、この車にたとえどこへでもいけるロケットが積んであっても、 どこへも連れて行かない、連れて行きたいけど、行かない 私はこのまま京太郎をまっすぐ家に送り届ける 本当に好きだって思ってるから、そうするんだ ふと夜空をもう一度見てみると、 さっきと比べてそれほど距離を走ったわけじゃないのに何だか月が遠くにある気がした カンッ

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