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全国大会も近づき、雑用が増えた気もするこの頃、今日は少し遠出の買い出しである。申し訳なさから部長が気を遣ってくれたらしい。
その帰りに公園で見覚えのある人を見つけた。鶴賀学園の東横さんだったろうか、決勝の副将戦で1位だった人だ。
「すいません、東横さんですよね?」
えらく驚かせてしまったようだが、俺の事は知らないだろうしそれもそうか。
「あ、清澄の麻雀部員の須賀京太郎です。知らないですよね、見覚えがあったのでつい声掛けてしまいました。」
「え?あ、いや、知ってるっすよ。先輩が清澄の部長からよく働いてくれる男子部員がいるって聞いてたっすから。その雑用さんっすよね?それよりも、私が見えるっすか?」
雑用さんとはなかなか酷い言い様だ。しかし、何を言っているのだろうか。隠れているわけでもないのに見えないわけがない。
「そりゃベンチに座ってるだけですからね。遠くからでも見えますよ。あと、雑用さんって存外凹むので呼び方変えてください。お願いします。」
「な、なんで見えるんっすか?」
どうやら東横さんは自身が俺から見える事が、気になってしょうがないらしい。話を聞くと、疑いたくもなるような話であった。
ともすると俺が見えたのは、普段の雑用で敏感になった気配りスキルのせいか、よく迷子になる咲を捜すのが日課なせいか、はたまた俺もまた空気キャラだろうからか。どれにしても情けない限りなので
「そりゃこんな可愛い人に気づかない訳ないですか」
と誤魔化しておいた。可愛いのは間違いないし。
「面白い人っすね。須賀君が初めてっすよ。私が何もしなくても気づいてくれる人。敬意を込めて京ちゃんって呼ぶっすね。私のことはモモで良いっすよ。」
それは敬意と言うのだろうか。犬よりは良いけれど。
「それよりモモはどうしてここに?ここって鶴賀学園からも近くないですよね?」
「同じ1年っすし、敬語もなしっすよ。学校の近くだと先輩が見つけてくれるっすからね。嬉しいっすけど、先輩は引退したのにいつまでも甘えてしまうっすから。たまにこうやって遠出してるっす。京ちゃんこそ清澄から近くないっすよね?」
「俺は買い出しだよ。最近は緊急でもない限り部長がたまに雀荘とか知り合いの店とか色々教えてくれるんだ。」
影が薄く人と関わるのを諦めていたと言うけれど、モモは面白いし、良い人だった。俺には未だに信じられないけど、とても楽しそうに話すモモはとても可愛いと思ってしまった。
つい話し込んでしまったけど買い出しの途中なのであまり遅くなるわけもいかず、帰る事にした。
「それじゃあそろそろ学校に帰るよ。遅くなると怒られるしな。」
「あ、その前に連絡先教えて欲しいっす。京ちゃんみたいな人が近くにいたら良いんすけど、また会えるっすよね?」
「そうだな。会えない距離じゃないし、鶴賀と清澄も何かと縁が出来てるっぽいしな。」
お互い帰る事になり、しばらく歩いて初めてモモの言っている意味が分かった。
まるでモモがいないと錯覚しそうな、周りの人の動き。モモがいないとする事に憤りと不安が頭をよぎる。思わずモモの手を握っていた。
「京ちゃん?」
俺は何も言えなかった。そのまま歩いていった。
「ここまでで良いっすよ。」
「大丈夫。俺は見てるからな。」
「京ちゃんは優しいっすね。でも大丈夫っす。私を見つけてくれる人もいるし、この能力だって役に立てることもできる。先輩が教えてくれた事っす。それに京ちゃんも私を見逃さないっす。」
微笑むモモを京太郎の目はもう離すことはないだろう。
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全国大会も近づき、雑用が増えた気もするこの頃、今日は少し遠出の買い出しである。申し訳なさから部長が気を遣ってくれたらしい。
その帰りに公園で見覚えのある人を見つけた。鶴賀学園の東横さんだったろうか、決勝の副将戦で1位だった人だ。
「すいません、東横さんですよね?」
えらく驚かせてしまったようだが、俺の事は知らないだろうしそれもそうか。
「あ、清澄の麻雀部員の須賀京太郎です。知らないですよね、見覚えがあったのでつい声掛けてしまいました。」
「え?あ、いや、知ってるっすよ。先輩が清澄の部長からよく働いてくれる男子部員がいるって聞いてたっすから。その雑用さんっすよね?それよりも、私が見えるっすか?」
雑用さんとはなかなか酷い言い様だ。しかし、何を言っているのだろうか。隠れているわけでもないのに見えないわけがない。
「そりゃベンチに座ってるだけですからね。遠くからでも見えますよ。あと、雑用さんって存外凹むので呼び方変えてください。お願いします。」
「な、なんで見えるんっすか?」
どうやら東横さんは自身が俺から見える事が、気になってしょうがないらしい。話を聞くと、疑いたくもなるような話であった。
ともすると俺が見えたのは、普段の雑用で敏感になった気配りスキルのせいか、よく迷子になる咲を捜すのが日課なせいか、はたまた俺もまた空気キャラだろうからか。どれにしても情けない限りなので
「そりゃこんな可愛い人に気づかない訳ないですか」
と誤魔化しておいた。可愛いのは間違いないし。
「面白い人っすね。須賀君が初めてっすよ。私が何もしなくても気づいてくれる人。敬意を込めて京ちゃんって呼ぶっすね。私のことはモモで良いっすよ。」
それは敬意と言うのだろうか。犬よりは良いけれど。
「それよりモモはどうしてここに?ここって鶴賀学園からも近くないですよね?」
「同じ1年っすし、敬語もなしっすよ。学校の近くだと先輩が見つけてくれるっすからね。嬉しいっすけど、先輩は引退したのにいつまでも甘えてしまうっすから。たまにこうやって遠出してるっす。京ちゃんこそ清澄から近くないっすよね?」
「俺は買い出しだよ。最近は緊急でもない限り部長がたまに雀荘とか知り合いの店とか色々教えてくれるんだ。」
影が薄く人と関わるのを諦めていたと言うけれど、モモは面白いし、良い人だった。俺には未だに信じられないけど、とても楽しそうに話すモモはとても可愛いと思ってしまった。
つい話し込んでしまったけど買い出しの途中なのであまり遅くなるわけもいかず、帰る事にした。
「それじゃあそろそろ学校に帰るよ。遅くなると怒られるしな。」
「あ、その前に連絡先教えて欲しいっす。京ちゃんみたいな人が近くにいたら良いんすけど、また会えるっすよね?」
「そうだな。会えない距離じゃないし、鶴賀と清澄も何かと縁が出来てるっぽいしな。」
お互い帰る事になり、しばらく歩いて初めてモモの言っている意味が分かった。
まるでモモがいないと錯覚しそうな、周りの人の動き。モモがいないとする事に憤りと不安が頭をよぎる。思わずモモの手を握っていた。
「京ちゃん?」
俺は何も言えなかった。そのまま歩いていった。
「ここまでで良いっすよ。」
「大丈夫。俺は見てるからな。」
「京ちゃんは優しいっすね。でも大丈夫っす。私を見つけてくれる人もいるし、この能力だって役に立てることもできる。先輩が教えてくれた事っす。それに京ちゃんも私を見逃さないっす。」
微笑むモモを京太郎の目はもう離すことはないだろう。
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